物理と数学:老人のつぶやき

物理とか数学とかに関した、気ままな話題とか日常の生活で思ったことや感じたこと、自分がおもしろく思ったことを綴る。

面積図

2008-04-29 14:11:30 | 数学

数学教育協議会でよく使うシェーマの一つとして面積図がある。

この面積図を使って距離と時間と速さの関係を講義で説明したら、面積図のことがよくわからないという学生が一人だけいた。

面積図はもちろん縦の長さに横の長さをかければ、長方形の面積が得られることを基本として用いている。すなわち、

長方形の面積=縦の長さ×横の長さ

であるから、同様に

距離=速さ×時間
速さ=距離/時間
時間=距離/速さ

が成り立つ。

大部分の学生はよくわかったといっていたが、一人だけではあるが、ひっかかるところがあったらしい。どうしてかと思い考えてみた。

そして長方形の面積にあたるところを距離にとった理由が天下りに思えたのだろうと見当をつけた。

これはやはり距離が速さと時間の積で書けるとか,速さが距離を時間で割ったもので定義されるとかいった関係がわかっているために長方形の面積のところに距離をおいたと思うと昨日の講義で説明を述べた。

また、そういうことをイメージしてこの面積図のシェーマが考えられたのだろうという説明をした。

距離、速さと時間の三者関係をなにも分かっていない人が面積図で長方形の面積にあたるところを距離ととるということは考えられない。

すなわち、距離だけから出発して面積図を考えることはできそうにない。そういう意味で距離と速さと時間の概念が相互的というか循環論的だと感じることも付け加えた。

講義ではその後すぐに面積図で長方形の面積のところに速度をとり、横の長さは時間を取って加速度を定義した。速度、時間、加速度も同じ構造をもっているのだ。

しかし、距離は外延量であったが、速度は一次内包量(または内包量)であり、加速度は二次内包量(または複内包量)である。すなわち、長方形の面積のところは外延量である距離のこともあれば、内包量である速度のこともある。

また、工作機械等の自動制御の分野では加速度の時間的変化をもこのごろ問題にするようになっており、加加速度と呼ばれているという。そうだとすれば、二次内包量である加速度だって面積図の長方形の面積のところに当たる量としてとってもよい。

大多数の学生にはこの説明で加速度についての疑問はでなかったが、加速度の定義がわからないという学生がまだ一人二人はいた。これは次回の講義で補足する必要があるだろう。

なぜ面積図で長方形の面積のところを距離にとったかという、もとの疑問の答えが得られないかと思って,4月27日の日曜に「量と構造」という本の銀林さんと宮本敏雄さんの量についての理論を読んで学ぶところがあった。

銀林さんの「量の世界」(麦書房)という本があり、これは名著だと思うが、1冊全部を読むのは大変だ。しかし、この「量と構造」の理論編はそれほど長くないので、なんとか数時間かけて読めた。