遊心逍遙記

読書三昧は楽しいひととき。遊心と知的好奇心で本とネットを逍遥した読後印象記です。一書がさらに関心の波紋を広げていきます。

『昆虫戯画 びっくり雑学事典』 丸山宗利 文・じゅえき太郎 漫画  大泉書店

2021-02-09 10:21:02 | レビュー
 表紙の「戯画」という言葉に目が止まり、即座に「鳥獣戯画」を連想した。勿論、手に取りペラペラと内容を覗いてみる。
 ほぼ全ページにカラーで昆虫の漫画が描き込まれている。その昆虫の姿態がおもしろく、昆虫の顔が人間の顔風にアレンジされた漫画である。昆虫が人間っぽく立ったり寝そべったりしているのが多い。まさに「鳥獣戯画」にリンクする「戯画」としての描き方であり、本文の説明とコラボする形でおもしろい描写になっている。全体の印象としては、やわらかタッチの戯画である。昆虫たちにしゃべらせているのもおもしろい。
 「人間とはいろいろちがうぜ!」「人間ってやわだね・・・・」 p22,23
 「フタ係~~! あけてー!」「はいよー! ちょいまちー!!」 p31
 「ここはオレにまかせて先に行け・・・」「まさかあいつ・・・! 自爆する気か!?」p36
 「なにかを得るためには なにかを失うのだよ・・・・」 p40
 「僕はもうだめだ・・・・・」「こいつウソだな・・・・」 p49
 「人間さん すみませーん おなかへりましたー」 p50
 「アワワワワ だれか!浮き輪かして下さーい!!」 p56
 「あそびにいこーぜ!」「オレ今卵の面倒みてるからパス!!」 p68
 「話しあおう!ハリは使いたくないんだ!!」「?」 p78
 「まあそんなおいしいもんではないかな・・・・」 p90
 「よし、下はぬげた あとは上だ フフフ・・・・」 p94-95
 「様々な糸を使いこなす これが一流の技!!」 p114-115
 「この家ともおわかれか・・・・・」 p122
 「た~まや~!」「あの・・・・見せもんじゃないんだけど・・・・」 p154
 「あの・・・・ よかったら・・・・ これ・・・・」 p160
こんな会話が戯画に添えられている。昆虫たちがしゃべっているのだ。勿論この会話は丸山の取り上げた昆虫の生態や行動などの特徴の説明に関連している。ここに抜き出した会話をしている昆虫を順番に列挙しておこう。昆虫の世界に無知な私には初めて見る名前が沢山あった。ほとんどと言ってもよいかもしれない。
 一番最初の会話は「昆虫ってどんな生き物?」という総論部分なので、複数の昆虫と人が描かれているのでスキップ! 会話の2行目からは個別の昆虫になる。つまり、
ヒラズオオアリ、バクダンオオアリ、カタゾウムシ、ヒメカマキリ、カイコ、アメンボ、コオイムシ、ミツバチ、アマガエル、オカダンゴムシ、クモ、アシダカグモ、ウラギンシジミ、ヤマトシリアゲ、である。

 表紙に「えっ!とおどろき、クスッと笑える」とキャッチフレーズが記されている。そのとおり、昆虫に関しての「びっくり雑学」を戯画とわかりやすい文で説明している。漢字にはすべてルビが振られているので、ひらがなが読めれば年齢を問わずに戯画を楽しみながら、おもしろく昆虫についてのびっくりネタ話を学ぶことができる。

 著者によると、全動物種の7割以上を昆虫が占め、確認されているだけでも約100万種。日本だけで約3万種が確認されているという。「実際に存在する種数は300万~500万種とも推定されています」(p18)とのこと。熱帯雨林地域をはじめ世界各地の自然環境の破壊により生きる場所をなくした昆虫の「絶滅」が進む一方で、毎年3000種ほどの新種が地球のどこかで発見されているそうだ。(p167)
 
 本書の構成をご紹介しておこう。おどろきとクスッとした笑いに結びつく章立てになっている。各行末尾の括弧内の数字は、該当章に取り上げられた昆虫の数をカウントして付記した。一昆虫を複数の項目で説明しているのもある。それは1とカウントしている。
 序 章 昆虫ってなに?
 第1章 人気虫・強い虫のトホホな一面  (24)
 第2章 そこらの虫のおどろきの一面   (18)
 第3章 嫌われ虫の意外な一面      (19)
 第4章 身近にいるのに知られざる虫   (23)

最後に、「おどろき」「びっくり」への誘いとして、昆虫紹介の見出し文をサンプリングしてご紹介しておこう。この本、あなたにとって楽しみながら昆虫ワールドに深入りするきっかけになる本かもしれない。

「トホホ」
*クロヤマアリは、奴隷にされたのに、やけに聞き分けが良い
*幼虫のときにたくさん食べないと、ちびカブトムシになる
*チョウは、見かけによらずオシッコが好き
*アリジゴクは、後にしか進まない
*朝のトカゲは、日向ぼっこしないと動けない

「おどろき」
*ゲンゴロウは空気ボンベをもっている
*カワトンボのオスは、産卵に付きそう妻想い?!
*カタツムリは、コンクリートも食べている
*カエルは、食事のときに目をつむる
*世の中には、まっ青なミミズも存在する

「意外」
*エサキモンキツノカメムシの背中には愛の印がある
*ナメクジはカタツムリの進化した姿?!
*子グモは、雲より高く飛ぶことができる
*サソリのオスは、交尾の前に紳士的にダンスする
*ムカデは、飲まず食わずで子育てする

「知られざる」
*タイワンシロアリは、農業する
*シロスジヒゲナガハナバチは、植物に咬みついて眠る
*シロオビアワフキの幼虫は、おしっこの泡にかくれる
*ゴマダラチョウの幼虫は、顔がウサギみたい
*光るミミズが存在する。その名もホタルミミズ

 どうです? ちょっと面白そう・・・・・でしょう。おもしろいですよ。
 48ページの戯画は、本書の裏表紙に使われている。「じつは、カマキリはゴキブリに近い仲間」なんだとか。カマキリとゴキブリが立って肩を組み、「あはははははは」「あはははははは」と笑っている戯画なんです。ゴキブリとカマキリが「かなり近い親戚」なんだってことを初めて知った次第。著者はここでのカマキリの説明の最後に次の一文を記している。
「見た目だけで人を判断してはいけないように、物事の本質はもっと深いところにあるものです」と。

 昆虫ワールドへ、気軽に近づき楽しめる本である。昆虫戯画の顔が実にイイ!

 ご一読ありがとうございます。
 
本書を読み、インターネットで昆虫ワールドにどの程度アクセスできるものか、少し検索してみた。「えっ!とおどろき、クスッと笑える」こととは距離があるかもしれないが、昆虫情報に触れるのには有益なサイトと思ったものを調べた範囲で一覧にしておきたい
ものすごい図鑑  NHK for School
進化する昆虫図鑑  岐阜大学教育学部理科教育講座(地学)
昆虫エクスプローラ  ホームページ
なかまからさがす-昆虫  トップページ :「YAHOO!きっず」
スマホ撮影するだけで名前を自動判定「いきもの図鑑」が話題…国内約6万6000種の“コンプ”は可能?  :「FNNプライムオンライン」

    インターネットに有益な情報を掲載してくださった皆様に感謝します。

(情報提供サイトへのリンクのアクセスがネット事情でいつか途切れるかもしれません。
その節には、直接に検索してアクセスしてみてください。掲載時点の後のフォローは致しません。
その点、ご寛恕ください。)


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