奈良県橿原市にある近鉄の橿原神宮前駅は、橿原線(大和西大寺~橿原神宮前までの23.8km)、南大阪線(大阪阿部野橋~橿原神宮前までの39.8km)、吉野線(橿原神宮前~吉野までの25.2km)という近鉄の主要な3線がY字型に接続している駅です。橿原線がY字の右斜上の線、南大阪線がY字の左斜上の線、吉野線がY字の中央下の線に当たり、その3線の交わる点が橿原神宮前駅に当たります。
今回貼付した橿原神宮前駅の構内路線図を見ていただければわかるように、駅構内東側にある島式ホーム2面3線(1~3番線)が橿原線のホームで、西側の島式ホーム2面4線(4~7番線)が、南大阪線と吉野線が共用しているホームです。
8番線は、たまに南大阪線や吉野線の臨時列車や貸切列車が入線することがあるようですが、基本的に普段は使われていないようです。
改札口は、中央口、東口、西口の3箇所があり、橿原神宮への表参道に通じている中央口が、正面改札口に当たります。
そして、中央口と東口を結ぶ連絡通路は地上通路(踏切になっていて歩行者は直接レールの上を歩いて横切ります)で、中央口と西口を結ぶ連絡通路は地下通路(4~7番ホームの下を潜ります)となっています。
中央の写真は、地上の連絡通路から橿原線のホームに停車する車両を撮影した写真で、この写真は先月、近鉄を利用した際に同駅で撮影したものです。このときは橿原線から吉野線に乗り換えるため、同駅で下車しました。
下の写真は、南大阪線・吉野線用の4・5番ホームの南端から、吉野線と橿原線の合流方向(構内図で「吉野線」という文字が書かれてある辺り)を撮影した写真です。
ところで、橿原線は京都線(京都~大和西大寺までの34.6km)と直通運転しているため京都から橿原神宮前までは直通列車が何本も走っているのですが、橿原線は南大阪線や吉野線とは直通運転していないため、例えば京都から吉野へ行く場合などは、必ず橿原神宮前駅で乗り換えをしなくてはなりません。
一方、南大阪線と吉野線は橿原神宮前駅を介して直通運転しているため、大阪阿部野橋~吉野までの直通列車は何本も走っています。しかし、同一駅構内で接続しているにも関わらず、この両線(南大阪線、吉野線)と橿原線は、なぜか一本も直通運転されていないのです。
天皇陛下が近鉄を利用して京都から吉野へと行かれたときも、やはり橿原神宮前駅で乗り換えをされていますので、これはもう、京都から吉野へと向かう場合は誰であろうと例外なく橿原神宮前で乗り換えをしなくてはならないということです。
なぜ、橿原線(Y字の右斜上の線)はあとの2線(Y字の左斜上の線と中央下の線)と直通運転できないのかというと、理由は簡単で、それは軌間(線路幅)が異なっているからです。
近鉄は、大阪・京都・奈良・三重・岐阜・愛知の近畿・東海2府4県に約570kmもの路線を張り巡らせている、私鉄のなかではナンバー1の路線長を誇る最大手の私鉄ですが、その路線網は、生い立ちを異にする会社の合併によって形成されていったため、軌間だけでも3種類が存在しています。
近鉄全線の約7割を占めるのは標準軌(軌間1435㎜)で、京都線や橿原線をはじめ、大阪線・奈良線・名古屋線などがそれに該当しますが、南大阪線系統(南大阪線とその支線、吉野線など)はJR在来線と同じ狭軌(軌間1067㎜)となっています。そして、その標準軌と狭軌の路線が接続する駅が、橿原神宮前駅なのです。
しかし、今回貼付した構内路線図を見ていただければわかるように、軌間が異なり直通運転が行われていないにも関わらず、橿原線と吉野線のレールは、実は駅構内で繋がっています。
軌間が異なるのにどうして繋がっているのかというと、南大阪線系統を走る狭軌の車両が、標準軌の大阪線にある五位堂検修車庫で大掛りな検査を受けるとき、橿原神宮駅構内で台車を履き替えて、橿原線に入線するためです。
構内路線図の「狭広4線レール」と記されている区間が、車両をジャッキアップして台車を履き替える場所で、この区間には、標準軌・狭軌どちらの車両も入線できるよう、レールが4本敷かれています。
ですから正確にいうと、この区間では標準軌と狭軌のレールが繋がっているわけではなく、この区間では標準軌と狭軌のレールが重複して敷かれているということです。