北海道人からみた関西圏の鉄道事情

関西圏の鉄道・その他についての諸々の雑感

阪神1000系

2008年05月30日 | 阪神




阪神電気鉄道では、自社(阪神)線、乗り入れをしている神戸高速鉄道線と山陽線、阪神なんば線開業と同時に新たに相互乗り入れを始める近鉄線の、計4社の路線に対応する新型車両として、平成18年に急行系車両の1000系を新造しました。平成20年現在、阪神電車の中では最新形式の車両です。
平成18年度中は基本の6両編成1本と、増結用2両2編成の計10両が製造されただけでしたが、来春の阪神なんば線開業までには計70両が製造される予定になっています。

今月上旬、私は大阪へ旅行に行った際に西大阪線を利用してきたのですが、その時この1000系電車に初めて乗車してきました。実際に見るのも乗るのも初めてでしたので、西九条駅のホームに1000系が入線してきた時は内心「おおっ!」と喜びの歓声を上げてしまいました(笑)。
平成18年に製造された1000系3編成のうち、基本の6両編成1本が阪神本線で使われ、増結用の2両2編成を連結した4両が西大阪線で、それぞれ使われているそうなのですが、その時は勝手に、最新型電車の1000系は全て本線でのみ運用されているのだろうと思い込んでいましたので、思いがけず西九条駅に1000系が入線してきた時は、良い意味で期待を裏切られ、特に嬉しく感じたのです(笑)。
上に貼付の2枚の写真が、乗車した西九条駅と、降車した尼崎駅のホームでそれぞれ撮ってきた1000系(2両2編成を連結した4両)です。

ただ、頻繁に1000系を利用して見慣れてしまえば、それは阪神電車以外の何者にも見えなくなるのでしょうが、まだ1000系を見慣れていない私にとっては、1000系は、正直言ってあまり阪神電車っぽくは見えませんでした。私の中では、阪神電車といえば“上下ツートンカラー”というイメージがとても強いので。まぁ、そういう意味では、実は9000系もあまり阪神電車っぽくは見えないのですが…。
それはともかく、今日は阪神電車最新形式の、その1000系電車について、簡単に説明をさせていただこうと思います。

ちなみに、以前の記事でも述べましたが、1000系は、平成17年に開業100周年を迎えた阪神が「次の新しい100年へのスタート」という節目に最初に開発した車両であることから、9300系の後継形式でありながら「10000系」は名乗らず、9300系まで重ねてきた車系番号を「1」から再スタートするという意味を込めて1000系と命名されました。

【製造から営業運転までの経緯】

1000系は平成18年秋、近畿車輛によって、前述のようにまず10両が初めて製造され、同年度中は夜間を中心に阪神本線上で試運転が行われました。
しかし、安全性確認の問題等から、翌年度になっても1000系の試運転は前年度以上には活発に行われず、たまに試運転で運用される程度で、平成19年の上半期、日中の大半を1000系は全10両が揃った状態で尼崎駅の留置線に留置されていたそうです。

本格的な試運転が始まったのは同年6月からで、同4日から1000系は日中でも阪神本線上で試運転されるようになり、9月までには神戸高速鉄道の東西線や、山陽電鉄の本線でも試運転が行われるようになり、9月13日には報道陣向け試乗会、同17日には一般向け試乗会も実施されました。
そして、同26日には武庫川線でも試運転が行われ、同年(昨年)10月5日から、阪神本線と西大阪線、乗り入れ路線である神戸高速鉄道の東西線、山陽電鉄本線で営業運転を開始しました。

運行初日は阪神梅田駅で記念式典(出発式)が開催され、大勢のお客さんや鉄道ファンらが同駅ホームで待ち構える中、午前9時50分、1000系が入線し、集まった大勢の人達が新車の門出をお祝いしたそうです(乗務員への花束進呈やくす玉割りなどが行われた後、午前10時20分に須磨浦公園駅行き特急として出発しました)。

なお、1000系の基本編成は現在の急行系車両と同じ6両編成で、ラッシュ時に対応するため増結用の2両編成が導入され、これにより、2両編成2編成を増結することで最大10両編成となります。

【車体の特徴】

1000系は、従来のスポット溶接(2枚の母材を圧着しつつ電流を流し、その抵抗熱で金属を溶かして接合する接合法)に比べて、車体の溶接跡が目立たず仕上がりが美しいステンレス製レーザー溶接構体を採用しています。
ボディーカラーは、現在の急行系車両のベーシックカラーであるオレンジを引き継ぎつつも9300系や8000系リニューアル車とは色調の違う「オレンジ系の新色」(ヴィヴァーチェオレンジ)を車体前面と側面のドアに配しています。

車体正面には、阪神電車で初のLED(発光ダイオード)の行先表示器を採用し、種別はフルカラーLED、行先は白色LEDで、従来のロール幕式と同等の視認性を確保しています。
また、車体側面には行先・列車種別一体の表示器を採用し、列車種別表示部分はフルカラーLED、行先表示部分は白色LEDとし、列車種別・行先を見やすく表示しています。

近鉄との相互乗り入れのため、阪神の新造車としては初めて、阪神伝統のバンドン型連結器ではない、一般的な廻り子式密着連結器(近鉄電車と同形式)を採用し、更に増結に対応するために、阪神では初めての電気連結器が採用されています。
なお、パンタグラフも阪神電車では初のシングルアーム形が採用されています。
列車無線、ATS装置、列車種別選別装置などの保安装置についても、阪神線・山陽線用のATSと列車無線に加え、近鉄線用のATSと列車無線を搭載しています。

その他の装置としては、純電気ブレーキ機能付SIV一体型三菱電機製VVVFインバータ制御装置や、ボルスタレス台車、省エネ性を有する機器などを採用しています。
ちなみに、1000系の最高速度は20km/h(当面は110km/h)、運転最高速度は106km/hです。

【サービス】

1000系の客室座席は全車ロングシートで、バケットタイプのシート(着席位置の明確化のため、左右の縁を極端に高めて尻や肩が深く包むことで体の固定機能を高めた形状のシート)を採用しています。
また、全車両に非常通話装置が設置され、車いすスペースについては車いす利用の乗客にも扱いやすい高さとなっています。
但し、関西の私鉄で昔から高級な雰囲気を醸すアイテムであった客室天井蛍光灯のグローブ(カバー)は、1000系では採用されませんでした。

床面の高さは、阪神の最近の車両と同じ1130mmとし、阪神の車両の中で最低床とすることで、ホームとの段差を小さくしバリアフリーに配慮しています。
また、車内案内表示装置、扉開閉予告ブザーを設置している他、扉開閉予告灯を新たに設置し、車いすスペースは全車両に設けられています。