京阪にとっては鴨東線(三条~出町柳駅間 2.3km)開業以来約20年ぶりの新線となった「中之島線」(天満橋~中之島駅間 3.0km)の開業と、同線開業に合せて新造されローレル賞やグッドデザイン賞も受賞した「京阪3000系電車」のデビューから、今日で丁度10年が経ちました。
これを記念し、第二種鉄道事業者として中之島線で営業している「京阪電気鉄道」と第三種鉄道事業者として中之島線を所有している「中之島高速鉄道」の両社は、今日から明後日(21日)にかけて、クイズラリーや記念グッズ販売などの10周年記念イベントを開催します。
先月29日からは、3000系電車の全6編成が、下図の10周年記念ヘッドマークを掲出して運転しており、これは今月28日まで続けるとの事です。
中之島線については、私も今までこのブログで(同線が開業する前から)度々取り上げており、個人的にもずっと関心を持ってきただけに、「中之島線開業10周年」と聞くと、感慨深い思いを感じます。
3000系電車についても、本年7月13日の記事で述べたように私は同電車のNゲージ鉄道模型8両セットを購入するくらいですから、やはり高い関心を持っており、この電車がデビューから10年が経ったというのも、同じく感慨深いものがあります。
開業時は中之島線を象徴する列車種別であった、中之島線と京阪本線を直通する「快速急行」は、今はもうほとんど運転されていないなど、この10年間で中之島線や同線を取り巻く環境にはいろいろな変化が生じてきました。
当初はその「快速急行」でメインに運用されていた3000系電車も、今はほとんど京阪本線のみでの特急・快速特急などとして運用されており、デビュー時には無かった「洛楽」や京阪特急伝統の「鳩マーク」などのヘッドマークを掲げ、デビュー当時とは少し表情を変えて走っています。
そういったいくつもの変遷と、10年という年月を経て、京阪の主要な路線のひとつとして、京阪の代表的な車両のひとつとして、中之島線や3000系電車は、しっかりと沿線地元に根を下ろし定着しました。
中之島線には、同線の開業前から西九条までの延伸計画がありましたが、その後、本年8月11日の記事で詳述したように、中之島線を現在終点の中之島から九条まで路線を延伸させ、九条駅で地下鉄中央線に接続させる事で舞洲方面への最短アクセスを目指す、という新たな構想も発表されました。
また、中之島線を、九条駅を経由して西九条駅まで延伸させる、という更に新たな計画も、本年に入ってから京阪ホールディングスの加藤好文社長が明らかにしています。
つまり、当初の延伸計画は「①中之島~西九条」だったのですが、その後、延伸先を西九条から九条に変更し「②中之島~九条」とし、最近になって、延伸先をまた九条に戻したのです。
但し、この最新の延伸プラン「③中之島~九条~西九条」は、中之島から最短で西九条を目指していた①の案とは異なり、九条を経由するため、実質②の案も受け継いだものとなっているのが大きな特徴です。詳しくは、下の路線図を御参照下さい。
旅客流動が開業前の予想より大きく下回り、現在はどうしても低迷している感が拭えない中之島線ですが(特に、中之島線と近い時期に開業した、右肩上がりの「阪神なんば線」と比べると、その傾向は顕著ですが)、このように、これからの中之島線は大阪の都市開発と共に大きく変貌する可能性が高まってきている、と言えます。
しかし、こういった壮大な計画・構想に対しては、当然の事ながら、懐疑的な声も少なからずあります。
以下(二重カギ括弧内の紫文字)は、本年2月18日に、日本と世界を旅する人のための旅行情報サイト「旅行総合研究所タビリス」にアップされた、『京阪中之島線はどこへ行く。「西九条延伸」の前に過去の検証を』というタイトルの記事からの一部抜粋です。
『低迷する利用者数
壮大な計画とは裏腹に、京阪中之島線の利用は低迷しています。2016年度「大阪府統計年鑑」によりますと、京阪中之島線の各駅の1日の乗降客数は、中之島駅8,871人、渡辺橋10,025人、大江橋6,003人、なにわ橋2,539人。合計で27,438人となっています。
淀屋橋駅の107,326人はもとより、北浜駅35,437人に比べても、その少なさは明らかで、中之島線が京阪の経営の重荷になっていることが察せられます。実際、開業時に乗り入れていた快速急行はほぼ廃止となり、日中時間帯に普通列車しか走らない路線になってしまいました。
この状況を打開するために、京阪としては、中之島線を九条駅や西九条駅とつなぐことで盲腸線状態を解消し、観光地を結ぶ路線に発展させようとしているのでしょう。
想定の2割
九条駅や西九条駅まで伸びれば西方向の旅客が増えますし、夢洲IRやUSJの訪問客の一部でも取り込めれば、中之島線の状況は改善するでしょう。ただ、延伸費用を回収できるほどの利用者増が見込めるかは、疑問も残ります。
中之島線の終点の中之島駅には、なにわ筋線の接続計画があります。なにわ筋線の開業により、利用者が増える可能性もありますが、中之島駅近辺の利用者を奪われる可能性も少なくありません。
中之島線は大阪市などが出資する第三セクターが整備しています。2013年度に作られた中之島線整備事業の事後評価表を見てみると、開業前に1日123,000人の利用者を想定していながら、実績値は27,000人(2012年)にとどまりました。わずか2割程度です。
全国市民オンブズマン連絡会議が2014年にまとめたデータによると、京阪中之島線は、過去10年間に開業した公営・第三セクター鉄道のうち、もっとも事前予測と実際の利用者数の乖離が激しかったそうです。
延伸の前に総括を
中之島線整備事業の事後評価総括表では、「中之島線の輸送人員については、当初の計画に満たないものの徐々に定着が進んでいる」とし、開業後の実績値に基づいた需要予測として、2020年度に1日48,000人になると強気の見込みを示しています。しかし、現状の利用者数を見る限り、達成は困難でしょう。
事前予測値はもとより、事後評価表の予測値すら大きく下回る結果しか残せないのであれば、京阪中之島線は、事業として成功したとはとてもいえません。ならば、延伸を検討する前に必要なことは、「失敗の総括」ではないでしょうか。
中之島には1,300億円もの事業費が投じられ、そこには税金も含まれています。京阪電鉄が公金を使ってさらなる延伸を望むなら、「なぜ需要予測と実際の利用者数が、こんなにも異なっていたのか」をきちんと検証することが求められるでしょう。
鉄道事業は長期的な視野でみなければならず、短期的な利用者数だけで判断することは避けなければなりません。とはいえ、現状で想定の2割という利用者数は「長期的に見る」にしても少なすぎます。
巨額投資の失敗を挽回するために、さらに巨額の投資をすることは、傷口を広げることになりかねません。京阪が中之島線の延伸にこだわるなら、今度こそ間違いのない事業計画を練って欲しいところです。』
…という内容の記事なのですが、京阪にとってはちょっと耳の痛い話ですね。
ちなみに、タビリスにアップされたこの記事のメインタイトルは前述の通りですが、副題は『失敗の挽回のための投資は危うい』でした。なかなか辛辣ですね(笑)。
兎も角、中之島線の現況や今後については私もずっと気になっているので、これからも、引き続き中之島線を注目していこうと思います。
これを記念し、第二種鉄道事業者として中之島線で営業している「京阪電気鉄道」と第三種鉄道事業者として中之島線を所有している「中之島高速鉄道」の両社は、今日から明後日(21日)にかけて、クイズラリーや記念グッズ販売などの10周年記念イベントを開催します。
先月29日からは、3000系電車の全6編成が、下図の10周年記念ヘッドマークを掲出して運転しており、これは今月28日まで続けるとの事です。
中之島線については、私も今までこのブログで(同線が開業する前から)度々取り上げており、個人的にもずっと関心を持ってきただけに、「中之島線開業10周年」と聞くと、感慨深い思いを感じます。
3000系電車についても、本年7月13日の記事で述べたように私は同電車のNゲージ鉄道模型8両セットを購入するくらいですから、やはり高い関心を持っており、この電車がデビューから10年が経ったというのも、同じく感慨深いものがあります。
開業時は中之島線を象徴する列車種別であった、中之島線と京阪本線を直通する「快速急行」は、今はもうほとんど運転されていないなど、この10年間で中之島線や同線を取り巻く環境にはいろいろな変化が生じてきました。
当初はその「快速急行」でメインに運用されていた3000系電車も、今はほとんど京阪本線のみでの特急・快速特急などとして運用されており、デビュー時には無かった「洛楽」や京阪特急伝統の「鳩マーク」などのヘッドマークを掲げ、デビュー当時とは少し表情を変えて走っています。
そういったいくつもの変遷と、10年という年月を経て、京阪の主要な路線のひとつとして、京阪の代表的な車両のひとつとして、中之島線や3000系電車は、しっかりと沿線地元に根を下ろし定着しました。
中之島線には、同線の開業前から西九条までの延伸計画がありましたが、その後、本年8月11日の記事で詳述したように、中之島線を現在終点の中之島から九条まで路線を延伸させ、九条駅で地下鉄中央線に接続させる事で舞洲方面への最短アクセスを目指す、という新たな構想も発表されました。
また、中之島線を、九条駅を経由して西九条駅まで延伸させる、という更に新たな計画も、本年に入ってから京阪ホールディングスの加藤好文社長が明らかにしています。
つまり、当初の延伸計画は「①中之島~西九条」だったのですが、その後、延伸先を西九条から九条に変更し「②中之島~九条」とし、最近になって、延伸先をまた九条に戻したのです。
但し、この最新の延伸プラン「③中之島~九条~西九条」は、中之島から最短で西九条を目指していた①の案とは異なり、九条を経由するため、実質②の案も受け継いだものとなっているのが大きな特徴です。詳しくは、下の路線図を御参照下さい。
旅客流動が開業前の予想より大きく下回り、現在はどうしても低迷している感が拭えない中之島線ですが(特に、中之島線と近い時期に開業した、右肩上がりの「阪神なんば線」と比べると、その傾向は顕著ですが)、このように、これからの中之島線は大阪の都市開発と共に大きく変貌する可能性が高まってきている、と言えます。
しかし、こういった壮大な計画・構想に対しては、当然の事ながら、懐疑的な声も少なからずあります。
以下(二重カギ括弧内の紫文字)は、本年2月18日に、日本と世界を旅する人のための旅行情報サイト「旅行総合研究所タビリス」にアップされた、『京阪中之島線はどこへ行く。「西九条延伸」の前に過去の検証を』というタイトルの記事からの一部抜粋です。
『低迷する利用者数
壮大な計画とは裏腹に、京阪中之島線の利用は低迷しています。2016年度「大阪府統計年鑑」によりますと、京阪中之島線の各駅の1日の乗降客数は、中之島駅8,871人、渡辺橋10,025人、大江橋6,003人、なにわ橋2,539人。合計で27,438人となっています。
淀屋橋駅の107,326人はもとより、北浜駅35,437人に比べても、その少なさは明らかで、中之島線が京阪の経営の重荷になっていることが察せられます。実際、開業時に乗り入れていた快速急行はほぼ廃止となり、日中時間帯に普通列車しか走らない路線になってしまいました。
この状況を打開するために、京阪としては、中之島線を九条駅や西九条駅とつなぐことで盲腸線状態を解消し、観光地を結ぶ路線に発展させようとしているのでしょう。
想定の2割
九条駅や西九条駅まで伸びれば西方向の旅客が増えますし、夢洲IRやUSJの訪問客の一部でも取り込めれば、中之島線の状況は改善するでしょう。ただ、延伸費用を回収できるほどの利用者増が見込めるかは、疑問も残ります。
中之島線の終点の中之島駅には、なにわ筋線の接続計画があります。なにわ筋線の開業により、利用者が増える可能性もありますが、中之島駅近辺の利用者を奪われる可能性も少なくありません。
中之島線は大阪市などが出資する第三セクターが整備しています。2013年度に作られた中之島線整備事業の事後評価表を見てみると、開業前に1日123,000人の利用者を想定していながら、実績値は27,000人(2012年)にとどまりました。わずか2割程度です。
全国市民オンブズマン連絡会議が2014年にまとめたデータによると、京阪中之島線は、過去10年間に開業した公営・第三セクター鉄道のうち、もっとも事前予測と実際の利用者数の乖離が激しかったそうです。
延伸の前に総括を
中之島線整備事業の事後評価総括表では、「中之島線の輸送人員については、当初の計画に満たないものの徐々に定着が進んでいる」とし、開業後の実績値に基づいた需要予測として、2020年度に1日48,000人になると強気の見込みを示しています。しかし、現状の利用者数を見る限り、達成は困難でしょう。
事前予測値はもとより、事後評価表の予測値すら大きく下回る結果しか残せないのであれば、京阪中之島線は、事業として成功したとはとてもいえません。ならば、延伸を検討する前に必要なことは、「失敗の総括」ではないでしょうか。
中之島には1,300億円もの事業費が投じられ、そこには税金も含まれています。京阪電鉄が公金を使ってさらなる延伸を望むなら、「なぜ需要予測と実際の利用者数が、こんなにも異なっていたのか」をきちんと検証することが求められるでしょう。
鉄道事業は長期的な視野でみなければならず、短期的な利用者数だけで判断することは避けなければなりません。とはいえ、現状で想定の2割という利用者数は「長期的に見る」にしても少なすぎます。
巨額投資の失敗を挽回するために、さらに巨額の投資をすることは、傷口を広げることになりかねません。京阪が中之島線の延伸にこだわるなら、今度こそ間違いのない事業計画を練って欲しいところです。』
…という内容の記事なのですが、京阪にとってはちょっと耳の痛い話ですね。
ちなみに、タビリスにアップされたこの記事のメインタイトルは前述の通りですが、副題は『失敗の挽回のための投資は危うい』でした。なかなか辛辣ですね(笑)。
兎も角、中之島線の現況や今後については私もずっと気になっているので、これからも、引き続き中之島線を注目していこうと思います。