北海道人からみた関西圏の鉄道事情

関西圏の鉄道・その他についての諸々の雑感

神戸市営地下鉄 海岸線

2006年09月28日 | 地下鉄




海岸線は、三の宮・花時計前駅~新長田駅間を結ぶ7.9㎞の路線(全10駅)で、神戸市営地下鉄としては4路線目の地下鉄で、リニア地下鉄としては、大阪市営地下鉄長堀鶴見緑地線、東京都営地下鉄大江戸線に次ぐ国内3番目の地下鉄です。
私は、今年7月に関西に旅行に行った際に初めて海岸線を利用してきました。

ちなみに、海岸線開業以前から営業していた神戸市内の3路線の地下鉄とは、具体的には、①山手線(新神戸~新長田間、7.6㎞)、②西神線(新長田~名谷間、5.7㎞)、③西神延伸線(名谷~西神中央間、9.4㎞)の3路線のことですが、実際には、これらの3路線は全線が通し運転で、新神戸~西神中央間22.7㎞が「西神・山手線」という通称で呼ばれ一つの路線として機能しており、更に西神・山手線は、北神急行電鉄(谷上~新神戸間、7.5㎞)とも相互直通運転を行っています。

海岸線は、当初は既存の地下鉄(西神・山手線)と直通することを前提としていたのですが、市交通局の財政が悪化したことから、建設費の安いミニ地下鉄として建設することになり、そのため、既存路線との相互直通は出来なくなってしまうものの、リニア方式を採用することになったのです。
リニア地下鉄として新路線を建設することを決めた神戸市は、平成5年に三宮~新長田間の免許を取得し、翌6年に海岸線を着工しましたが、阪神・淡路大震災によって高速道路の橋脚や築島橋の基礎が損傷を受けたため、基礎を避けて海抜30mの地中深くにシールドトンネルを掘ることに変更し、このため開業は予定よりも遅れ、平成13年7月に営業を開始しました。
海岸線は、将来的には三の宮・花時計前から更に路線を延伸・分岐させ、新神戸までの新線と、ポートアイランドを経て神戸空港に至る新線を建設することが計画されています。
更に神戸空港からは、海底トンネルを建設して関空にまで路線を延伸するという壮大なプランもあります(この場合の想定建設費は1兆円)。

ところで、リニア地下鉄とは具体的にどのような地下鉄なのかというと、その名が示す通りリニアモーター駆動の地下鉄のことですが、高速で走るリニアモーターカー(例えばJR東海の山梨実験線のようなリニアモーターカー)とは違い、車輪は浮き上がらず、車両は常にレールの上を転がる車輪によって支えられています。
そのため、見た目は普通の地下鉄と大差はないのですが、走行する原理が一般的な鉄道車両とは大きく異なっており、2本のレールの間に敷かれたリアクションプレートという金属板と、各車両の台車に設置されている磁界を発生するコイル(ニリアモーター)との間に発生する磁力によって車両が動きます。
このため、リニア地下鉄の車両は、例えレールの幅が同じであったとしても、リアクションプレートの設置されていない他路線への乗り入れは一切出来ず、利用者にとっては、実はあまり利便性が高いとはいえません。

それでも、近年リニア地下鉄が国内各地で建設されるようになってきた背景には、リニア地下鉄の建設費が通常の地下鉄よりも大幅に安いということが挙げられます。
なぜ安く建設できるのかというと、リニア地下鉄では、通常の鉄道では車両の台車に設置されている大きなモーターを平にしたモーター(コイル)に変えたことで、床下から線路までの高さを低くすることができ、これにより車両が小型化し、トンネルの断面積を小さくすることができるようになったからです。
また、車輪自体には動力がないため、車輪の空転によって思うように加減速が出来ないということもなくなり、これによって急勾配にも対応できるようになり、様々な埋設物が埋まっている都会の地下でもトンネルのルートが簡単に決まられるようになり、これも地下鉄の建設費削減に大きく関係しています。

しかも、海岸線で使われている5000系電車は軸バネをゴムブッシュして柔支持し、これによってステアリング(自己操舵)機能を持ち、また、ゴムサンド式の防音車輪を採用しているため、走行音も静かで、急カーブでの軋み音もあまりしません。
昨年2月に開業した福岡市営地下鉄七隈線や、今年の12月に開業予定の大阪市営地下鉄今里筋線もリニア地下鉄で、今後建設される地下鉄はリニア方式が多く採用される傾向にあります。

ただし、前述したようにリニア地下鉄は、他路線との乗り入れが出来ない、という大きなデメリットもあります。リニア地下鉄は専用線以外を自走することはできませんし、他路線の車両も、トンネルの断面積が小さリニア地下鉄の路線に乗り入れすることは出来ません。
例えば、リニア地下鉄である都営大江戸線の電車は、検査や修繕のため馬込研修場へ向かう際、リアクションプレートの設置されていない浅草線を走るのですが、そのときは自走が出来ないため、わざわざ専用の電気機関車E5000形(地下鉄の電気機関車としては国内唯一の存在)に牽引されて浅草線を走っています。

ややこしい駅名

2006年09月21日 | ノンジャンル
京都に滞在していた頃、京阪鴨東線及び京阪本線にある丸太町駅、三条駅、四条駅、五条駅、七条駅等の駅は、日頃からよく利用していました。
当時は男山山上駅(京阪鋼索線)~丸太町駅(京阪鴨東線)間の通学定期券を持っていたため、両駅間に位置する三条駅、四条駅、五条駅、七条駅はその定期券で途中下車や乗車が可能であったため、例えば京都駅方面に行くときは七条駅で、東山郵便局(区の本局のため土日や祝日でもATMが利用可能)に行くときは五条駅で、四条通や河原町通沿い(四条寄り)の繁華街に行くときは四条駅で、河原町通沿い(三条寄り)の繁華街や御池通の地下街に行くときは三条駅で、それぞれよく降りていました。

ところで、これらの駅のうち丸太町駅、四条駅、五条駅の3駅は、実は全く同名の駅が、京阪本線と平行して西側を走っている地下鉄烏丸線にも存在します。
同名の駅であるにも関わらず、京阪線は川端通の地下を、烏丸線は烏丸通の地下をそれぞれ走っているため、京阪線と烏丸線の同一駅名の各駅間は一応歩ける距離ではあるものの(およそ1㎞)、だからといって同一駅扱いできる程近い距離にある訳でもありません。実際、運賃上も別駅扱いとなっており、乗り換え駅ともなってはいません。

私は、普段は京阪を利用していたため、これらの駅名を言われるとまず京阪の駅の方を連想してしまうのですが、私とは逆に、普段京阪を使うことはほとんどなく専ら地下鉄の方を利用している、という人たちも当然沢山いるはずですから、京都市民の前でこれらの駅名を言うときは、「京阪の」もしくは「地下鉄の」と前置きして言わないと混乱が生じることがあります。
京都の鉄道事情を全く知らない、初めて京都を訪れる人とこれらの駅で待ち合わせをするときなども、当然「京阪の」もしくは「地下鉄の」と前置きして言わないと、擦れ違いが生じる結果となるので要注意です。

路線としては京阪よりも地下鉄の方が新しいわけですから、地下鉄の駅を建設したときに、京阪線の駅と区別するために「烏丸五条」などとすべきだったと思います。
駅名を付けるのがあまりにも安易過ぎたといえるでしょう。

また、京阪本線の三条駅は、俗に「京阪三条」と言われますが、これに対して地下鉄東西線には「三条京阪」という駅があり、駅名の一部がそれぞれ逆になっているため、この両駅の名もかなりややこしいと言えなくはないですが、幸いにしてこの両駅は同一駅扱いなので、それ程混乱が生じているわけではありません。

ところで、実は私の暮らす札幌にも、「○条」という名の駅が複数存在しています。
いずれも地下鉄の駅ですが、例えば南北線には北34条駅、北24条駅、北18条駅、北12条駅があり、東豊線には北13条東駅があります。
また、○丁目という駅も多数存在し、東西線には西28丁目駅、西18丁目駅、西11丁目駅、南郷7丁目駅、南郷13丁目駅、南郷18丁目駅といった駅があります。

札幌の場合は、京都とは異なり他線に同一名の駅があるわけではないので、わざわざ「地下鉄の」などと前置きしなくても他の駅と混同してしまうようなことはありません。
しかし、○条とか○丁目というように数字の入った駅名がこれだけ多いと、それはそれで逆に混乱することもあります。普段から地下鉄を利用している札幌の市民が混乱することはまずないのですが、初めて札幌を訪れる人がよく混乱するのです。

数字が入る駅名のメリットとしては、その駅の場所が地図上のどこ辺りにあるのかが容易にイメージしやすいことが挙げられますが、デメリットとしては、駅名に個性が無さ過ぎることと、札幌のように数字の入った駅名が同一市内に沢山あると、初めてその路線を利用する人にとってはややこしくて駅名が覚え辛い、といったことが挙げられます。
そのため、札幌で近年建設された路線(東豊線の豊水すすきの~福住間、東西線の琴似~宮の沢間)には、○条や○丁目といった名の駅はつくられておりません。

上下分離方式

2006年09月11日 | 鉄道経営


関東ではまだ然程普及していない気もしますが(ただし都営地下鉄大江戸線の環状部はこの方式を採用しています)、関西では、近年建設される鉄道のほとんどは「上下分離方式」により建設されています。
現在建設中の京阪の中之島線、阪神の難波延長線、JRの大阪外環状線などはいずれもこの方式で建設されており、また、既に営業しているJR東西線や京都市営地下鉄東西線の三条京阪~御陵間も、この方式で建設・維持されています。

「上下分離方式」とは、線路等のインフラを、公的機関(国、都道府県、市町村など)と関係鉄道会社が出資して設立した第三セクター会社が建設・保有し、鉄道会社は、そのインフラを所有せずに第三セクター会社から借り受けて列車を運行する方式のことです。

もっと簡単にいうと、鉄道の線路部分は、一般の道路と同じ、という考え方です。
例えば、路線バスは国道・県道・市道などの一般の道路を走りますが、それらの道路はそのバス会社が建設したものではありません。私道でない限り、道路は全て、道路上を走るバスやマイカーなどからの各種税金により、公的機関が建設・維持しているものです。
しかし鉄道の場合は、道路とは違い、A社の列車が走る線路は、そのA社が単独で建設し保有している、というのが今までは一般的でした。
上下分離方式は、道路と同じ考え方を鉄道にも採用し、「下」に当たる線路は、公的機関の出資による第三セクター会社が建設・保有し、鉄道会社は、その会社に線路使用料を支払って「上」に当たる列車を運行する、という形を採ることなのです。

鉄道施設と鉄道車両を保有し、これらを維持・運行する鉄道会社を「第1種鉄道事業者」(大多数の鉄道会社はこれに該当)、鉄道車両だけを保有し運行する鉄道会社を「第2種鉄道事業者」(他社の路線で自社の列車を運行しているJR貨物はこれに該当)、鉄道施設だけを保有・維持する鉄道会社を「第3種鉄道事業者」というのですが、上下分離方式では、第三セクター会社が「第3種鉄道事業者」として新線を建設・保有し、自社の路線においては「第1種鉄道事業者」である鉄道会社が、その第三セクター所有の新線に限っては「第2種鉄道事業者」として列車を運行するのです。

この方式が採用されることによる利用者のメリットは、線路を建設・保有する会社と鉄道会社が、建設リスクと運営リスクを分離してそれぞれの持ち場に専念するため、建設コストが直接運賃に跳ね返らないことです。鉄道会社が単独で建設した路線よりも、運賃が安くなるのです。

しかも、利用者にとってのメリットは運賃が安くなるだけではありません。
この方式で建設された新線が開通すると、既存路線の混雑が緩和し、更に直通運転が実施されることで路線沿線も活性化し、また、新駅の開業によってその付近一帯も活性化に繋がります。
鉄道会社だけで新線を開通させると自社の利益となる周辺開発しかしないため、こうはいかないことが多いのです。

そして、鉄道会社にとっても、この方式を採用するメリットはとても大きいです。
新しい路線を鉄道会社単独で建設しようとすると膨大な費用がかかりますが、この方式を採用すると、公営地下鉄建設並の公的補助により路線が建設されるため、鉄道会社は、第三セクター会社設立のための出資と線路使用料を負担するだけで、新線で列車を運行することができるようになるのです。
しかも、線路を所有していないので、固定資産税などの諸税を払う必要もなくなります。

ちなみに、この場合の公的補助は、国と自治体から出されますが、その大半は、国土交通省の鉄道整備に関わる資金で、主として既存新幹線売却益や整備新幹線リース料などが充てられます。
京阪の中之島線と阪神の難波延長線の場合は、ともに建設費の7割を国と自治体でまかなっています。

つまり、この方式は、鉄道施設を建設・保有する主体と運行する主体とを分離することで、新しい鉄道の建設と運行を容易にする方式ともいえるのです。
今の所、この法式を採用することによるデメリットは少ないので(ただし国や自治体にとっては負担が増えます)、今後は更に普及していくものと思われます。