朝早くは、北西の風がやや強く、吹いていた。
木下さん、本山さんと、ポイントへ急ぐ。
ベイト反応は、まずまずの感じで出ている。
「海底から、10メートルの範囲に出ています」
北西の風に押されながら、1ノット前後で北東に流れていく。
風が強い分、船の流れも速く感じる。
潮の色は、青味が濃くて「群青色」に近い。
ポイントから少し離れたところで、木下さんにアタリが来た。

良い感じで、竿が弧を描いている。
「引きは良いですか」
「重い感じがしますね」

上がってきたのは、イトヨリダイ。
針が、腹部に掛かっていた。
最初の釣果が上がると、ホッとした気持ちになる。
二流し目に、再び木下さんにアタリが来た。

ドラグ音が鳴って、ラインが引き出される。
「良い引きしていますね。ゆっくり、楽しんでくださいね」
「慎重に、ゆっくり行きますよ」
少しずつ、ラインを巻き上げていく。
やがて、海中に獲物の姿か見え始めた。
「真鯛では無いような、白っぽい魚体に見えますね」
後少しで、姿がハッキリするとまで上がってきたが…。
「あっ、外れた…」
魚が踵を返して、海中深く帰っていくのが見える。
「えー、後少しだったの…」
逃げていく獲物を見送るのは、辛いものがある。
逃げられた事は、仕方がない。
ここは、気持ちを切り替える。
ポイントを、移動する。
本山さんが、アジゴを使って仕掛けを落としていく。
直ぐにアタリが来た。

竿先が、大きく舞い込んだ。
アワセが入ったが、強い引きが感じられない。
上がってきたのは、大きなエソだった。
「残念」
エソの姿に、船内に笑い声が広がる。
「大笑いやね」
本山さんの表情は、心から釣りを楽しむ釣り人の姿。
その本山さんに、強烈なアタリが来た。

竿先が、海面に突き刺さる様に、曲がっている。
「青物ですよ。来ましたね」
「リールが巻けない」
木下さんも、本山さんの傍らで応援しているが…。
竿先が、元に戻った。
針が外れていた。
「仕方ない、力が足りなかった」
本山さんの気持ち切り替えは、潔い。
今度は、木下さんにアタリが来た。

竿先を叩くアタリ。
「多分、真鯛ですね」
「今度は、慎重に行くよ」
獲物の姿が、見えてきた。

1キロ超の綺麗な真鯛。
「嬉しいですね」
木下さんの笑顔が、輝いている。
傍で、本山さんも祝福している。
この頃になると、風の向きが変わってきた。
天気予報では、北西が強く成るはずだが、南東の風が吹き始めた。
風の予報では、風力が7になっている。
「引き上げましょう」
本山さんの声掛けで、昼過ぎに納竿とした。
2時前に船着き場に帰ると、夕方狙いの横山さんが待ってた。
「風が南東になって、波が立ち始めています」
「釣りが出来ないかも知れません」
そんな話をしながら、木下さん、本山さんにお礼を伝えて、夕方狙いで出てみた。
やはり、南東の風が波立っている。
少し沖に出てみると「ベイト反応がある」と、竿を出してみる。
アタリが来た。

「何か、当たってきました」
横山に嬉しいアタリが来た。

オオモンハタが、上がってきた。
オオモンハタの写真を撮っている間に、風が真西に変わり強く吹き始めた。
白波も立ち始めた。
「もう一回、流すよ」
すると、またもアタリが来た。

竿先を叩く真鯛のアタリだ。

1キロ超の、真鯛が上がってきた。
1時間も竿を出していないが、オオモンハタと真鯛がヒット。
「予想していなかっただけに、嬉しいですね」
西風は強くなってきたが、嬉しい釣果に、笑顔で帰港した。