月と歩いた。

月の満ち欠けのように、毎日ぼちぼちと歩く私。
明日はもう少し、先へ。

おうちへ遊びに。

2013-01-29 | 生活
床床さんのおうちに遊びに行った。
本当は昨年末に遊びに行く予定だったのだが、忙しくなって行けなくなり、結局1ヶ月も延期してしまったのだった。

阪神地下で食料とおやつ、それに念のため白ワインも1本買い込む。(念のためって?)
自分の日常の食事だったらデパ地下のお惣菜なんて高くて買えないが、友達との外食の代わりだと思えば気軽にあれこれ買えるのでテンションが上がる。
今回は中華風にした。その後でワインコーナーに行ってしまったので、イタリアンにすればよかったと後悔。まあ、いいや。

おうちに着くと、ミチちゃん(娘・5ヶ月)は寝ていた。かわいい~
でも、すぐに起きてしまい、それから私が帰るまでほとんど寝ることはなかった。
やっぱり人が来てガヤガヤしていると興奮してしまうんだろうな。
眠そうなのに寝られないというのはなんだかかわいそうで、悪いことしたなーと思った。

おやつを食べながら、11月に岩手で挙げた結婚式の写真を見せてもらった。
優しそうなご両親とお兄さん・妹さん!
こういう家族の中で愛情をいっぱい受けて育ってきたんだろうな、と思う。
妹さんと仲が良く、私がいる間にも電話がかかってきた。特に用事があったわけではないらしい。しょっちゅう電話でおしゃべりをしているらしいのだ。
羨ましいなぁ。私なんて姉が日本にいた時でも電話なんてただの1度もしたことがないし、会うのも家族でのお正月だけだったのに。

おやつに、「和-NAGOMI-」のパンを買ってきたのだが、これがすごーく美味しかった!
みかんが丸ごと入っているのと、紅芋&栗。ビジュアルがそそる!


でも、高いので普段は食べられないなぁ・・・
こうやって手土産に持っていくのにはいいけれど。

7時頃からは、買ってきた食料とワインでパーティー。


ポトフは床床さんが作ってくれた。これが一番おいしかったかも・・・。
仕事の話や、夫の話、ママ友の話など、いろいろおしゃべりできて楽しかった。
私はゆっくりくつろいでワイン飲んでいたが、床床さんはミチちゃんをあやしたり、おっぱいあげたり、おしめ替えたりで、落ち着いて食べられないのが気の毒だった。
乳幼児がいると大変だなぁ、本当に!これから歩くようになれば、それはそれでまた目が離せなくなるし。
こうやって身近で子育てをしている人を見ていると、お母さんって本当にエライなぁと思う。

8時過ぎには帰ろうと思っていたのだけれど、ダンナさんの帰りが今日は遅いからということで、何度も何度も「ゆっくりしていってね~」と言う。
私も楽しいし、いつまでもいられる感じだったけれど、家が遠いのでさすがに10時過ぎには腰を上げた。

手を振って階段を降りていったら、ちょうどダンナさんが帰宅。
挨拶だけ交わして帰って来た。
ダンナさんと会うのは3回目。とても優しくて面白い、笑顔の素敵な人だ。
幸せそうでよかったな、と思う。ミチちゃんもすごくかわいいし、私もなんだか温かい気持ちになった。
子供の笑顔は人を幸せにするなぁ・・・

床床さんとも前よりもっと仲良くなった。
なんというか、彼女とは話していて気持ちが変に昂ぶったり、ムキになったりすることがない。
基本的に批判精神旺盛な私なのだけど(私の欠点の1つだ)、そういう感情が全く生まれない。
だからいつも帰り道には気分がいい。
「気持ちの良い人」と、以前にも書いたけれど、やっぱりこの表現が一番しっくりくる。

気持ちの良い人だ。

うっかり

2013-01-28 | 仕事
どちらかと言えば、「頭の回転が早い」とか「テキパキしている」とか言われるほうだったので、なんとなくこれまでと同じように仕事をしていても大丈夫だろうと思っていたのだが、最近はそうじゃないなと思い始めた。
年のせいなのか、「うっかりする」ことが増えたのだ。

月曜日は、朝からまた社史の校正で、今度は兵庫の印刷屋さんへT社長と一緒に行くことになった。
先週、2日かけて行った校正の「清書ファイル」を私が預かっていた。
電車が大阪駅に着く頃、あっ!と思った。この清書ファイルを忘れたのだ!

人って、あまりにびっくりすると、どこでも声が出るね……
小さかったけれど本当に「あっ!」と声が出てしまって、隣に座っていた女性がびくっとなったのがわかった。

いやはや。

とりあえずT社長にメール。一応、自分の原稿も持っていたので作業は進められるけれど、もしそれではダメなら取りに帰りますということを伝えた。
すると、「私も持っているからこれでやりましょう」とのこと。
そうは言われても焦ったまま待ち合わせ場所へ向かい、会うと平謝り……

でも、T社長は別になんとも思っていないようで、「まあ、大丈夫でしょう」とのんびり構えていた。
その優しさにホッとする。
しかし、甘えていてはいけない。もう自分の能力が20代の頃と同じだと思っていたらいけないなぁと思う。こういう初歩的なミスをするということが本当に信じられないが、事実なのだから。
もっともっと慎重に何事も確認していかないと、同じようにはいかないのだなぁ……。
「うっかり」撲滅!

作業は「何とか進められた」が、決して「スムーズに」は進まなかった。
やはり清書ファイルが必要だったのだ。
印刷屋さんに修正箇所を説明していくのだが、私やT社長の持っている原稿では抜けているところもあり、それをいちいち書き込んだりするのに時間がかかってしまった。本当に申し訳ない。

結局、夕方6時半までかかってしまった。
私が忘れていなければ、3時には終わっていただろう。

終わると、「ご飯どうする?」とT社長。
「どちらでもいいです」というと、「じゃあ、行こう」とまた夕食に誘ってくれた。

久しぶりの北新地。
歩いているだけでワクワクする。
この日連れて行ってもらったお店は、こじんまりとしたバーのようなお店。
お酒はビール、日本酒、焼酎、ワイン、ウイスキーと何でも置いているが、バーというコンセプトでもなく、わりとしっかりしたお料理も出してくれる。

ビール1杯と日本酒3杯。炭火で焼いた野菜の盛り合わせ、牡蠣のオイル漬け、鰆のみそ焼き、自家製オイルサーディン、シメの麺などをいただいた。
どれも丁寧な仕事ぶりが伺えて、とても美味しかった。
牡蠣のオイル漬けと自家製オイルサーディンは私も自分で作るので、他のお店のものを研究したかったのだ。
オイル漬けはふっくらと仕上がっていて、わりとあっさりしていた。
ふっくらさせるのにはボイルするのがいいようだ。今度試してみよう。
オイルサーディンは、梅の酸味なども利いていて和風だった。これは好みが分かれるかも……。私は、私の作ったほうが好きかなぁ。もう全く別の食べ物になっていたので比べられないけど。

いいお店だったなぁ。また行きたい。楽しい時間だった。
あんなうっかりミスをしたにも関わらず、ご飯までご馳走してもらい、ありがたいを超えて恐縮したけど……。
本当に気を引き締めて仕事をしなければ!

それに、前日、奈良で呑みすぎたので、今日は禁酒しようと思っていたのだが、結局また呑みすぎ
最近、お酒がやめられない。

冬の奈良でほっこり♪

2013-01-27 | 
京都から近鉄に乗り換えて奈良方面へと向かう。
昨夜がちょうど若草山焼きの日だったためか、奈良からこちらへ戻ってくる人が多いような気がした。
向かう車内はそれほどでもないのだけど。

大和西大寺で降り、まずはランチへ。
駅前のビルの地下にあるイタリアンのお店だ。
サラダバー、ドリンクバー、前菜のパン(サンドウィッチ)、デザートがついて、メインはパスタやラザニアから選べる。
私たちはそれぞれラザニアを注文した。


私はトリュフとベーコンと卵のラザニア。
夫はミートソースのラザニアにしていた。


デザートはタルトフロマージュ。美味しい。

普段、外食と言えば飲み屋ばかりなので、夫とこういうレストランで向かい合っているのは新鮮だ。

店を出て、西大寺へ。
目的は善財童子様にお会いすること。

私はあまり大きなお寺は好きではないのだが、西大寺は特別。町中にあってもひっそりとしていて、壮大。
一歩踏み込むと背筋がピンと伸びる感じがする。



本堂のみ拝観。
ここにはいろいろと見ごたえのある仏像が揃っているが、やはり善財童子様が素晴らしい。
何か問いたげな表情や、少し淋しげな瞳。じっと見つめていると心が洗われるようだ。
「また来ましたよ」と心の中で話しかけた。

西大寺を後にし、秋篠寺へ。バスで行こうかと思っていたが、時間もあったので歩いていくことに。
夫とおしゃべりをしながら歩いているとあっと言う間だ。
門が見えた。


門をくぐると苔庭の参道が出てくるのだが、評判以上の美しさに思わず声をあげた。
なんだろう……、もう別世界なのだ。


冬の薄暗い世界が、一気に明るくなった。
ふかふかの美しい苔がどこまでも続いている。
たくさんの苔庭を見てきたけれど、こんなに美しく神秘的な苔は他に知らない。

感動しながら参道を歩いて、本堂へ。ようやく伎芸天にお会いできるのだ。


中に入ると、ずらりと仏像が並んでいる。その一番左端が伎芸天だった。思ったより背が高い。
伎芸天は芸能を司る女神。
日本では唯一といわれているが、こちらが本当に伎芸天として造られたのかどうかは定かではないそうだ。
ただ、佇まいやお顔の美しさ、口を少し開けて歌を歌われているようなお姿から、おそらく伎芸天だといわれている。
堀辰雄は『大和路』の中で、「匂いの高い天女の像」と表現していたが、まさにそんな感じだった。
高貴でありながらも、どこか身近で。優しく何か言いたげに、こちらを見下ろしていた。

夫としばらく椅子に座って眺めていた。
寒くなければもう少しいられたのだけど。

写真撮影ができないので、4枚組みの写真を購入した。


ふぅ。

満足した。また別の季節に足を運ぼう。

その後は少しだけ秋篠窯に寄って器を見て、また駅まで歩いて帰った。
予定より早く近鉄奈良に着いたので、わが母校へ立ち寄った。


記念館はいつだって美しい姿で私を迎えてくれる。
何の思い入れもない大学だけど、この記念館だけはあの頃から変わらず私の胸を打つ。
古い建物の持つ力というのは大きいのだ。

さあ、ここからは楽しい地酒ツアーの始まりだ!

最初は近鉄奈良駅構内にある「豊祝」の立ち飲み屋。酒蔵直営なので、驚くほど安くお酒が飲める。
前から行きたかったのだが、いつも前を通るとおっちゃんでいっぱいで、さすがに初めての立ち飲み屋に一人で入る勇気はなく、これまで入ったことがなかったのだ。
16時のオープンを待ち構えて入店!
何にしようかとメニューを見ているうちに、どんどんお客が入ってきて、すぐにいっぱいになった。
まだ16時だというのに驚きだ!


手前にしぼりたて1合(350円)、その後ろの3つは呑み比べセット(350円)。それに、ゲソの天ぷら(150円)、しじみのしぐれ煮(250円)。
これでなんと1100円!!
やっす~!
そりゃ、16時でいっぱいになるのもうなずける。
「コスパがいいもの」が大好きな夫は、「なに~!ここめっちゃいいやん!」と横で大喜び。
二人でどんどん幸せが加速していくのがわかった。

もう1杯、2杯といきたいところだが、今日は4軒まわるのである。所要時間も30分と決めていたので、後ろ髪を引かれながらも店を出た。
次は、三条通りにある「のより」へ。
こちらは酒屋さんがやっているお店で、かなり私好みのお酒が揃っている。
ちょっと小奇麗なバーのような雰囲気なので、こちらは以前、一人で行ったことがあった。
先ほどの立ち飲み屋と比べればやや高めだが、それでも50mlを300円程度で飲める。(椅子もあるしね)

私は「風の森」、夫は大倉の「金鼓」を。


は~
……しびれる。
しびれる旨さっちゅうのは、こういうのを言うんやな。
さっきのお店のお酒もおいしいのだが、ちょっとレベルが違うのだ。

50mlなのですぐに空いてしまう。ここではもう1杯。
「花巴」のしぼりたてと、大倉のにごり。


「花巴」はあまりお店には置いていないお酒だが、かなり旨いので気に入っている。
このお店は購入もできるので、花巴と風の森を買って店を出た。

さあ、3軒目だ!
もちいどの通りを入ってしばらく歩き、左へ入ると、「なら泉勇斎」が見えてくる。
こちらは奈良の酒造組合がやっているお店で、購入も可能。
50mlをだいたい200円前後で飲むことができる。30蔵120種あるとか。
店の名前は変わってしまったのだが、こちらも以前、T社長と奈良に取材に来た帰りに寄ったことがあった。

10人も入れないほど小さなカウンター。
以前とはたぶん違うマスターなのかな、すごく気さくに迎え入れてくれた。
それに、先にいたお客さんも常連さんで、なんだか楽しい人だ。すぐに意気投合した。
2杯くらいでやめておこうと思いながらも、なんだか楽しくなってきた夫が「もう1杯」「もう1杯」と注文するから、こんなことになってしまった











隣の常連さん(Tさん)と仲良くなり、いろいろおすすめのお酒も教えてもらって飲んでいたら、かなり時間が経ってしまった。
私の手作りチラシを見せて、今日は4軒まわるんだと話したら、「さすがっ!行くべき店をちゃんと押さえてる!」と絶賛してくれた。さらに、この近くにあるいいお店も教えてもらった。
Tさんはウイスキーも好きで、山崎によく来るという。それで話が盛り上がった。すると、反対側の隣にいたお姉さんが「私も山崎行ったことある」と言い出して、すっかり山崎談義。やはり酒好きは違うな~

そして、私たちが次に「晴朗邸」というお店に行くのだと知ると、Tさんが「あそこはいいよー」と言ってくれたのでホッとした。
ここはまだ行ったことがなかったのだが、私の「おいしいものアンテナ」が反応していたので決めたのだ。
そして、Tさんも一緒に行くことになった(笑)

お店は本当にいい感じで、ご夫婦できりもりしているこじんまりとした居酒屋さん。
お酒がバツグンにいい!
いろいろ美味しいお酒を飲ませてもらったし、お料理もここに来てやっとまともに食べた。
(ここまでほとんど飲むばかりだった)

そのうち、先ほどの「泉勇斎」のマスターも店を閉めた後にやって来て、結局4人で飲んだ。
さっき会ったばかりのお客さんとマスターと4人で別の店で飲んでいるのである。
お酒って、こういう縁があるから好きなのだ。
単なる酒飲みとか酔っ払いでなく、本気で日本酒やウイスキー、ワインなどを追求している人とは共通の話題があるから心を開きやすい。
ブルースと似てる。ブルース好きもすぐ仲良くなれる。
自分が愛しているものを同じように愛している人間の事は、「なんかこいつ、悪いやつじゃないやろなー」と思ってしまうのだ。

楽しい時間だったけれど、奈良はさすがに遠いので、早めに退散した。
というか、4時から飲んでるし!

盛りだくさんの奈良ツアー。
良い出会いもあり、本当に満喫した。ほっこり、ほっこり。

Tさんとは帰ってすぐにフェイスブックでつながった。きっとこの人とはまた一緒に飲むだろう。そんな気がする


マメ人間

2013-01-26 | 生活
土曜日だというのに、夫は仕事。
相変わらず忙しい人だ。
でも、私が昨日作った奈良ツアーのチラシを見ると、飛び上がって喜んでいた。

↓こんな感じだ。


性格なのか、職業柄なのか、私は昔からこういうことをするのが好きだ。
友達と旅行に行くときでもよく「しおり」を作っていた。
夫と旅行に行く時もたまに作る。

若い時に貧乏旅行ばかりしていたので、時刻表と向き合って(今はスマホ)電車やバスの時間を調べ、見たい場所や行きたいお店をうまく廻れるようにプランを練ることには慣れている。というか、そういう作業が好きでたまらない。
いろんな人に「マメやな~」と半ばあきれたように言われる所以だ。

夫はこれを見て「めっちゃいいやん!サイコーやん!サイコー!」と盛り上がっている。
最近、忙しさのあまりちょっと元気がなかった夫の笑顔を見られてホッとする。よかった。
「明日を楽しみに」、元気に土曜のオフィスへ出勤して行った。

私はこの1週間ろくなものを食べていないので、体をリセットしようと思った。
美味しくて体に良いものを食べないと、心までギスギスしてしまう。

久しぶりの一人おうち居酒屋。


白菜と豚肉のみぞれ煮
天然ぶり大根
ささみとワカメの胡麻和え
ひじき煮
菜の花のおひたし

お酒は奈良の百楽門。
今、家にいいお酒がない。それで高槻まで買いに行ったのだが、「これ」というのがなかった。
熱燗にしようと思っていたので「熱燗にいい」と書いてあった酒を選んだ。
残念ながらちょっと好みではない味だったが、それでもこういうアテがあれば酒も進むというものだ。

ああ、幸せ。
五臓六腑に染み渡るとは、まさにこのこと。
元気になってきた。

そうだ、行こう。

2013-01-25 | 
なんだかとても疲れていた。

最近、少し動き回ると疲れが出る。なんとも情けない話だ。
出張から帰った翌日は、とりあえず3日間たまりきった家のホコリをきれいに取ることから始めた。
部屋がきれいだと気持ちも明るくなる。

久しぶりに本屋へ行き、かなり長い時間をそこで過ごした。気づけばもう夕方だった。

購入したのは、
1、黒田夏子『abさんご』
2、百田尚樹『永遠のゼロ』
3、湊かなえ『夜行観覧車』
以上3冊。

まだ図書カードの残高があると思っていたのだが、店員さんに「図書カードに11円ありますので、引かせていただきますね」と言われたときは、ちょっと顔が赤くなった。
11円って……!

1はこの間も書いていたように、作者に興味を持って読んでみようと思った。
2も前から読みたかったのだ。こういう本がベストセラーになるとは!日本は確かに右傾化しているのかもしれないな。
3は購入予定になかったのだが、この間、たまたまこの原作のドラマを見てしまったのだ。まったく予備知識はなかったが、途中まで見て「湊かなえっぽい?」と思って調べたら、やっぱりそうだった。
最終回まで見たところで到底ハッピーになれるとは思えなかったので見るのをやめようとしたが、ストーリーの続きが気になる。つい第二回も見てしまった。
で、私が選んだのは、ドラマを見るのをやめて原作を読んですっきりしてしまえ!という方法。

湊かなえはとにかく人間の嫌な面を書かせたら日本一である。
寂しさ、怒り、恐怖、嫉妬、虚栄心、殺意、無関心……、とにかく人が誰しも持っていながら隠したいと思っているような嫌な面を赤裸々に綴るのだ。
ハッピーからはほど遠い気持ちになるが、なぜかストーリーを追うことをやめられない。
これがこの作家のすごいところでもある。

とりあえず本屋から帰って『夜行観覧車』を一気読みした。結構分厚い本なので、3、4時間はかかったと思う。
やっぱりスッキリとはしなかった。
なんだかモヤモヤした気持ちのまま週末を迎えそうになったので、楽しいことを企画した。

奈良のお寺&地酒巡りである。

水曜日に東京へ行くとき、京都駅で新幹線に乗ろうと思ったら、エスカレーターの横に観光ポスターが貼ってあるのに目が行った。
『そうだ、京都へ行こう。』シリーズかと思ったら、奈良編の『いま、ふたたびの奈良へ』『うまし うるわし 奈良』シリーズだった。

キャッチコピーは

――ただひとりの天女。

秋篠寺の伎芸天が佇んでいる。

奈良は大学も通っていたし、それなりにいろいろ散策はしたのだが、秋篠寺はまだ訪れたことがなかった。
行きたい行きたいと思い、すぐそばの西大寺には足を向けるものの、なぜか行く機会に恵まれなかった。
縁がない?
いやいや、縁は自分で作るもの。
完全なるパクリだが、「そうだ、奈良へ行こう」と思い立った。
こういうのは思ったときに行くのがいい。

東京から帰ると、堀辰雄の『大和路』を書棚から探し出した。
大学3回生のとき、一時期夢中になった堀辰雄。ゼミでの研究もちょうど堀辰雄だった。
確かこの『大和路』の一説に伎芸天のことが書いてあったと思い出し、久しぶりに手に取ってみた。

やはりあった。

「いま、秋篠寺という寺の、秋草のなかに寝そべって、これを書いている。いましがた、ここのすこし荒れた御堂にある伎芸天女の像をしみじみと見てきたばかりのところだ。このミュウズの像はなんだか僕たちのもののような気がせられて、わけてもお慕わしい。朱い髪をし、おおどかな御顔だけすっかり香にお灼けになって、右手を胸のあたりにもちあげて軽く印を結ばれながら、すこし伏せ目にこちらを見下ろされ、いまにも何かおっしゃられそうな様子をなすってお立ちになっていられた。……」

これを読むと、もうどうしても秋篠寺へ行かなくてはという気持ちになって、早速ツアー計画を立てたのであった。
どんな奈良ツアーになったかは、また次回。