花耀亭日記

何でもありの気まぐれ日記

ジャック・ル・ゴフ「中世とは何か」を読んだ。

2023-02-12 21:23:16 | 読書

今年のお正月は、O先生の講座で紹介されたジャック・ル・ゴフ「中世とは何か」を読んだ。

ジャック・ル・ゴフ(Jacques Le Goff, 1924 - 2014年)は、現代フランスを代表するアナール学派の中世史家である。

この「中世とは何か」はル・ゴフが質問に答えるという形で編集されているので、論文調ではなく、初心者の私にも非常にわかりやすく読むことができた。内容は多岐にわたるが、ちょうど本のカヴァーに要領よくまとめられているので、写真を撮っちゃった、へへ、ご参考まで

以前、このブログでも書いたのだが、西洋の中世は「476年(西ローマ帝国の滅亡)~1492年(コロンブスの新大陸発見)」とされている。

https://blog.goo.ne.jp/kal1123/e/b46ebc320f91137015fc4d99c61ce243

まず、西洋史の時代区分についての話は確かに笑えるのだけどね。明日から中世が終わって近世ですよなんて、当時生きていた人たちには認識できっこないもの。

ちなみに、日本でも日本なりの「中世」という概念はあるように思えるのだけど、どうなのだろう?? 大学時代(日本史専攻ではない)、黒田俊雄の中世領主制説とか、永原慶二とか網野善彦とか勉強した記憶があるのだよね(内容は忘却の彼方)。

「西洋の組織化は、敵として認識される世界と対立する自らの存在を自覚し、一つのキリスト教世界、いやキリスト教世界そのものであろうと欲することによって、はじめて可能となった。」

ああ、これは「百年戦争」が、当時未分化だったフランスとイギリスが、戦争の結果としてフランスとイギリスという「国家」が生まれたのと同じだなぁと了解できる。

ちなみに、私的におーっ!と目から鱗だったのは...例えば...

■「すべてが宗教だった中世に宗教という言葉はなかった。16世紀の宗教という概念の誕生は、本当の断絶を示す。」

「宗教」という言葉が言語化されたということは、「宗教」の客体化であり、中世キリスト教社会との決別だということなのだと了解できた。

■「ヘーゲルの『歴史の終わり』も、マルクスの『最終戦争』も、おそらく中世人にとってとっぴな考えではなかった。」

いや、本当になるほどね!と笑っちゃえるところが凄い。ヘーゲルもマルクスも読んでないけど(汗)、彼らの頭の中には、きっと中世人のDNAが刻まれていたのだろうなぁと想像できたのだ。

ということで、この「中世とは何か」があまりにも面白かったもので、積ん読状態だったアンリ・ピレンヌ「ヨーロッパ世界の誕生-マホメットとシャルルマーニュ」を読み始めてしまったのだよ。

私の知りたかったローマ帝国の崩壊後の世界が詳細に描かれていて非常に興味深いのだが(塩野七海さんの著書では物足りなかった)、しかし、「中世とは何か」ほど読みやすくはなく、少しずつしか読み進めない自分の読解力(&知識)の無さが残念である。ということで、現在進行形で読み続けているところだ。

ちなみに、ピレンヌの「ベルギー史」が本当に読みたいのだわ!! どなかた専門家の先生が翻訳して出版してくれないかなぁ。お願いいたします!!



最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
ローマ帝国の崩壊 (山科)
2023-02-14 08:17:17
中世のバックにある
ローマ帝国の崩壊と初期キリスト教については、

古代の没落と美術―ミイラ肖像画とその時代 (1973年) (美術選書)

は、今でもお薦めです。ナグ・ハマディ写本などの新発見は当然入っていないんですが、それでも日本人という異教徒の視点からみた卓論だと思います。
山科さん (花耀亭)
2023-02-15 01:04:45
>古代の没落と美術―ミイラ肖像画とその時代 (1973年) (美術選書)

以前、山科さんのコメントご紹介で知り、図書館から借りて、ミイラ肖像画の写真中心に眺めておりました(;'∀')。今度は文章の方もしっかり読んでみたいと思います(汗)。

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。