北海道人からみた関西圏の鉄道事情

関西圏の鉄道・その他についての諸々の雑感

さようなら、名鉄パノラマカー!

2009年08月30日 | その他の民鉄
関西の電車ではありませんが、昨年6月25日の記事(下記URL)では、名鉄のパノラマカー(名鉄7000系)について詳しく紹介をさせて頂きました。
http://sky.ap.teacup.com/applet/kansai/20080625/archive

昭和36年にデビューしてからおよそ半世紀(昭和中期~平成)に亘って中京地域を走り続けた、名鉄を象徴する電車、パノラマカーは、昨年12月26日に定期運行を終え、そして今日、ついに不定期(臨時、団体貸切など)の運行も終え、完全に引退をしました。

今から7~8年前、仕事の都合で私が3週間程名古屋に滞在していた頃は、言葉は悪いですがパノラマカーはまだ腐る程走っていて、名鉄の駅で電車を待っていればパノラマカーはかなり高い頻度で入線してきため、パノラマカーに乗車する機会はかなり多くあったのですが、定期運行の終了が間近に迫った昨年頃には、事前に時刻表で確認しておかなければ乗る事ができない程、パノラマカーの引退は急速に進んでいました。
そして今日を以って、パノラマカーはついに現役最後の日を迎え、沿線や各駅などで多くの人達に見守られながらラストランを終えました。
「名鉄と言えばパノラマカー」、このフレーズはもう過去のものになるのかと思うと、淋しい限りです‥‥。



上の写真は、昨年名鉄名古屋駅のホームで撮影した、「知多半田」行きの表示を掲げるパノラマカーです。少し前までは、名鉄の駅でごく当たり前に見られた風景でした。



上の写真は、メカニカルな雰囲気が漂う、パノラマカーの連結器まわりです。油圧式ダンパやジャンパ線なども確認できます。
これは1枚目の写真と同じ電車で、金山駅のホームから撮影しました。


他の方が撮影した、パノラマカーの動画も紹介させて頂きます。以下の各URLをクリックすると動画が再生されます。

▼ ミュージックホーンを鳴らしながら駅構内に入線するパノラマカーの映像
http://www.youtube.com/watch?v=uqiDe_MGoCE&feature=channel_page
http://www.youtube.com/watch?v=mKcYKab2XNM&NR=1

▼ 鉄道・道路併用時代の犬山橋を渡るパノラマカーの映像
http://www.youtube.com/watch?v=cWwEXv8UiP8&feature=related

また、昨年私がパノラマカーに乗ってきた様子は以下の記事で、写真付きで報告させて頂きました。私にとっては、この時がパノラマカー最後の乗車となりました。
http://sky.ap.teacup.com/applet/kansai/20080831/archive


鉄道ファンや一般利用者のみならず、日本中の人々を魅了し続け、時には感動も与えてくれた、あの鮮やかなスカーレットの名車がついに廃車されてしまったのかと思うと、とても感慨深いものがあります。
名鉄の駅でパノラマカーが奏でるミュージックホーンを聞くと、急に「今自分は愛知県にいるんだ」という実感が沸いてきたものです。

長い間お疲れ様でした、そして、ありがとう、名鉄7000系パノラマカー!

なにわ筋線

2009年08月17日 | なにわ筋線
6月13日の記事の最後のほうでは、南海汐見橋駅及びJR難波駅と、新大阪駅とを結ぶ計画の総計10.2kmの新路線「なにわ筋線」について少し触れさせて頂きましたが、今回は、現時点ではまだ全線未着工の、そのなにわ筋線について詳しく解説させていただきます。

なにわ筋線は、そもそもは昭和50年代に計画され、平成16年の近畿交通審議会答申第8号では「中長期的に望まれる鉄道ネットワークを構成する新たな路線」として盛り込まれたものの、大阪府と大阪市の厳しい財政難が続く中、建設総額が3,000~4,000億円にもなると見積もられていることなどから実質的には全く手付かずの状態で、計画は事実上凍結されていたのですが、大阪府の橋下徹知事が昨年2月の就任以来、なにわ筋線の建設を積極的に訴えていることや、今年4月に関西大手私鉄5社、JR西日本、大阪府、大阪市、関西経済界の首脳らが国土交通省主催の会議(事実上の“関西鉄道サミット”)で「大阪中心部と関西国際空港を30分台で繋ぐ路線としてなにわ筋線の建設が必要」との合意に達したことなどから、最近になって、長らく凍結されていたなにわ筋線の計画が、実現に向けて再始動しつつあります。



なにわ筋線は上図のように、南海汐見橋線(正式には高野線)の汐見橋駅と、JR関西本線のJR難波駅の2箇所からそれぞれ堀江まで延び、合流した堀江からは、西本町、中之島、福島、北梅田を経て新大阪に達する路線で、基本的にはなにわ筋(大阪市内を南北に走る道路の一つで、大阪府道41号大阪伊丹線の一部)の地下を通って大阪市を縦に貫通する路線です。
計画通り完成すれば、同線とそれぞれ接続・直通する南海とJR西日本の2社が運行する列車によって、関西の空の玄関口である関西国際空港と、大阪の陸路の玄関口である新大阪が、大阪の都心部である難波・中之島・梅田を経て一直線に結ばれることになり、主に南海とJRの関空アクセス電車が走るようになります。

現在関空~難波の間を走っている南海の看板特急「ラピート」もなにわ筋線に乗り入れるようになり、また、現在梅田貨物線を走っているJRの関空アクセス特急「はるか」も、なにわ筋線経由に移行することになります。
ちなみに、下に貼付の写真2枚のうち、上段が「ラピート」(平成18年4月19日の記事からの再録)で、下段が「はるか」(平成18年8月27日の記事からの再録)です。





そして、なにわ筋線の着工と同時に、同線と直通する南海の汐見橋線は、津守駅の南方から汐見橋駅までの約1.5kmが地下化され、それに伴い、終端構造の地上駅である現在の汐見橋駅は廃止され、代わって、島式ホーム1面2線の新たな汐見橋駅が地下駅として建設されます。
また、汐見橋線のもう一方の終点である岸里玉出駅では、南海本線と直通運転ができるように線路の配置が変更されます。
一方、既に地下化されているJR難波駅は、現在は終端駅として運用されているものの、将来の延伸(なにわ筋線との接続・直通)を見越して島式ホーム2面4線の中間駅の構造で建設されており、ホームの北側終端を過ぎてもトンネルは左にカーブしながら少し続いているため、JR難波駅自体は汐見橋線ほどに大きな改造を必要とはしません。

なにわ筋線の着工が正式に決定されると、恐らく、「なにわ筋高速鉄道」という名の第三セクターの鉄道会社が設立され、なにわ筋線は、その会社が第三種鉄道事業者となって上下分離方式により建設され、南海とJRが第二種鉄道事業者となってそれぞれ乗り入れるという形を採ることになると思われます。

現在、関空と大阪駅とはJRで1時間程度かかりますが、なにわ筋線を経由すると、その所要時間は30分程度に大幅に短縮されることになり、また同線は、大阪都心の梅田や難波、昨年開通した京阪中之島線の中之島駅とも接続する予定であることから、開通すると関西の鉄道ネットワークの利便性が格段に向上することになり、更に、関空の利用低迷に悩む空港関係者の間からも期待が高まっています(関空会社の村山敦社長は、「関空のインフラを生かし切れていない要因の半分はアクセスの問題。なにわ筋線は決定的な解決策になる」とまで発言しています )。

こういったことから、最近は行政レベルでもなにわ筋線実現に向けての動きが各所で起こっており、特に大阪府の橋下知事は積極的な推進派の一人で、「関空へのアクセス向上には不可欠」として同線の建設に前向きな発言を繰り返し、「なにわ筋線は関西全体を強化するインフラ。将来世代のためになる。関西の宝になる鉄道」との見解を示しており、また前述のように、今年4月の会議で南海とJRを含む関西経済界の首脳らが同線の建設は必要であるとの合意に達したこと、その合意を受けて国土交通省が事務レベルの検討会議を設け来年度の予算に建設の前提となる基本調査費を計上することが決定したことなどから、今まで「本当に造る気あるのか?」と思われていたなにわ筋線の計画が、今年に入ってから急速に再始動しつつあります。
北梅田~新大阪までの約4kmについては、その後立ち上がった「梅田北ヤード」開発工事に合わせ大阪市とJRが地下化するJR東海道支線をなにわ筋線と共用させれば、当初3,000~4,000億円と見込まれていた建設費用が2,000~3,000億円程度に削減できるという見込みが公表されたことも、計画実現の追い風になっています。

ただ、事業費の負担割合については関係者それぞれの思惑が交錯しており、南海は、「これまで全く協議されていなかった現状を進展させるきっかけにはなる」として、なにわ筋線の計画前進にはある程度前向きな姿勢を示しながらも、「費用負担には限界がある」「採算が取れないとどうしようもない」と慎重な姿勢は崩していません。
また、今年4月に開催された前出の会議の席では、橋下知事が「市域を超えた関西全体の利益という観点で大阪市にはリーダーシップを発揮してもらいたい」と発言すると、大阪市の平松邦夫市長は「費用負担の面で知事に走ってもらうと、市は後にしっかりついていく」と切り返すなど、大阪府と大阪市が互いに牽制し合う場面も見られました。

5兆円もの借金を抱え、「将来世代に負担を先送りしない」として歳出削減を進めてきた橋下知事ですが、なにわ筋線と、自動車専用道路「淀川左岸線延伸部」については、「将来世代のために必要な社会インフラなら、借金を負わせても造るべきだ」と主張しており、慎重姿勢を崩さないおひざ元・大阪市の平松市長に対しては、「関西が発展しないのは大阪市が原因」と苛立ちを見せています。
もっとも、そうは言っても、年間で1,200億円の税収減が見込まれる大阪市にとっては、なにわ筋線の建設がすぐに了承できる話ではないのも確かでしょう。
大阪府と大阪市の両トップの綱引きは、まだ暫く続きそうな気配です。

ところで、なにわ筋線をめぐる最近の動向で、私が個人的に特に注目しているのは、実は南海の動向です。
前出の4月の会議では、南海はなにわ筋線の計画そのももに慎重姿勢を示しながらも、「キタとミナミの中心を結ぶことが大事」とも主張し、新たに、南海難波駅からのなにわ筋線への接続構想を一案として示したのです。
前述のように南海としては、なにわ筋線へは汐見橋線から接続させるとしていたのですが、これに対して4月に示された新たな案は、現在の南海本線及び高野線のターミナル駅である難波駅からなにわ筋線と接続・直通させるという案です。

とはいっても、阪急の梅田駅と並んで関西屈指の巨大ターミナルである櫛形ホーム9面8線の構造の南海難波駅を中間駅の構造に改変する事は極めて困難であるため、もし難波駅となにわ筋線を接続させるとしたら、恐らく近鉄の上本町駅のように、中間駅構造の地下ホームを新たに建設し、従来からある終端構造の高架ホームと合わせて、上下二層に分かれた構造のホームを持つ駅に改造されるのではないかと思います。

それ自体大きな改造工事であることには変わりませんが、しかし現在ある高架の櫛形ホームと路線を中間駅構造に造り直すよりは容易でしょうし、それに、汐見橋駅と接続させる従来の計画でも、どのみち汐見橋線の約1.5kmを地下路線化させることが前提となっているのですから、路線の一部を地下化するという点では、どちらの計画であっても大きな変更はないとも言えます(ルートそのものは大幅に変わりますが)。

国土交通省は、なにわ筋線の採算性や需要予測、事業主体などを検討する基礎調査を今月から実施することを既に正式に決めており、今後は、汐見橋駅とJR難波駅からそれぞれ接続する現行の2ルートに加え、南海難波駅から接続するルートを含めた計3ルートの具体的な検討を進め、早ければ平成23年までに一定の結論を出す方針とのことです。
JR難波駅と接続するルートを計画に盛り込むことは既に確定していることから、今後は、南海汐見橋駅か、南海難波駅か、いずれかを通るルートを選択することになります。

ただ、もしなにわ筋線が南海難波駅から接続されることになったとしたら、赤字運営としか思えない汐見橋線が廃止されるのはほぼ確実と思われます。日中でも乗客がまばらな、ひなびた“盲腸線”の汐見橋線が廃線とならずに現存しているのは、なにわ筋線と接続することが前提になっているはずですから。

日本車輛製動態保存SL S-304

2009年08月05日 | 蒸気機関車
先月10日の記事では、小樽市手宮にある小樽市総合博物館敷地内の専用線で運転されている、米ポーター社製の動態保存SL「アイアンホース号」の牽引する客車に乗車してきたことを報告させていただきましたが、今月1日、私は、三笠市にある三笠鉄道村敷地内の専用線で運転されている、日本車輛製の動態保存SL「S-304」の牽引する客車にも乗車してきました。

それにしても、北海道最初の鉄道として旅客や石炭を輸送し、北海道の発展に大きく貢献してきた幌内鉄道の起点である小樽(手宮駅跡地)と、終点である三笠(幌内駅跡地)で、手宮線・幌内線の両線が共に廃止されてしまった現在でもそれぞれ動態保存SLが運転されていることは、とても感慨深くもあります。





上の写真2枚が、その「S-304」です。
昭和14年に日本車輌で製造された、全長8.386m、全高3.55m、全幅2.67m、最高速度38km/h、動輪直径1.067m、機関車重量29.5tの、軸配置C(3軸)の産業用タンク式機関車で、北海道室蘭市の鐵原コークスで工場内の入換用に使用されていました。
保存用や観光用を除くと、日本では最も遅くまで現役で使用されていたSLでもあります。

S-304は現在、2両のトロッコ客車(トラ45000形貨車を改造したオープン型の客車)を引いて、三笠鉄道村の敷地内で展示運転を行っています。この路線は、かつての運炭列車の構内引き込み線を使用した僅か450mの路線ですが、S-304は1回の運転で2往復するため、1回乗車するとトータルで1.8kmの距離の乗車を楽しめます。
開放的なトロッコからはSLの軽快なドラフト音や振動を堪能することができ、産業用の小型SLとはいえ黒煙を吐き上げて走る姿はなかなか迫力満点です。
私の感想としては、運転中は黒煙の匂いを感じることができ、また、トロッコから顔を出して正面を向くと、まるで霧吹きで吹き掛けられたように霧状の水が顔にかかり、「おおっ、これぞSLの醍醐味!」と嬉しく思いました(笑)。

小樽のアイアンホース号の運転と異なるのは、三笠鉄道村の展示運転線には転車台(ターンテーブル)が設けられていないため、SLの向きは常に一定で(正面はクロフォード公園側を向いています)、そのためトロッコの最後部に乗車すると、鉄道記念館に戻る方向で運転される時はそこが最前部となり、ちょっとした展望車気分を味わえます。
私は、個人的にはタンク式機関車よりもテンダー式機関車(炭水車が連結されているSL)のほうが好きですが、このようにバック運転がしやすいのはタンク式機関車の大きな利点といえます
また、アイアンホース号とは異なり線路の軌間は旧国鉄やJRと同じ1,067mmなので、将来的には、まだレールが撤去されずにそのまま残っている旧幌内線の鉄道記念館とクロフォード公園(旧三笠駅)までの区間を運転することも検討されているようです。

下の写真は、出発の準備を進める機関士と、運転室の床の上に直接積まれている石炭です。
機関士の足下に直接石炭があるこういった様子は、タンク式機関車ならではといえるでしょう。



下の写真は、SLの発車直後に最後尾のトロッコから撮影した、SLが停まっていた場所の線路です。
電車やディーゼルカー、遊園地の偽装SLなどでは考えられない、ホンモノのSL特有のこの線路の汚れ具合が、私としては結構グッときます(笑)。



ちなみに、三笠鉄道村は、道内で使用された総計50両近い鉄道車両を展示・公開しており、さいたま市の鉄道博物館、京都市の梅小路蒸気機関車館、群馬県安中市の碓氷峠鉄道文化むら、そして小樽市総合博物館などと共に、質量ともに日本の鉄道博物館としてはトップクラスの規模を誇っています。
北海道にお越しの際は、小樽市総合博物館と共に是非三笠鉄道村にもお立ちより下さい!