エンマ様(楯岡絵麻)シリーズ文庫本としては4冊目の作品集である。今回も4つの短編が収録されている。
「第一話 目の上のあいつ」「第二話 ご近所さんにご用心」「第三話 敵の敵は敵」「第四話 私の愛したサイコパス」の4つである。
ただし、第二話、第三話において楯岡絵麻のとる行動の一局面が伏線となり、それが累積されて第四話への導入になっていく。一方で、この4つの話は全く独立した事件を扱っているという次第。
最初の3つの事件は主に、エンマ様が行動心理学を駆使して、聞き取り捜査あるいは取調室で被疑者を取り調べて、犯人を解明するに至るというものだが、第4話は取調室を離れ、敵方のアジトに潜入するという展開になる。
この小説の醍醐味は、やはり行動心理学の理論やテクニックが散りばめられ、活用されていくプロセスの描写と補足説明、絵解きにある。
< 第一話 目の上のあいつ >
現場を見ればほぼまちがいなく一目瞭然で、十中八九、覚せい剤の濫用による事故死と思える事件が発生した。レコーディングスタジオで、ミュージシャンのキョージこと吉田恭司が遺体で発見された。彼には薬物関連の前科があった。活動自粛期間を経て、音楽活動を宣言し、復帰作の新曲レコーディングを行っている過程での死だった。
現場に先着していた筒井刑事は、現場を見分して事件性はないと判断する。エンマ様は誰がスタジオの鍵を持っていたかが未確認だと聞き、翌日聞き込み捜査をキョージのマネジャーから開始する。二人目はキョージの妻・吉田和美。和美からは「キョージに曲を盗まれた」と言うキョージの元バンドメンバーである松崎真也に聞き込み捜査をする。
事件性なしか・・・と思いかけたエンマ様は、現場百編の筒井刑事が入手したブツと情報から、一挙に犯人の特定に急展開していく。聞き込み捜査の過程に、うまく伏線が張られ、急転換していくところがおもしろい。
この第一話に、本書のタイトルとなった「サッド・フィッシュ」の由来が語られる。
サッド・フィッシュとは、SADFISHで、人間が生まれながらにして持つ基本的な7つの感情を意味するとか。これらの7つの感情は、よほど訓練を積んだ人間でない限り、封じ込めるのは不可能だという。Sadness, Anger, Disgust, Fear, Interest, Surprise,Happiness という基本的感情である。聞き込み捜査でエンマ様は相手の感情の動きを見極める。
この短編では、ウィリアム・シェルドンの体格類型論(内胚葉型・外胚葉型)、すでにおなじみの、なだめ行動、マスキング、動物の行動の三段階(Freeze,Flight, Fight)などが散りばめられる。そしてキーワードは、境界性人格障害である。これらがどのように織り込まれていくかが興味深いところである。
< 第二話 ご近所さんにご用心 >
この短編、冒頭が第四話への伏線になっている。映画館で楯岡絵麻が公安部に所属する男と会話している。その男はどうも過去に絵麻との男女関係があった人物のようである。通称28歳のエンマ様の過去の一端がこの第4作で垣間見えるのが、まずどうなるのか・・・と関心をよぶ。
さてこの話は、台東区東上野の住宅街にある一戸建てで、一人暮らしの72歳、稲村喜代美が遺体で発見されたという事件。第一発見者は、被害者の利用する食材の宅配業者である。
地取りの捜査員が聞き込みをしていたおり、聞き込み相手が犯行を告白したことで、被疑者となる。野良猫の餌付けに対する注意が口論、揉み合い、転倒に発展し、被害者死亡に至ったという。
エンマ様が西野と被疑者を取調室で調べることになる。勿論、絵麻は西野とともに、現場を見分している。被疑者成田孝行は、稲村宅の裏隣りとなる住人であり、亡くなった妻の連れ子であった睦美の面倒をみて生活している。ご近所では評判のいい男だった。陸美は12歳、生まれつき重度の脳性麻痺で、知的障害があり、身体不自由児として車椅子生活を送る少女だったのだ。その面倒をよくみていると評判がよかったのである。
成田の供述を鵜呑みにすれば事故ともみえる状況のものだった。本当に殺意がなかったのか。殺人罪を適用する余地はないか・・・・その可能性を探る取調べが絵麻の任務となる。絵麻は持ち前の行動心理学の理論・スキルを駆使して、成田の供述を再確認しつつ、そこに欺瞞が潜んでいないか取調べを進めて行く。
ここでは、上記シェルドンの類型論における中胚葉型が登場する。そして、サンプリング、パーソナルスペース侵入、マスキング、なだめ行動、ミラーリングなど、おなじみのプロセスが深まっていく。、
亡くなった妻に触れられると素っ気なく語ろうとしなくなるが、睦美のことにはすごく饒舌になる成田の行動に、エンマ様は疑念を感じ始める。被害者の日頃の行動情報が集まってくるとともに、成田及び野良猫との関係が思わぬ様相を見せ始める。
筒井刑事の心情と行動が書き込まれていくところがおもしろい。
そしてプロローグは、再び第四話への絵麻の伏線的な行動で締めくくられる。勿論、第四話に確実に結びついているのは、読了したからこそ書けることである。ただ、この小説の後話で著者が落とし所を押さえていて、ここに伏線を張っていることまでは間違いなく読み取れる。
< 第三話 敵の敵も敵 >
この短編もまた、取調室でのストーリー展開である。取調べにあたるのは勿論、楯岡絵麻、エンマ様である。
被疑者は高橋明日菜。被害者は野々村莉子で、同じ中学校に通っていた幼馴染み。板橋区髙島平にある公園の一角で、早朝に犬の散歩をしていた近所の老人が遺体を発見した。遺体には酷い暴行の痕跡があり、全身痣だらけで、直接の死因は頭部を鈍器のようなもので殴られたことによる脳挫傷らしいという。捜査本部が設置され、被疑者として任意同行のための証拠固めを始めた矢先に、本人が出頭してきた。
暴行に加わっていた仲間がほかに3人いる。三木龍也、吉村大輔、相原文乃である。明日菜の出頭と供述から、この3人の身柄確保が行われ、それぞれの取調べも進む。その中で、事実関係の微妙な食いちがいが発見されていく。仲間うちでの「裏切り者」が誰か、が一つのキーワードになっていく。捜査過程で、事件の周辺の関係者も明らかになっていく。最近はLINEでも悪口の書き込みから物議を醸した事件がいくつも報じられている。LINEでの悪口書き込みという話材、フレミーという造語がこの短編にうまく取り入れられている。時代性の取り入れが巧みである。
供述の齟齬から意外な方向へとエンマ様の推測が働いていく。
この短編では、髪形や服装への心理投影が具体的に分析されていておもしろい。この本の第一話、第二話に登場しない心理学用語としては、ミルグラム実験と心理実験で実証された「埋め込み法」がある。簡潔にわかりやすい説明が加えられているので、すんなりと読み進められ、一方、それがストーリーの強化に役立っている。
犯人の解明ができると、絵麻は取調べの詰めを西野に任せて、大事な用事があるといって出かけて行く。
エピローグは、再び絵麻の次なる行動、つまり第四話への伏線となる。この第三話の締め括りで、公安部所属の男の名前が明かされる。お楽しみに!
< 第四話 私の愛したサイコパス >
「私の」というのは勿論、楯岡絵麻のこと。愛した相手は伏線に出て来た公安部所属の男である。絵麻の分析では、その男はサイコパスだという。
この短編は、昔愛した公安の男に頼まれて、彼の取り組んでいる事案に絵麻が関わって行くという話である。男は、ある組織に樋渡初美を公安のエスとして送り込んだ。だが、その樋渡初美との連絡が途絶えたという。そこで男は、心理分析のプロである絵麻に協力を依頼するのだ。絵麻はかつての恋人がサイコパスであると知りつつ、協力することになる。男の狙いは、勿論その組織を潰すこと。行動心理分析に自信のある絵麻は、エスとして潜入した樋渡初美の安否確認を第一において、潜入捜査に協力する。
この組織は何か? その設定それ自体が、現在の世界の状況を取り込んでいて、リアル感を抱かせるものである。設定された組織には触れずにおく。本書を開くのを楽しみしていただきたい。
絵麻は行動心理分析に優れている故に、逆にそれが災いしないように、精神安定剤を服用し、大脳辺縁系の反応を鈍らせて、己に生ずるなだめ行動を抑制するという形で、組織の窓口となっている女性に接触していく。
この話、直近のエンマ様の不可解な行動に対してあらぬ推測と疑惑を抱いた筒井・綿貫両刑事が密かに尾行することから、彼らが巻き込まれていく。そして、公安の男の描いたシナリオが崩される羽目に・・・。
絵麻の行動がそれによりどうなるか。おもしろい展開が組み込まれている。
洗脳という側面で、最新の大脳医学もストーリーに組み込まれていて興味深い。この辺りがどこまで事実であり、現実的な効果、結果をもたらすのかについては情報を持たないのでわからない。そうなのか・・・にとどまる。しかしそれが事実なら恐ろしいことである。
ネタばれは回避しておこう。筒井刑事、絵麻より大先輩だが、脇役としておもしろい。
このシリーズ第4作もまた、行動心理学の知識を学びながら、面白く読むことができた。行動心理学に関心を抱く人には、オススメである。フィクションではあるが、心理学理論、用語のケーススタディ的なシーンを織り込んで仕立てたストーリーなのだから。
一方、心理学なんて・・・と思う人には、逆に心理学に興味をもつトリガーになるかもしれない。このストーリーで描かれる行動の断片シーンは、日常の我々の行動自体に応用できるものなのだから。
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この作品に出てくる事項で関心を引いたものをネット検索してみた。一覧にしておきたい。
【パーソナルスペースとは?】恋愛や人間関係にも影響する距離って?!男女や性格による違いや特徴を知って上手に活用しよう! :「WELQ」
パーソナルスペース :ウィキペディア
ウィリアム・シェルドン :「コトバンク」
体型で性格が分かる―3つの特徴 :「W.マイナビ ウーマン」
スタンレー・ミルグラムの服従実験 :「Es Discovery Logs」
スキーマ :「心理学用語集 Psychological Term」
サブリミナル効果 :ウィキペディア
精神病質 :ウィキペディア
サイコバスとは何か?
サイコパスには犯罪者だけでなく成功者もいる:「Newsweek ニュースウィーク日本版」
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こちらもお読みいただけると、うれしいかぎりです。
『インサイド・フェイス 行動心理捜査官・楯岡絵麻』 宝島社
『ブラック・コール 行動心理捜査官・楯岡絵麻』 宝島社
『サイレント・ヴォイス 行動心理捜査官・楯岡絵麻』 宝島社
「第一話 目の上のあいつ」「第二話 ご近所さんにご用心」「第三話 敵の敵は敵」「第四話 私の愛したサイコパス」の4つである。
ただし、第二話、第三話において楯岡絵麻のとる行動の一局面が伏線となり、それが累積されて第四話への導入になっていく。一方で、この4つの話は全く独立した事件を扱っているという次第。
最初の3つの事件は主に、エンマ様が行動心理学を駆使して、聞き取り捜査あるいは取調室で被疑者を取り調べて、犯人を解明するに至るというものだが、第4話は取調室を離れ、敵方のアジトに潜入するという展開になる。
この小説の醍醐味は、やはり行動心理学の理論やテクニックが散りばめられ、活用されていくプロセスの描写と補足説明、絵解きにある。
< 第一話 目の上のあいつ >
現場を見ればほぼまちがいなく一目瞭然で、十中八九、覚せい剤の濫用による事故死と思える事件が発生した。レコーディングスタジオで、ミュージシャンのキョージこと吉田恭司が遺体で発見された。彼には薬物関連の前科があった。活動自粛期間を経て、音楽活動を宣言し、復帰作の新曲レコーディングを行っている過程での死だった。
現場に先着していた筒井刑事は、現場を見分して事件性はないと判断する。エンマ様は誰がスタジオの鍵を持っていたかが未確認だと聞き、翌日聞き込み捜査をキョージのマネジャーから開始する。二人目はキョージの妻・吉田和美。和美からは「キョージに曲を盗まれた」と言うキョージの元バンドメンバーである松崎真也に聞き込み捜査をする。
事件性なしか・・・と思いかけたエンマ様は、現場百編の筒井刑事が入手したブツと情報から、一挙に犯人の特定に急展開していく。聞き込み捜査の過程に、うまく伏線が張られ、急転換していくところがおもしろい。
この第一話に、本書のタイトルとなった「サッド・フィッシュ」の由来が語られる。
サッド・フィッシュとは、SADFISHで、人間が生まれながらにして持つ基本的な7つの感情を意味するとか。これらの7つの感情は、よほど訓練を積んだ人間でない限り、封じ込めるのは不可能だという。Sadness, Anger, Disgust, Fear, Interest, Surprise,Happiness という基本的感情である。聞き込み捜査でエンマ様は相手の感情の動きを見極める。
この短編では、ウィリアム・シェルドンの体格類型論(内胚葉型・外胚葉型)、すでにおなじみの、なだめ行動、マスキング、動物の行動の三段階(Freeze,Flight, Fight)などが散りばめられる。そしてキーワードは、境界性人格障害である。これらがどのように織り込まれていくかが興味深いところである。
< 第二話 ご近所さんにご用心 >
この短編、冒頭が第四話への伏線になっている。映画館で楯岡絵麻が公安部に所属する男と会話している。その男はどうも過去に絵麻との男女関係があった人物のようである。通称28歳のエンマ様の過去の一端がこの第4作で垣間見えるのが、まずどうなるのか・・・と関心をよぶ。
さてこの話は、台東区東上野の住宅街にある一戸建てで、一人暮らしの72歳、稲村喜代美が遺体で発見されたという事件。第一発見者は、被害者の利用する食材の宅配業者である。
地取りの捜査員が聞き込みをしていたおり、聞き込み相手が犯行を告白したことで、被疑者となる。野良猫の餌付けに対する注意が口論、揉み合い、転倒に発展し、被害者死亡に至ったという。
エンマ様が西野と被疑者を取調室で調べることになる。勿論、絵麻は西野とともに、現場を見分している。被疑者成田孝行は、稲村宅の裏隣りとなる住人であり、亡くなった妻の連れ子であった睦美の面倒をみて生活している。ご近所では評判のいい男だった。陸美は12歳、生まれつき重度の脳性麻痺で、知的障害があり、身体不自由児として車椅子生活を送る少女だったのだ。その面倒をよくみていると評判がよかったのである。
成田の供述を鵜呑みにすれば事故ともみえる状況のものだった。本当に殺意がなかったのか。殺人罪を適用する余地はないか・・・・その可能性を探る取調べが絵麻の任務となる。絵麻は持ち前の行動心理学の理論・スキルを駆使して、成田の供述を再確認しつつ、そこに欺瞞が潜んでいないか取調べを進めて行く。
ここでは、上記シェルドンの類型論における中胚葉型が登場する。そして、サンプリング、パーソナルスペース侵入、マスキング、なだめ行動、ミラーリングなど、おなじみのプロセスが深まっていく。、
亡くなった妻に触れられると素っ気なく語ろうとしなくなるが、睦美のことにはすごく饒舌になる成田の行動に、エンマ様は疑念を感じ始める。被害者の日頃の行動情報が集まってくるとともに、成田及び野良猫との関係が思わぬ様相を見せ始める。
筒井刑事の心情と行動が書き込まれていくところがおもしろい。
そしてプロローグは、再び第四話への絵麻の伏線的な行動で締めくくられる。勿論、第四話に確実に結びついているのは、読了したからこそ書けることである。ただ、この小説の後話で著者が落とし所を押さえていて、ここに伏線を張っていることまでは間違いなく読み取れる。
< 第三話 敵の敵も敵 >
この短編もまた、取調室でのストーリー展開である。取調べにあたるのは勿論、楯岡絵麻、エンマ様である。
被疑者は高橋明日菜。被害者は野々村莉子で、同じ中学校に通っていた幼馴染み。板橋区髙島平にある公園の一角で、早朝に犬の散歩をしていた近所の老人が遺体を発見した。遺体には酷い暴行の痕跡があり、全身痣だらけで、直接の死因は頭部を鈍器のようなもので殴られたことによる脳挫傷らしいという。捜査本部が設置され、被疑者として任意同行のための証拠固めを始めた矢先に、本人が出頭してきた。
暴行に加わっていた仲間がほかに3人いる。三木龍也、吉村大輔、相原文乃である。明日菜の出頭と供述から、この3人の身柄確保が行われ、それぞれの取調べも進む。その中で、事実関係の微妙な食いちがいが発見されていく。仲間うちでの「裏切り者」が誰か、が一つのキーワードになっていく。捜査過程で、事件の周辺の関係者も明らかになっていく。最近はLINEでも悪口の書き込みから物議を醸した事件がいくつも報じられている。LINEでの悪口書き込みという話材、フレミーという造語がこの短編にうまく取り入れられている。時代性の取り入れが巧みである。
供述の齟齬から意外な方向へとエンマ様の推測が働いていく。
この短編では、髪形や服装への心理投影が具体的に分析されていておもしろい。この本の第一話、第二話に登場しない心理学用語としては、ミルグラム実験と心理実験で実証された「埋め込み法」がある。簡潔にわかりやすい説明が加えられているので、すんなりと読み進められ、一方、それがストーリーの強化に役立っている。
犯人の解明ができると、絵麻は取調べの詰めを西野に任せて、大事な用事があるといって出かけて行く。
エピローグは、再び絵麻の次なる行動、つまり第四話への伏線となる。この第三話の締め括りで、公安部所属の男の名前が明かされる。お楽しみに!
< 第四話 私の愛したサイコパス >
「私の」というのは勿論、楯岡絵麻のこと。愛した相手は伏線に出て来た公安部所属の男である。絵麻の分析では、その男はサイコパスだという。
この短編は、昔愛した公安の男に頼まれて、彼の取り組んでいる事案に絵麻が関わって行くという話である。男は、ある組織に樋渡初美を公安のエスとして送り込んだ。だが、その樋渡初美との連絡が途絶えたという。そこで男は、心理分析のプロである絵麻に協力を依頼するのだ。絵麻はかつての恋人がサイコパスであると知りつつ、協力することになる。男の狙いは、勿論その組織を潰すこと。行動心理分析に自信のある絵麻は、エスとして潜入した樋渡初美の安否確認を第一において、潜入捜査に協力する。
この組織は何か? その設定それ自体が、現在の世界の状況を取り込んでいて、リアル感を抱かせるものである。設定された組織には触れずにおく。本書を開くのを楽しみしていただきたい。
絵麻は行動心理分析に優れている故に、逆にそれが災いしないように、精神安定剤を服用し、大脳辺縁系の反応を鈍らせて、己に生ずるなだめ行動を抑制するという形で、組織の窓口となっている女性に接触していく。
この話、直近のエンマ様の不可解な行動に対してあらぬ推測と疑惑を抱いた筒井・綿貫両刑事が密かに尾行することから、彼らが巻き込まれていく。そして、公安の男の描いたシナリオが崩される羽目に・・・。
絵麻の行動がそれによりどうなるか。おもしろい展開が組み込まれている。
洗脳という側面で、最新の大脳医学もストーリーに組み込まれていて興味深い。この辺りがどこまで事実であり、現実的な効果、結果をもたらすのかについては情報を持たないのでわからない。そうなのか・・・にとどまる。しかしそれが事実なら恐ろしいことである。
ネタばれは回避しておこう。筒井刑事、絵麻より大先輩だが、脇役としておもしろい。
このシリーズ第4作もまた、行動心理学の知識を学びながら、面白く読むことができた。行動心理学に関心を抱く人には、オススメである。フィクションではあるが、心理学理論、用語のケーススタディ的なシーンを織り込んで仕立てたストーリーなのだから。
一方、心理学なんて・・・と思う人には、逆に心理学に興味をもつトリガーになるかもしれない。このストーリーで描かれる行動の断片シーンは、日常の我々の行動自体に応用できるものなのだから。
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パーソナルスペース :ウィキペディア
ウィリアム・シェルドン :「コトバンク」
体型で性格が分かる―3つの特徴 :「W.マイナビ ウーマン」
スタンレー・ミルグラムの服従実験 :「Es Discovery Logs」
スキーマ :「心理学用語集 Psychological Term」
サブリミナル効果 :ウィキペディア
精神病質 :ウィキペディア
サイコバスとは何か?
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