北海道人からみた関西圏の鉄道事情

関西圏の鉄道・その他についての諸々の雑感

神戸高速鉄道、開業50周年!

2018年04月07日 | その他の民鉄
神戸高速鉄道という会社や路線については、平成18年4月30日の記事平成19年10月21日の記事平成21年7月19日の記事などで詳述した通りなので、その概要等は今回の記事では省略しますが、神戸市内をそれぞれバラバラに走っていた阪急電鉄・阪神電気鉄道・山陽電気鉄道・神戸電鉄の4社の各ターミナル駅を結ぶ鉄道路線として、その神戸高速鉄道が昭和43年4月7日に事業を開始してから、今日で丁度50年が経ちました!



開業50年を記念して、神戸高速鉄道や、同鉄道に乗り入れている各社では、記念乗車券やグッズの発売等を行ったり、また、神戸高速線に乗り入れている阪急・阪神・山陽・神鉄の一部の列車では、今日から6月30日まで、記念ヘッドマークを掲出するなどします(但し阪神は、別途造形したヘッドマークではなく、ヘッドマーク型のシールと一部副標)。





神戸高速鉄道開業以前の神戸市内の交通は、旧国鉄が市内の東西を貫通してはいたものの、市外から乗り入れていた4つの民鉄はそれぞれのターミナル駅が大きく離れており(阪急は三宮駅、阪神は元町駅、山陽は兵庫駅、神鉄は湊川駅)、利用者は不便を強いられていましたが、神戸高速鉄道が開業した事でそれら4社の線路が繋がり、阪急・山陽間、阪神・山陽間では、神戸高速線を介して相互直通運転も行われるようになり(但し現在は阪急と山陽の直通運転は行われていません)、神戸市内交通の不便が解消されると共に、京阪神と播州工業地帯及び西北神地区間の輸送力が増強し、各地域と産業の発展にも寄与する事となりました。

ちなみに、神戸高速鉄道株式会社は、阪急阪神ホールディングスグループの鉄道会社ですが、その歴史的経緯から、神戸市が出資するため第三セクターでもあります。

アイアンホース号、大阪での修理が決定し7月中旬の運行再開を目指す

2018年04月04日 | 蒸気機関車
私は今から9年近く前の平成21年7月10日の記事で、北海道の小樽市総合博物館の敷地内で、同博物館の“看板列車”として運転されている動態保存蒸気機関車「アイアンホース号」を、紹介させて頂きました。
このアイアンホース号は、まるでアメリカの西部劇から抜け出てきたかのような姿をした、アメリカの古典的スタイルの蒸気機関車で、昨年10月まで、同博物館に敷設されている専用線で運転されていました。

以下の写真はいずれも、平成21年7月に私が小樽市総合博物館で撮影してきた、当時のアイアンホース号です。







北海道最古の動態蒸気機関車でもあるこの機関車は、今から110年近くも前の1909年(明治42年)に、アメリカのポーター社(官営幌内鉄道で走った、あの「義経号」「弁慶号」「しづか号」などを製造した会社です)で製造されたテンダー式蒸気機関車で、日本に輸入されて小樽で走るようになってからは、毎年4月~11月に運行されてきましたが、昨年は、シーズンオフを待たずに10月を以て運行が中止されました。
昨年10月19日、運行開始前の暖気運転中に、溶け栓(ボイラーと火室の間にある、バルブ状のパーツを固定しているネジ穴)の膨張による火室(燃料を燃やす部分)への水漏れが確認されたためです。

この水漏れは、火室の燃焼が安定しなくなるほどの多大な水漏れで、それをそのまま放置して運転すると、火室が使い物にならない程に変形してボイラーを作り替えなければならなくなったり、最悪の場合は、火室がボイラー内部の圧力に耐えられなくなって爆発を起こし、機関車そもののが再起不能に陥る、といった可能性も有り得るそうです。
つまり、単に“水漏れ”とは言っても、蒸気機関車にとっては致命的ともいえる程の極めて重大な故障で、しかもこの故障は、長年の使用で徐々に膨張する事による金属疲労が原因なので、博物館での日々の点検・整備で容易に直せる範疇のものではなく、元通りに復元するためには、ボイラー溶接士の免許を持っている職人が専門の工場で、大がかりな修理を行う必要があります。

しかし、蒸気機関車用のボイラーを修理出来る会社は、今となっては全国でも非常に稀で、以前は、小樽の隣街・札幌市にある「八条工業」という会社でも行なっていたそうですが、現在はその業務を中止しているらしく、そのため、大阪市にある「サッパボイラ」という、ボイラーの設計・製作・据付を行っている専門の会社に、アイアンホース号の修理を依頼する事が検討されます。
サッパボイラは、JR東日本・JR西日本・真岡鐵道など各社の動態保存蒸気機関車のボイラーの復元・検査を担当してきた実績がある事から白羽の矢が立ったのですが、資金面や手間などから本当に修理が実現出来るかどうか、不透明な状況が続きました。

そもそも蒸気機関車は、電気機関車やディーゼル機関車に比べると機械としての構造がはるかに複雑な上、アイアンホース号は今から百年以上も前に製造された老機ですから、今回の修理が無事に済んだとしても、数年先には再び何らかの大がかりな修理や交換が必要となる可能性もあり、そのため、これを機に、もう蒸気運転には拘らず、圧縮空気やディーゼルエンジンなど、他の駆動機関で動態保存を維持する方策も検討すべきでは、という声も一部から出るなどしたようです。
しかしこの度、目出度くサッパボイラで本格的に修理する事が決定し、小樽市総合博物館は、本年7月中旬に、今まで同様の動態蒸気機関車として運行を再開する、という方針を示しました。



修理にかかる費用は、輸送費等諸々も含め1,400万円で、アイアンホース号を所有する小樽市総合博物館は市営の施設ですから、アイアンホース号の修理には小樽市議会で予算措置を講じる必要がありますが、予算案の通過が不透明なため市の予算とは別に、資金集めの手段として今月下旬からクラウドファンディングが開始される事になりました。

また、修理に伴う手間も相当なもので、まず、アイアンホース号を小樽から札幌へと運び、「札幌交通機械」という鉄道車両を扱う会社で車体を分割し、ボイラー部分のみを大阪へ送ります。そして修理が完了すると、労働基準監督署による構造変更検査(ボイラーを改造施工した際に義務付けられる検査)を受け、それをパスした後、再び札幌交通機械で組み立て、小樽へ戻すという工程となり、サッパボイラによると、それら一連の作業には約2ヶ月かかる見込みとの事です。

アイアンホース号は、平成5年に小樽市が、米ミネソタ州のテーマパークから約1億円で購入して取得した機関車ですが、動態保存の蒸気機関車は、購入した後の動態保存維持にも、相応の費用と手間がかかるのだという事を、今回の事例からも改めて実感させられます。
平成19年4月29日の記事で詳述したように、実際には静態保存の機関車ですら、維持は大変な事なのに、まして動態保存機の場合、その苦労は“推して知るべし ”ですね。
単に「蒸気機関車を集客の目玉にしたいから」というだけの自治体・団体や、単に「蒸気機関車が好きだから」という個人が、もし仮に動態蒸気機関車を取得し所有出来たとしても、それ相応の資金力と実行力が無ければ、動態保存の長期的な維持は極めて困難であり、結局はその機関車に故障が発生すると同時に廃車、という流れになってしまうのでしょうね。