東京出張の前日はなんだかバタバタしていた。
急に単発の仕事を引き受けてしまい、それが最初に聞いていたよりずっと早く納品しないといけなくなったものだから、夜中までかかってとりあえず進めるところまで進めておいた。
翌日、東京での1日目の取材は17時半に終了。
今回は一人だったので、ホテルの中に入っているサイゼリヤでほうれん草とかつまみながら、ビールを飲む。
あまりに時間があってもったいないので、ホテルでパソコンを借り(1日1000円)、続きの原稿を書いた。
しかし、疲れがたまっていて、すぐに眠くなる。
せっかくのレンタルパソコンをあまり活用できなかった。
翌日は午前中で取材は終了。
なんと夫も前日から東京出張で、この日は半休をとれるというものだから、午後から一緒に東京観光をすることになっていた。
とりあえず、浅草に集合。
思っていた通り夫は20分も遅れてきて、私は当然10分前に着いているので、合計30分も待ちぼうけ。
でも、人ごみの中で夫の姿を見たら、そんなことどうでもよくなってしまった。とにかく会えて嬉しかった。
都会の雑踏は人を孤独にするね(笑)
浅草は何度か来ているので、スカイツリーへ向かう。
電車を降りると風がすごく強い。それに、どんよりした曇り空。
でも、暖かくてコートもいらないくらい。
正直、私は「スカイツリーなんて・・・」と思い、騒いでいる人たちをさめた目で見ていたのだが、いやいや、どうして、実際にそばで見ると、ものすごい迫力ではないか。
見上げると思わず「わーーー!」っと声が出てしまう。
大きい、高い。いや、高さよりもなんだかそのしっかりした造りに感動してしまった。
天気だったらよかったのになぁ。
そして、残念なことに、強風のため展望台に昇ることはできなかった。なんと!
とにかくお腹がすいて倒れそうだったので(もう14時半くらい)、トンカツ定食をガツガツ食べて、スカイツリー土産を見て、さあこれからどうしようか、となった。
今回の東京観光は急に決まったので、何のプランもない。まあスカイツリー見て、ご飯食べて帰って来たらいいかなーというくらいのものだった。
そのうえ、私は取材の資料やら校正の束やら、一眼レフやら持っていて、とにかく荷物が重い。
さらにさらに、二人とも睡眠不足と疲労でぐったりしていたところに、ペコペコのお腹をいきなり大量のトンカツとゴハンで膨らませたものだから、眠くて仕方がない。
何のプランもなく、疲労感と眠気たっぷりの重い荷物を持った二人は、どこにも行くあてがないのであった。
とりあえず浅草に戻り、本屋でおいしい日本酒が飲めそうな店を選んだ。
ここですぐに予約をしておけばよかったのだが、頭はぼーっとしているし、お腹もいっぱいであまり食べるもののことを考えられない。
店のチェックだけして本屋を出た。これが後で命取りになるとは思いもせず・・・
夫が急に「東京駅へ行こう」と言い出した。
新しくなってから私は見ていなかったのだけど(いつも取材先が八王子だから東京駅を使わない)、夫は新しい東京駅が大好きらしく、「ほんまにきれいやから、見に行こう」とやたら推してくる。
あまり気乗りもしなかったが、どうせ行くあてなしなので、行くことにした。
前日に取材した相手に「東京駅の地下に日本酒のお店がある」と聞いていたこともあり、それを見てもいいかなという気持ちもあったのだ。
神田で乗り換え。
あと1駅というところ。
夫がなぜか「歩けるんちゃう?もうすぐやで」と言い出した。
「え?そうなん?ホームに上がって降りて・・・ってやってるのと変わらないくらいで着く?」と聞いたら、スマホで地図を見て「うん、そんなくらいやわ」と言う。
それならまあ・・・と、神田から東京駅まで歩くことに。
夫に騙されたと気づいたのは、もう10分も歩いた頃だった。
「全然すぐちゃうやん!」
「間違えた」
「荷物重い・・・足痛い・・・腰も痛い・・・もうあかん」と泣きそうな私。
どこがすぐやねん!めっちゃ遠いやん!
基本的に歩くのは好きでいくらでも歩けるのだが、それは健康体でのこと。
私は本当に腰が弱いので、重いものを持つと腰にくるのだ。こうなると1足踏みしめるごとに痛みが響く。
そのうえ、靴も長時間歩くのには適していない。
ようやく東京駅に着いた頃にはもうふらふらだった。
もう痛みのほうが強くて、何の感動もなかった。
とにかく休みたかった。
それからチェックしていたお店へ行こうとしたのだが、最寄り駅まで行って電話をすると満席とのこと。
なんで早く予約しておかなかったのか、意味がわからない。
いつもの私ならきちんきちんとスケジュールを立てて、予約もしっかりやって動くのに、今回はどうも頭がまわらずに行き当たりばったりだった。そして、何もかもが撃沈。
結局、新幹線の時間もあったのであまり遠くへ行くこともできず、すぐに新幹線に乗れるようにと品川まで戻ってきた。
品川周辺で適当な店を探したのだが、良さそうな店はことごとく満席。(給料日後の金曜の夜だし!)
世界のビールが置いてあるバーのようなお店に入って、ようやく一息つけたが、そこは分煙されていなくて隣も近く、換気が悪いのか空気がひどい。
せっかく美味しいビールを飲んでいるのにタバコのにおいで台無しになり、煙がすごくて喉が痛くてしゃべるのもいやになるほどだったので、早々に店を出た。
またもや行くあてなし・・・
泣きっ面にハチとはこのことで、雨まで降ってきやがった!
重い荷物、痛い腰と足、あんなにワクワクしていたのにこの結末・・・
なんだかやりきれず、二人とも消沈しきっていた。
半分あきらめながら歩いていたら、イタリアンバルのようなお店があったので、そこに入ってみた。
特別何がいいというわけではなかったが、今の私たちにとったら天国のようで、ようやく明るい気持ちで食事ができた。
と思ったら、もう新幹線まで時間がない。
30分も経たないうちに慌しく店を出て、雨の中を走って駅まで戻った。
でも、日本酒の小瓶を買うことは忘れなかった。
新幹線は満席。
A・B席に座って、日本酒(雪の茅舎)を呑みながら、二人でいろんな話をした。
ようやく荷物も腰も時間もお店も雨も何も気にせず、ゆっくり話せるようになったのだ。
日本酒がなくなると、車内販売の赤ワインを買った。
だんだん楽しくなってきて、さっきまでのいろんな不運や失敗が気にならなくなった。
ああ、そうか、と思う。
どこに行くより何を見るよりどんなに美味しいものを食べるより、こうやって二人でリラックスしてお酒飲みながらおしゃべりしているのが一番楽しいんだなぁと。
二人でさっきまでのことは忘れたみたいに「楽しいなー」と言いながら笑って帰って来た。
心は軽く、爽やかだった。
「仲良きことは美しきかな」
武者小路実篤の讃がふと頭に浮かぶ。
大変だったけど、こんな珍道中も後になってみれば、また楽し
急に単発の仕事を引き受けてしまい、それが最初に聞いていたよりずっと早く納品しないといけなくなったものだから、夜中までかかってとりあえず進めるところまで進めておいた。
翌日、東京での1日目の取材は17時半に終了。
今回は一人だったので、ホテルの中に入っているサイゼリヤでほうれん草とかつまみながら、ビールを飲む。
あまりに時間があってもったいないので、ホテルでパソコンを借り(1日1000円)、続きの原稿を書いた。
しかし、疲れがたまっていて、すぐに眠くなる。
せっかくのレンタルパソコンをあまり活用できなかった。
翌日は午前中で取材は終了。
なんと夫も前日から東京出張で、この日は半休をとれるというものだから、午後から一緒に東京観光をすることになっていた。
とりあえず、浅草に集合。
思っていた通り夫は20分も遅れてきて、私は当然10分前に着いているので、合計30分も待ちぼうけ。
でも、人ごみの中で夫の姿を見たら、そんなことどうでもよくなってしまった。とにかく会えて嬉しかった。
都会の雑踏は人を孤独にするね(笑)
浅草は何度か来ているので、スカイツリーへ向かう。
電車を降りると風がすごく強い。それに、どんよりした曇り空。
でも、暖かくてコートもいらないくらい。
正直、私は「スカイツリーなんて・・・」と思い、騒いでいる人たちをさめた目で見ていたのだが、いやいや、どうして、実際にそばで見ると、ものすごい迫力ではないか。
見上げると思わず「わーーー!」っと声が出てしまう。
大きい、高い。いや、高さよりもなんだかそのしっかりした造りに感動してしまった。
天気だったらよかったのになぁ。
そして、残念なことに、強風のため展望台に昇ることはできなかった。なんと!
とにかくお腹がすいて倒れそうだったので(もう14時半くらい)、トンカツ定食をガツガツ食べて、スカイツリー土産を見て、さあこれからどうしようか、となった。
今回の東京観光は急に決まったので、何のプランもない。まあスカイツリー見て、ご飯食べて帰って来たらいいかなーというくらいのものだった。
そのうえ、私は取材の資料やら校正の束やら、一眼レフやら持っていて、とにかく荷物が重い。
さらにさらに、二人とも睡眠不足と疲労でぐったりしていたところに、ペコペコのお腹をいきなり大量のトンカツとゴハンで膨らませたものだから、眠くて仕方がない。
何のプランもなく、疲労感と眠気たっぷりの重い荷物を持った二人は、どこにも行くあてがないのであった。
とりあえず浅草に戻り、本屋でおいしい日本酒が飲めそうな店を選んだ。
ここですぐに予約をしておけばよかったのだが、頭はぼーっとしているし、お腹もいっぱいであまり食べるもののことを考えられない。
店のチェックだけして本屋を出た。これが後で命取りになるとは思いもせず・・・
夫が急に「東京駅へ行こう」と言い出した。
新しくなってから私は見ていなかったのだけど(いつも取材先が八王子だから東京駅を使わない)、夫は新しい東京駅が大好きらしく、「ほんまにきれいやから、見に行こう」とやたら推してくる。
あまり気乗りもしなかったが、どうせ行くあてなしなので、行くことにした。
前日に取材した相手に「東京駅の地下に日本酒のお店がある」と聞いていたこともあり、それを見てもいいかなという気持ちもあったのだ。
神田で乗り換え。
あと1駅というところ。
夫がなぜか「歩けるんちゃう?もうすぐやで」と言い出した。
「え?そうなん?ホームに上がって降りて・・・ってやってるのと変わらないくらいで着く?」と聞いたら、スマホで地図を見て「うん、そんなくらいやわ」と言う。
それならまあ・・・と、神田から東京駅まで歩くことに。
夫に騙されたと気づいたのは、もう10分も歩いた頃だった。
「全然すぐちゃうやん!」
「間違えた」
「荷物重い・・・足痛い・・・腰も痛い・・・もうあかん」と泣きそうな私。
どこがすぐやねん!めっちゃ遠いやん!
基本的に歩くのは好きでいくらでも歩けるのだが、それは健康体でのこと。
私は本当に腰が弱いので、重いものを持つと腰にくるのだ。こうなると1足踏みしめるごとに痛みが響く。
そのうえ、靴も長時間歩くのには適していない。
ようやく東京駅に着いた頃にはもうふらふらだった。
もう痛みのほうが強くて、何の感動もなかった。
とにかく休みたかった。
それからチェックしていたお店へ行こうとしたのだが、最寄り駅まで行って電話をすると満席とのこと。
なんで早く予約しておかなかったのか、意味がわからない。
いつもの私ならきちんきちんとスケジュールを立てて、予約もしっかりやって動くのに、今回はどうも頭がまわらずに行き当たりばったりだった。そして、何もかもが撃沈。
結局、新幹線の時間もあったのであまり遠くへ行くこともできず、すぐに新幹線に乗れるようにと品川まで戻ってきた。
品川周辺で適当な店を探したのだが、良さそうな店はことごとく満席。(給料日後の金曜の夜だし!)
世界のビールが置いてあるバーのようなお店に入って、ようやく一息つけたが、そこは分煙されていなくて隣も近く、換気が悪いのか空気がひどい。
せっかく美味しいビールを飲んでいるのにタバコのにおいで台無しになり、煙がすごくて喉が痛くてしゃべるのもいやになるほどだったので、早々に店を出た。
またもや行くあてなし・・・
泣きっ面にハチとはこのことで、雨まで降ってきやがった!
重い荷物、痛い腰と足、あんなにワクワクしていたのにこの結末・・・
なんだかやりきれず、二人とも消沈しきっていた。
半分あきらめながら歩いていたら、イタリアンバルのようなお店があったので、そこに入ってみた。
特別何がいいというわけではなかったが、今の私たちにとったら天国のようで、ようやく明るい気持ちで食事ができた。
と思ったら、もう新幹線まで時間がない。
30分も経たないうちに慌しく店を出て、雨の中を走って駅まで戻った。
でも、日本酒の小瓶を買うことは忘れなかった。
新幹線は満席。
A・B席に座って、日本酒(雪の茅舎)を呑みながら、二人でいろんな話をした。
ようやく荷物も腰も時間もお店も雨も何も気にせず、ゆっくり話せるようになったのだ。
日本酒がなくなると、車内販売の赤ワインを買った。
だんだん楽しくなってきて、さっきまでのいろんな不運や失敗が気にならなくなった。
ああ、そうか、と思う。
どこに行くより何を見るよりどんなに美味しいものを食べるより、こうやって二人でリラックスしてお酒飲みながらおしゃべりしているのが一番楽しいんだなぁと。
二人でさっきまでのことは忘れたみたいに「楽しいなー」と言いながら笑って帰って来た。
心は軽く、爽やかだった。
「仲良きことは美しきかな」
武者小路実篤の讃がふと頭に浮かぶ。
大変だったけど、こんな珍道中も後になってみれば、また楽し