1989年11月に石ノ森章太郎の「萬画」宣言を伴った『マンガ日本の歴史』(中央公論社)の第1巻が出版され、1993年10月に最後の第48巻が出版された。あるとき衝動買い的に買い始めて全巻揃えていった。チラリと見た後、その内に通して読もうと思いつつ書架に眠っていた。コロナ禍の中で、この際に・・・・と継続的に読み始めた。第30巻を読み終え、第31巻に移るところである。その途中で本書を開くことに。
本書は、改めて奥書を見ると2000年9月の出版。こちらもあるときタイトルに惹かれて買っていたもの。その時の関心事項の関連として部分的に参照してはいたが、通読はしなかった。上記シリーズが寛永期に入ってきたので、超ダイジェスト版ともいえるこちらを一度、通読してみることにした。相互補完になる気がした。
表紙に、「原始・古代から近現代まで、日本の歴史が見わたせる!」というキャッチフレーズ文が記されている。「日本史の流れが一目瞭然!とも。
この売り言葉、ウソではない。確かに日本史のポイントとなるところを抽出して、時代の大きな流れをうまく押さえているように思う。
見開きの2ページで一つの事項を解説していく。具体例で言えば、「第1章 原始」の内表紙に古代への導入説明文がある。その次の最初の事項は「人類のルーツ」。見開きの左ページに、<人類の進化をたどる>という標題で,400万年前の鮮新世:類人から現代人までをイラスト図入りの進化プロセスとして図解されている。右のページから左のページに少しかかる形で、解説が載る。右ページ+α、大凡590文字枠での解説である。解説の長目の事項で630文字枠程度である。解説事項には、解説文中に2000年時点までの最新の研究成果や歴史研究の動向への言及を含むものもある。
実質254ページのボリュームで、日本の歴史の各時代がバランスよく説明されている。本書は章立てが大きな時代区分となっている。各時代で取り上げられた事項(解説テーマ)数をまとめると、次のとおり。
第1章 原始 ・日本人の祖が移入した時代 23項 コラム1
第2章 古代 ・貴族が世の中を謳歌した時代 26項 コラム1
第3章 中世 ・武士が覇を唱えた時代 24項 コラム1
第4章 近世 ・身分制度が固定化した時代 24項 コラム1
第5章 近現代 ・民衆が躍動した時代 25項 コラム1
たとえば、第2章の古代は大和政権~奈良時代~平安時代の時期をまとめて26の解説テーマを設定し、見開きで解説と図解をしている。解説テーマを列挙すると、「古代」がどのように著者によりとらえられているかがおわかりになるだろう。
古墳と大和政権/古墳の構造と特徴/朝鮮半島への進出/国内に流入する大陸文化/古墳時代の生活/聖徳太子の政治/遣隋使の派遣/飛鳥文化/大化の改新/壬申の乱/大宝律令の制度/班田収受法と農民支配/白鳳文化/遣唐使の時代/奈良時代の政界/荘園の誕生/天平文化/桓武天皇の政治/弘仁・貞観文化/摂関政治/国風文化/武士の成長と反乱/院政の展開/保元・平治の乱/平氏政権/平安末期の文化
解説がこのような流れで進展する。
図解をみると、<672年の壬申の乱>、<律令制度下の政治組織>、<農民が負担する税>、<遣唐使船の航路>、<奈良時代の権力者>、<保元・平治の乱の流れ>などは、結構内容が具体的であり、全体として分かりやすく図解されている。学校での歴史の時間にはそこまで習ったという記憶はない(私が学習していなかっただけかも・・・・・)。これは本書で基礎知識部分を改めて整理する機会になったというニュアンスである。
改めて、長年参照用に必要に応じて開いている『日本史図表』(第一学習社)を開けると、類似の図表が掲載されている。図解レベルでも手許の複数の本で相乗効果を出せることを再認識した。こっちの本も通読した方がよさそう。
日本史における特定の時代、時期の政治や文化、社会の大きな背景を大づかみにしたいというレベルでまずアプローチするのには、参考書として役立つ本である。
上記のページ数の続き、巻末には年表と索引が付いている。
一応通読したので、この後は時折必要に応じて、あらためて参照する手がかり資料として使っていきたいと考えている。
手許の第1刷で通読していて校正ミスを3ヵ所で気づいた。精読していれば気づくと思う。マイナーな点なのでちょっと惜しい。p109,p182,p222で気づいた。気づけば知識習得に影響はない。開いていただき、気づいていただくのも一興かと。勿論、私が気づかなかっただけで他にもあるかもしれないが・・・・。
大括りな日本史の図解、解説書ではあるが、学生時代に受験勉強感覚で日本史を学んで以来、長い時の隔たりがある。現時点までの間における発掘情報や新しい学説などのトピックにも触れられていて、結構基礎知識をリフレッシュするのに役だった。もっと早く読んでおくべきだった気がする。
「鎖国という歴史単語がいけない、ということで、近年学者の間から批判の声もあがっている。案外数年のうちに、教科書から鎖国という言葉は消えるかもしれない」(p195)と「鎖国と長崎貿易」の項の末尾にある。歴史認識は研究の深化・進展とともに変化しているようだ。この本が出版され、既に20年が経過した。この一文に関するその後の研究成果と学説の動向はどういう展開をみせているのだろうか。興味が湧いてきた。
ご一読ありがとうございます。
本書は、改めて奥書を見ると2000年9月の出版。こちらもあるときタイトルに惹かれて買っていたもの。その時の関心事項の関連として部分的に参照してはいたが、通読はしなかった。上記シリーズが寛永期に入ってきたので、超ダイジェスト版ともいえるこちらを一度、通読してみることにした。相互補完になる気がした。
表紙に、「原始・古代から近現代まで、日本の歴史が見わたせる!」というキャッチフレーズ文が記されている。「日本史の流れが一目瞭然!とも。
この売り言葉、ウソではない。確かに日本史のポイントとなるところを抽出して、時代の大きな流れをうまく押さえているように思う。
見開きの2ページで一つの事項を解説していく。具体例で言えば、「第1章 原始」の内表紙に古代への導入説明文がある。その次の最初の事項は「人類のルーツ」。見開きの左ページに、<人類の進化をたどる>という標題で,400万年前の鮮新世:類人から現代人までをイラスト図入りの進化プロセスとして図解されている。右のページから左のページに少しかかる形で、解説が載る。右ページ+α、大凡590文字枠での解説である。解説の長目の事項で630文字枠程度である。解説事項には、解説文中に2000年時点までの最新の研究成果や歴史研究の動向への言及を含むものもある。
実質254ページのボリュームで、日本の歴史の各時代がバランスよく説明されている。本書は章立てが大きな時代区分となっている。各時代で取り上げられた事項(解説テーマ)数をまとめると、次のとおり。
第1章 原始 ・日本人の祖が移入した時代 23項 コラム1
第2章 古代 ・貴族が世の中を謳歌した時代 26項 コラム1
第3章 中世 ・武士が覇を唱えた時代 24項 コラム1
第4章 近世 ・身分制度が固定化した時代 24項 コラム1
第5章 近現代 ・民衆が躍動した時代 25項 コラム1
たとえば、第2章の古代は大和政権~奈良時代~平安時代の時期をまとめて26の解説テーマを設定し、見開きで解説と図解をしている。解説テーマを列挙すると、「古代」がどのように著者によりとらえられているかがおわかりになるだろう。
古墳と大和政権/古墳の構造と特徴/朝鮮半島への進出/国内に流入する大陸文化/古墳時代の生活/聖徳太子の政治/遣隋使の派遣/飛鳥文化/大化の改新/壬申の乱/大宝律令の制度/班田収受法と農民支配/白鳳文化/遣唐使の時代/奈良時代の政界/荘園の誕生/天平文化/桓武天皇の政治/弘仁・貞観文化/摂関政治/国風文化/武士の成長と反乱/院政の展開/保元・平治の乱/平氏政権/平安末期の文化
解説がこのような流れで進展する。
図解をみると、<672年の壬申の乱>、<律令制度下の政治組織>、<農民が負担する税>、<遣唐使船の航路>、<奈良時代の権力者>、<保元・平治の乱の流れ>などは、結構内容が具体的であり、全体として分かりやすく図解されている。学校での歴史の時間にはそこまで習ったという記憶はない(私が学習していなかっただけかも・・・・・)。これは本書で基礎知識部分を改めて整理する機会になったというニュアンスである。
改めて、長年参照用に必要に応じて開いている『日本史図表』(第一学習社)を開けると、類似の図表が掲載されている。図解レベルでも手許の複数の本で相乗効果を出せることを再認識した。こっちの本も通読した方がよさそう。
日本史における特定の時代、時期の政治や文化、社会の大きな背景を大づかみにしたいというレベルでまずアプローチするのには、参考書として役立つ本である。
上記のページ数の続き、巻末には年表と索引が付いている。
一応通読したので、この後は時折必要に応じて、あらためて参照する手がかり資料として使っていきたいと考えている。
手許の第1刷で通読していて校正ミスを3ヵ所で気づいた。精読していれば気づくと思う。マイナーな点なのでちょっと惜しい。p109,p182,p222で気づいた。気づけば知識習得に影響はない。開いていただき、気づいていただくのも一興かと。勿論、私が気づかなかっただけで他にもあるかもしれないが・・・・。
大括りな日本史の図解、解説書ではあるが、学生時代に受験勉強感覚で日本史を学んで以来、長い時の隔たりがある。現時点までの間における発掘情報や新しい学説などのトピックにも触れられていて、結構基礎知識をリフレッシュするのに役だった。もっと早く読んでおくべきだった気がする。
「鎖国という歴史単語がいけない、ということで、近年学者の間から批判の声もあがっている。案外数年のうちに、教科書から鎖国という言葉は消えるかもしれない」(p195)と「鎖国と長崎貿易」の項の末尾にある。歴史認識は研究の深化・進展とともに変化しているようだ。この本が出版され、既に20年が経過した。この一文に関するその後の研究成果と学説の動向はどういう展開をみせているのだろうか。興味が湧いてきた。
ご一読ありがとうございます。