北海道人からみた関西圏の鉄道事情

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近鉄が軌間可変電車の開発推進を発表

2018年05月23日 | 近鉄
近鉄は今月15日、車軸に取り付けられた車輪を左右にスライドさせる事で2本のレール幅(軌間)が異なる路線でも直通運転が出来る「軌間可変電車」(フリーゲージトレイン=FGT)の開発を推進すると発表しました。

近鉄の路線は、軌間別に分類すると、新幹線・京阪・阪急・阪神などと同じ1,435mm軌間の「標準軌」(但し近鉄では公式には「広軌」と呼称)と、JR在来線・南海などと同じ1,067mm軌間の「狭軌」の2つに大別され、大阪線・京都線・橿原線などは標準軌、南大阪線・吉野線などは狭軌となっており、当然の事ながら、軌間の異なる路線同士の直通運転は不可能となっています。
そのため、例えば京都~吉野間で近鉄を利用しようとすると橿原神宮前駅(下の写真の駅です)の構内で橿原線と吉野線は接続しているのですが両線は軌間が異なるため、必ず同駅で列車を乗り換える必要があります。



こういった不便性を改善するため、近鉄は、近鉄全線での軌間の統一、複数の軌間に対応した線路(3線軌)への改造など、今まで直通運転に向けた「様々な解決方法を模索」してきており、そういった模索の結果として、この度、FGTの開発推進を決定したとしています。
もし近鉄にFGTが導入されると、京都~吉野間の直通列車の運行が可能になる(そうなれば、東京駅からも、京都駅で1回乗り換えるだけで吉野まで行けるようになります)だけではなく、大阪メトロ(大阪市高速電気軌道)の地下鉄中央線と相互直通運転を行う関係で750Vの第三軌条方式を採っているけいはんな線を除く、全ての近鉄路線を同一列車で自走出来るようになります。


日本ではこれまで、国土交通省や鉄道建設・運輸施設整備支援機構(鉄道・運輸機構)が中心となって、新幹線と在来線の直通列車用としてのFGTの研究が進められてきました。
4年後に九州新幹線・西九州ルート(長崎新幹線)の武雄温泉~長崎間が開業する予定である事から、在来線(長崎本線など)と長崎新幹線の両方に乗り入れて博多~長崎間を直通する特急の運転が考えられてきたのです。

しかし、FGTの試験車両(下の写真の車両)は、高速域での走行試験で車軸に傷がつくなどのトラブルが発生し、実験開始から十数年かけてもFGT実用化の目処は立たず、現状では開発は頓挫しているといえる状況で、JR九州もFGTの導入を既に断念しており、新幹線へのFGT導入はかなり難航している状況です。



しかし、高速走行試験に於いてトラブルが発生したという事は、逆にいうと、低速域ではトラブルが発生しにくいともいえ、現在のFGT試験車両は最高速度を270km/hとしていますが、近鉄線の最高速度は130km/hであり、新幹線ほど速く走るわけではありませんから、近鉄としては、新幹線よりも低速での運転からばFGTを導入出来るかもしれない、と考えたのかもしれません。
あくまでも、今回はFGTの開発推進が発表されただけであり、近鉄は、今後については「国土交通省とも相談させていただきながら、他の鉄道事業者や鉄道車両メーカーなどと共に、FGTの実用化に向けた検討を進めていきたいと考えています」としており、実際に近鉄がFGTを本当に導入するのかどうかはまだ分かりませんが。

兎も角、JR以外の私鉄がFGTを本格研究するのは初めての事であり、今後近鉄が、近畿車輛や国土交通省などと協力しながら研究開発に乗り出す事で、JRが事実上断念した技術が近鉄で実用化される可能性も決して低くはなく、今後の展開に大いに期待したいところです!

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1 コメント

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Unknown (ガーゴイル)
2021-01-08 18:42:26
フリーゲージトレインは本当は完成している。
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