北海道人からみた関西圏の鉄道事情

関西圏の鉄道・その他についての諸々の雑感

極楽橋駅

2006年08月29日 | 南海






極楽橋駅は、和歌山県高野町の標高538mの山中にある南海電鉄の駅で、難波から高野線に乗車して高野山に向かった場合、この駅が高野線の終着駅(特急「こうや」もこの駅までの運行)で、ここからは鋼索線(高野山ケーブル)に乗り換えて高野山駅へと向かうことになります。

実はこの駅は、駅舎の外に出ても何もないことで有名な駅です。本線の終端駅で、特急が発着する駅であるにも関わらず、です。
駅の周囲には民家や商店などの建物は一軒もなく、駅から外に出ても、ただ未舗装の細い山道が沢に沿って山へと続いているだけです。そんな状態ですから、当然この駅の外に出る乗客はほとんどいません。駅舎の出口には一応自動改札機が1基設置されていますが、この改札機が稼動することもほとんどないと思われます。
この駅は、高野線と鋼索線の乗り換えのためだけに存在しているといってもいい駅なのです。

実際、高野線の列車を下車した乗客のほぼ全ては、連絡橋を渡って鋼索線のホームへと向かいます。
高野線と鋼索線の駅舎は川を挟んだ両岸にあり、改札内の連絡橋で結ばれており、一番上の写真に写っているのがその連絡橋で、左側の建物が鋼索線の駅舎です(私はこの写真を撮るために改札の外に出ました)。
鋼索線は高野線発着列車の時刻に合わせて運行されているため、この駅で長居するような乗客もおらず、この駅は本当に、乗り換えのためだけの駅といえます。

ちなみに、駅名の由来となった極楽橋は、高野線の電車が駅構内に入る直前に、進行方向右側の車窓より見ることができます。

関空特急 はるか

2006年08月27日 | JR




関西空港駅には、空港のアクセス特急として2種の特急が乗り入れています。JRの「はるか」と南海の「ラピート」です。
「ラピート」については4月19日の記事で書きましたが、今日とり上げる「はるか」は、その「ラピート」のライバルに当たります。

「はるか」で使用されているJRの281系電車よりも、「ラピート」で使用されている南海の50000系電車の方が内装や装備はずっと豪華で、デザインも凝っており、それに加え私はJRよりも私鉄の方が好きなため、個人的には「ラピート」の方が好きです。
しかし実際には、私はまだ「ラピート」にはまだ一度も乗車したことがなく、逆に「はるか」には2~3回程乗ったことがあります。後述するように、京都から関西空港へと向かう場合は「はるか」を利用する方が便利なのです(京都から関空へ行くのに「ラピート」を使おうとすると、何度も乗り換えしなくてはいけません)。
ちなみに、上の写真は関西空港駅で撮影した「はるか」です。

「はるか」と「ラピート」が運行される前は、「はるか」よりも「ラピート」の方が有利と見られていました。「ラピート」が大阪ミナミの中心地である難波から出るのに対し、「はるか」は阪和線の起点である天王寺から出ると見られていたため、キタからもミナミからも外れている天王寺から関空特急に乗るのは不便と思われたからです。
また、JRの関西空港線は南海の泉佐野よりも東側の日根野から分岐するのですが、その日根野から関西空港までは11.1㎞あり、南海の空港線よりも2.3㎞長いことからその分時間が余計にかかると見られていたことも、JRの方が不利と見られていた要因の一つでした。

しかし、関西空港が開業して実際に「はるか」と「ラピート」が走るようになると、関空利用者の多くは「はるか」の方を利用するようになり、関空輸送ではJRに軍配が上がった格好です。
これはなぜかというと、始発駅が天王寺では不利と考えたJRが、「はるか」運行のために阪和線と大阪環状線との間に連絡線を設置したり、東海道貨物線や梅田貨物線も利用するなどして、「はるか」の始発駅を京都駅に設定したためで、これにより「はるか」は京都から関空へと直通するようになり、京都から関空へ行くのが大幅に便利になったばかりか、京都や新大阪では新幹線や北陸特急とも接続し、JRは利用エリアを大幅に広げることに成功しました。
私が「はるか」を利用したのも、やはり関空から京都へ行くときと、京都から関空へ行くときでした。

また、JRの空港線が南海の空港線よりも距離が長いため余計に時間がかかると懸念されていたことについても、「ラピート」が空港線を120㎞、在来区間で105㎞で走るのに対し、「はるか」は空港線を130㎞、在来区間を120㎞と「ラピート」を上回る速度で走っていることから、距離の差もJRにとってハンディになっていません。

「はるか」の運行ルートは貼付した図の通りですが、京都から発車した場合を例に、以下にもう少し詳しく述べさせていただきます。
まず、京都駅の30番線もしくは31番線から出発します。京都から新大阪までは、「はるか」用に敷設された専用線や東海道貨物線などを走り、ずっと東海道本線(JR京都線)と平走します。
新大阪からは梅田貨物線に入り、大阪駅の北側に広がる梅田貨物駅の構内を走って大阪駅をスルーします。そして福島駅の手前から大阪環状線と平走し、西九条で環状線と合流します。
しばらく環状線を走り、新今宮駅構内で「はるか」用に新設された阪和線への連絡線に入り、環状線と関西本線の路線をオーバークロスして天王寺駅構内に入ります。
天王寺を出発すると阪和線と合流し、日根野まで進みます。そして日根野から関西空港線に入り、りんくうタウン駅構内で南海と合流し、関空へと入っていきます。
これだけ複雑な走り方をする列車は、全国でもそうありません。

橿原神宮前駅

2006年08月21日 | 近鉄






奈良県橿原市にある近鉄の橿原神宮前駅は、橿原線(大和西大寺~橿原神宮前までの23.8km)、南大阪線(大阪阿部野橋~橿原神宮前までの39.8km)、吉野線(橿原神宮前~吉野までの25.2km)という近鉄の主要な3線がY字型に接続している駅です。橿原線がY字の右斜上の線、南大阪線がY字の左斜上の線、吉野線がY字の中央下の線に当たり、その3線の交わる点が橿原神宮前駅に当たります。

今回貼付した橿原神宮前駅の構内路線図を見ていただければわかるように、駅構内東側にある島式ホーム2面3線(1~3番線)が橿原線のホームで、西側の島式ホーム2面4線(4~7番線)が、南大阪線と吉野線が共用しているホームです。
8番線は、たまに南大阪線や吉野線の臨時列車や貸切列車が入線することがあるようですが、基本的に普段は使われていないようです。

改札口は、中央口、東口、西口の3箇所があり、橿原神宮への表参道に通じている中央口が、正面改札口に当たります。
そして、中央口と東口を結ぶ連絡通路は地上通路(踏切になっていて歩行者は直接レールの上を歩いて横切ります)で、中央口と西口を結ぶ連絡通路は地下通路(4~7番ホームの下を潜ります)となっています。
中央の写真は、地上の連絡通路から橿原線のホームに停車する車両を撮影した写真で、この写真は先月、近鉄を利用した際に同駅で撮影したものです。このときは橿原線から吉野線に乗り換えるため、同駅で下車しました。
下の写真は、南大阪線・吉野線用の4・5番ホームの南端から、吉野線と橿原線の合流方向(構内図で「吉野線」という文字が書かれてある辺り)を撮影した写真です。

ところで、橿原線は京都線(京都~大和西大寺までの34.6km)と直通運転しているため京都から橿原神宮前までは直通列車が何本も走っているのですが、橿原線は南大阪線や吉野線とは直通運転していないため、例えば京都から吉野へ行く場合などは、必ず橿原神宮前駅で乗り換えをしなくてはなりません。
一方、南大阪線と吉野線は橿原神宮前駅を介して直通運転しているため、大阪阿部野橋~吉野までの直通列車は何本も走っています。しかし、同一駅構内で接続しているにも関わらず、この両線(南大阪線、吉野線)と橿原線は、なぜか一本も直通運転されていないのです。

天皇陛下が近鉄を利用して京都から吉野へと行かれたときも、やはり橿原神宮前駅で乗り換えをされていますので、これはもう、京都から吉野へと向かう場合は誰であろうと例外なく橿原神宮前で乗り換えをしなくてはならないということです。
なぜ、橿原線(Y字の右斜上の線)はあとの2線(Y字の左斜上の線と中央下の線)と直通運転できないのかというと、理由は簡単で、それは軌間(線路幅)が異なっているからです。

近鉄は、大阪・京都・奈良・三重・岐阜・愛知の近畿・東海2府4県に約570kmもの路線を張り巡らせている、私鉄のなかではナンバー1の路線長を誇る最大手の私鉄ですが、その路線網は、生い立ちを異にする会社の合併によって形成されていったため、軌間だけでも3種類が存在しています。
近鉄全線の約7割を占めるのは標準軌(軌間1435㎜)で、京都線や橿原線をはじめ、大阪線・奈良線・名古屋線などがそれに該当しますが、南大阪線系統(南大阪線とその支線、吉野線など)はJR在来線と同じ狭軌(軌間1067㎜)となっています。そして、その標準軌と狭軌の路線が接続する駅が、橿原神宮前駅なのです。

しかし、今回貼付した構内路線図を見ていただければわかるように、軌間が異なり直通運転が行われていないにも関わらず、橿原線と吉野線のレールは、実は駅構内で繋がっています。
軌間が異なるのにどうして繋がっているのかというと、南大阪線系統を走る狭軌の車両が、標準軌の大阪線にある五位堂検修車庫で大掛りな検査を受けるとき、橿原神宮駅構内で台車を履き替えて、橿原線に入線するためです。
構内路線図の「狭広4線レール」と記されている区間が、車両をジャッキアップして台車を履き替える場所で、この区間には、標準軌・狭軌どちらの車両も入線できるよう、レールが4本敷かれています。
ですから正確にいうと、この区間では標準軌と狭軌のレールが繋がっているわけではなく、この区間では標準軌と狭軌のレールが重複して敷かれているということです。

阪神難波延長線 工事進捗状況

2006年08月08日 | 阪神






阪神難波延長線の概要等については、6月6日の記事で詳しく述べましたが、改めて簡単にいうと、阪神難波延長線(西大阪延伸線)とは、阪神や大阪府などの出資によって設立された第三セクター「西大阪高速鉄道」が、現在、阪神西大阪線の西九条駅と近鉄難波線の難波駅までの間3.4kmを連絡するために建設中の新線のことです。
この新線が完成するのは3年後の平成21年の予定で、この連絡線が完成すると、近鉄名古屋駅から山陽姫路駅までが一本のレールで繋がることになり、近畿・中部の2地域に跨る私鉄の新たな広域ネットワークが誕生することになります。

先月関西に旅行に行ってきた際に、私は、この難波延長線の工事の進捗状況を視察してきました。
一番上の写真は、難波までの延伸に備えて現在大幅な改良工事が進められている阪神の尼崎駅の様子です。
この写真に写っているホームは、新設工事中の1番ホーム(120m)で、現在の3・4番ホームが新線に割り当てられることから、このホームは梅田までの本線用に使用されることになります。
なお、この写真には写っておりませんが、新線に割り当てられる3・4番ホームは、10両編成の近鉄電車が停まれるように、現在、全長215mのホームに延伸工事中です。

中央の写真は、現在西大阪線の終端駅となっている阪神西九条駅の、線路の車止め部分です。難波への延伸が計画されてから40年以上もここで線路は途切れたままでしたが、難波への延伸工事が始まったことにより、ようやくこの先から線路が延伸されることになりました。
この車止めのすぐ先には、高架駅であるJR大阪環状線の西九条駅がありますが、阪神の西九条駅は高々架駅のため、そのまま線路とホームを真っ直ぐ延伸し、JRの西九条駅とは垂直に立体交差することになります。

一番下の写真は、JR西九条駅の東側で撮影した、阪神難波延長線の工事現場の様子です。沢山の大型重機が動いており、大変活気のある工事現場でした。

吉野山ロープウェイ

2006年08月02日 | 特殊軌道






先月、奈良県吉野町に行ってきた際に、吉野山ロープウェイ乗って吉野山(山上にある、世界遺産の金峯山寺や吉水神社など)に行ってきました。吉野山ロープウェイは、正式には「吉野大峯ケーブル自動車」といい、昭和3年に開業した、国内では現存最古のロープウェイです。
近鉄吉野線の終端駅である吉野駅から徒歩3分の場所にある「吉野千本口駅」と、山上の「吉野駅」までの間330mを、28人乗りのゴンドラで、片道5分で結んでいます。

国内最古のロープウェイだけに、このロープウェイの構造は現在のシステムとは少し異なっており、ロープに片側からぶら下るのではなく、2本のロープの内側からぶら下る、四線交走式という方式を採っています。この方式は、懸垂式モノレールのサフェージュ式に近いといわれています。

また、ゴンドラがケーブルカーの車両のように、平行四辺形のように斜めになっている所も現在のロープウェイとは異なります。