古本が無尽蔵に回流する都会ならではの蓋然性の高さを頭の隅に置いたとしても、古本病者は隙あらば宿命論者になりたがる。そんじょそこらにいくらでも転がっている古本に掴みかかっては、なぜ俺は今ここでこの本と出会えたのか、この本が俺を選び出したのだと、ロマンチックな必然、ミステリアスな宿命に聖別された自分を恍惚の鍋中に煮えたぎらせ、古本屋の店先で失神寸前の夢心地に溺れる。
そのくせ、いざ現実の障害、瑣細な困難に立ち向かうと、いとも簡単にぐうの音も出ないほどたたき伏せられ、寸分の狂いなく完全な失神状態へ墜落する。
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