北海道人からみた関西圏の鉄道事情

関西圏の鉄道・その他についての諸々の雑感

私の撮った手宮線の写真が本に掲載されました

2009年12月30日 | 書籍紹介・書評
現在は休刊しておりますが、出版業界にいる私の友人K君は、2~3年程前、東京で「ガス・アンド・リソーシーズ」という誌名の、ガス・エネルギー業界誌(月刊誌)を発行していました。

20代で自分の会社を立ち上げたK君は、当時、その会社の事務所で社長兼編集長としてその雑誌を制作していたのですが、仕事が多忙を極め、札幌にまで来ることまではなかなかできなかったため、雑誌に掲載する写真を札幌で撮る必要が生じた時などは、札幌在住の私に「ここでこういう写真を撮ってきて貰えないだろうか」という依頼をしてくることがあり、私も写真を撮るのは好きなので、そういった依頼には積極的に応じていました。

実際に私が撮った写真でその雑誌に掲載されたものとしては、当時札幌市東区にオープンしたばかりの大型商業施設「アリオ札幌店」の建物外観の写真や、解体工事中の北海道ガス札幌工場の写真などがあり、K君はその雑誌「ガス・アンド・リソーシーズ」の奥付に「編集記者」として私の名前も記してくれたりしました(ちなみに、アリオの写真は中部電力の子会社であるシーエナジーが重油コージェネシステムを提供した商業施設として紹介する記事で使用されました)。
素人ながらも私はカメラマンとして、全国に流通する商業誌に関わることができ、当時は結構嬉しかったのですが、その時の関わりから、私は今年もまた、K君からの依頼により一冊の本に関わらせて頂く事ができました。

今年私が関わった本は、ガスやエネルギー業界とは全く関係がなく、そもそも雑誌でもなく、『旅してみたい日本の鉄道遺産』というタイトルの、三宅俊彦さん(鉄道史学会会員、鉄道友の会会員)の著された書籍です。
一般には、高校で使われる日本史や世界史の教科書の出版元(歴史系の教科書としては圧倒的なシェアを占めています)として知られている山川出版社から、今年9月に出版されたB5変型判・全192ページ・本体価格1,800円の単行本です。



この本は、コンクリートや煉瓦造りの鉄道アーチ橋、煉瓦造りのランプ小屋、歴史的な駅舎、SL全盛時代の遺物である給水塔や転車台、道路に転用されたかつての鉄道トンネル、可動橋、跨線橋、廃線跡、終着駅の石碑など、全国の鉄道遺産を厳選してそれらを豊富な写真と共に紹介する本で、私は、今も北海道の小樽に残る手宮線(旧幌内鉄道の一部)跡や、手宮線にまつわる鉄道遺産等の写真を撮影・提供するという形で、微力ながらもこの本の作成に協力させて頂きました。
以下に、その本の中から、私がカメラマンとして直接関わった、手宮線についての見開き(2ページ)をデータ化した画像を貼付させて頂きます。



昨年11月28日の記事で詳しく書かせていただいたように、もともと幌内鉄道(その一部の区間が後に手宮線と称されるようになりました)は私にとって思い入れの深い路線であるため、私としてはかなり張り切って、頼まれた訳ではない被写体やアングルの写真も多数撮影・提供し、有りがたいことに著者や編集者の判断からそういった写真も何枚も掲載していただきました(笑)。
下の写真もそんな一枚で、これは、函館本線から手宮線が分岐していた辺りを花園橋という跨線橋から撮影したものなのですが、この写真は見開きの中では一番大きく掲載されました。



折角なので、私が撮影した手宮線跡の写真のうち、この本では採用されなかった写真も以下に4枚貼付させていただきます。
いずれも、現在は散策路に転用されている区間の風景で、残念ながら実際にここを列車が走ことはもうありませんが、北海道に於ける鉄道輸送の幕開けを記念するオブジェとしてレールは当時のまま残されています。









幌内鉄道は、日本では3番目に、北海道では最初に建設された鉄道で、北海道の鉄道及び近代輸送の歴史はこの線路から始まったのです。

叡山ケーブル

2009年12月10日 | 特殊軌道
私は今から6年前、「叡山ケーブル」の通称で知られる京福電気鉄道鋼索線(ケーブル八瀬~ケーブル比叡間、路線距離約1.3km)のケーブルカーに乗って比叡山へと行って来ました。
叡山ケーブルは、561mという、ケーブルカーの路線としては日本最大の高低差がある鋼索線としても知られています。

下の写真は、私が叡山ケーブルに乗車した際、行き違い区間通過時に車内から撮影した対向車です(この写真は昨年12月17日の記事からの再録です)。
叡山ケーブルの現在の車両は「ケ型」と称される、昭和62年に武庫川車両(阪神電気鉄道の子会社)で製造された車両で、車内は2人+1人掛けのクロスシートで、乗車定員137人です。



叡山ケーブルは、比叡山延暦寺への参拝客を運ぶ西側(京都方面から)のルートとして大正14年に京都電灯という電力会社が開業させた路線で、昭和17年、配電統制令によって京福電気鉄道に経営が移管しました。
戦争末期の昭和19年には、戦況の悪化により一旦旅客営業を休止したものの、戦後、昭和21年には営業を再開し、昭和40年には西塔橋駅をケーブル八瀬遊園駅に、四明ヶ嶽駅をケーブル比叡駅にそれぞれ改称し、そして平成14年、ケーブル八瀬遊園駅をケーブル八瀬駅に改称して、現在に至ります。
ちなみに、延暦寺への参拝客を運ぶ東側(琵琶湖方面から)のルートとしては、坂本ケーブルの通称で知られる比叡山鉄道の鋼索線が昭和2年に開業しています。

所要時間は約9分で、平日は20分~30分間隔で運行されていますが、土曜日・休日や多客期には増便されて運行されます。
但し、延暦寺への初詣客を輸送するため年末年始は運行されるものの、年末年始を除く冬期間は、ケーブル比叡駅で接続している叡山ロープウェイとともに運行が休止されます。



上の写真は、ケーブル比叡駅の駅舎内にある、ケーブルカーを引っ張る直径4cmの鋼鉄製ロープを巻き上げる巨大な滑車です。
ケーブルカーはこの鋼鉄製ロープの両端に1両ずつが取り付けられていて、そのロープを井戸の釣瓶のようにこの滑車で巻き上げることによりケーブルカーは運転されます。

そのため、ケーブルカーの場合は一般の鉄道と違って運転室は車内ではなく車外(山上側駅舎内)に設けられており、叡山ケーブルの場合は、この写真の滑車の上にある緑枠の窓のある部屋が運転室になっています。



上の写真は車内からケーブル八瀬駅方面を撮影したもので、ケーブルカーの路線としては珍しく、路線中間部の行き違い区間以外で路線が分岐しています。
叡山ケーブルには「ケト101」という貨車が在籍しているそうなので、この写真に写っている右側に分岐している線路は、恐らくその貨車のための引き込み線なのだと思います。

鉄道ファンの立場から現政権に望むこと

2009年12月04日 | 鉄道経営
先月30日の日本テレビの報道によると、阪急電鉄と阪神電気鉄道を傘下に持つ「阪急阪神ホールディングス」が、大阪国税局から約10億円の申告漏れを指摘されていたことが発覚しました。

関係者によると、阪急阪神ホールディングスは昨年度までの3年間、資産に計上するべき電車の部品を少なく見積もったなどとして約10億円の申告漏れを指摘され、更に、阪急電鉄と阪神電気鉄道が「廃棄や修理が必要」として資産に計上しなかった架線などの部品について大阪国税局は「棚卸し資産として計上すべきであった」とし、申告漏れのうち5億円は所得隠しであったとも指摘したそうです。

この件について阪急阪神ホールディングスのグループ経営企画部は、「税務調査を受けたのは間違いない。ご指摘を真摯に受け止め、納税を済ませた。再発防止のため徹底を図っている」とコメントしましたが、ネットなどでは、阪急阪神ホールディングスを非難する声よりも、「国のトップである総理大臣が11億円の脱税をやっているので問題なし」「国内でも指折りの大企業ですらなかなか追い越せない脱税額はさすが。総理大臣の貫禄ですね」など、鳩山政権を揶揄する材料として使われている事例が見受けられるのが興味深いです(笑)。

総理の巨額脱税には「やれやれ」と呆れるばかりですが、とりあえずその件は野党の追及と検察の捜査に頑張っていただくとして、私が今、鳩山政権に強く望むことの一つは、民主党が選挙公約に掲げていた高速道路料金無料化を、是非とも白紙撤回していただきたい、ということです。

高速道路料金無料化が実現されると、国土交通省の試算によると鉄道乗客数は10.6%も減少し、また、第一生命経済研究所の主席エコノミスト・永濱利廣氏の推測によると、鉄道市場には1349億円の減収をもたらし市場全体は3.2%も縮小することになり、鉄道業界には大打撃を与え(特に、JR旅客6社の中で一番体力のないJR四国は、赤字体質が更に悪化して、これまでの事業を存続させることができなくなる可能性すらあります)、それだけでなく、国土交通省の試算では道路利用者が57.5%増加することから二酸化炭素排出量は33%も増加することになり、これは、温室効果ガス25%削減を掲げる民主党の目標と大きく矛盾することになります。

勿論、高速道路料金無料化は鉄道だけでなく、航空や海運に与える影響も甚大で(実際、高速道路割引の影響により、瀬戸内海などでは既に廃止されてしまった航路もあります)、JR東海の松本社長が言うように、高速道路の大幅割引や無料化は「交通体系のバランスを崩す」ことになります。
そもそも、国民の多くも、鳩山政権が当初期待していたほどに高速道路料金無料化の政策を支持はしていません。

というわけで、鳩山首相には是非とも考え直して貰いたいと思い、先ほど、首相官邸ホームページの「ご意見募集」フォームから、その旨の意見を送信させていただきました。