この翻訳書の副題は「フランス人特派員が見た原発棄民たち」と表紙に記されていて、その下に、原タイトルがフランス語で記されている。本書末尾に、訳者である神尾賢二(以下、同様に敬称略)の「訳者あとがき」があり、原タイトルについて、冒頭で触れている。それを読むと、「荒廃」が主タイトルであり、副題の意味をそのまま直訳すると「フクシマの使い捨て人間たち」であることがわかる。つまり、この特派員記者は、ストレートに「福島第一の原発作業員のおかれた立場を言いあらわしている」(p202)副題を端的につけている。
訳者が直訳的ではないタイトルにしたのは、本書の内容が福島第一原発の爆発後に、フクイチで働く原発作業員そのものだけでなく、福島がフクシマに転換した「フクシマの荒廃」のプロセスにおいて、著者であるフランス人特派員の見聞と探求が広がっていることにある。生活の場を奪われ避難を余儀なくされた地元の人々、地元で原発労働者となっている人々の家族の有り様にも目を向けている故なのだろう。
「原発棄民」という表現には、一群の原発労働者が「使い捨て人間」として扱われていると特派員が明確に受け止める側面に加えて、愛する土地を離れねばならなくなって地元に戻れない人々をも包含した語彙として使っているのではないかと思う。併せて、直訳的タイトルにすると、本書を読まない限り、それが誰を意味するかが直接解らずに誤解を与える可能性もあるからかもしれない。
今までに、原発事故と被曝に関連した著書をかなりの冊数読んでいるが、その殆どは著者が日本人だった。フクシマを実際に見聞し、取材した外国人ジャーナリストの目線と思考で捉えたものはほぼなかった。それ故、著者が原子力発電大国であるフランスからやってきたフランス人特派員という立場が目に止まった。
結論から言えば、著者はかなり客観的公平に取材対象を拡げて「フクシマの荒廃」の事実と背景、原因を探求しているように感じる。外国人ジャーナリストの視点とその描写、そしてその捉え方は読み応えがある。
本書は「再確認」という見出しから始まる。2011年3月11日14時46分(日本時間)、東北沿岸沖でマグニチュード9の地震が発生したことにより、原発事故がフクシマの事態を現出した。この事実の経緯をまず端的に3ページ余に要約している。このセクションの末尾に、本書執筆時点までの事実として、「2011年3月以降、4万4530人の作業員が原発で働いた。少なくとも2040年までかかる福島第一の解体作業のために、さらに厖大な作業員が働きに来るであろう」(p10)と記す。この作業員の数字を現在の日本人がどれほど知っているだろうか。
「原子炉は、常に冷却し続けなければならない。現在どのような状況であるかはほとんどわかっていない。太平洋岸に横たわる東京電力の建物を蝕む炉心溶融物が今どうなっているのか、正確には何一つわからないのだ。事故はまだ終わっていないのである。」(p10)という文で「再確認」を結んでいる。
日本には「喉元過ぎれば熱さ忘れる」というフレーズがある。「フクシマ」の厳然たる事実を同様に風化してしまってはならないのだ。「事故はまだ終わっていないのである」本書は、あらためて、外国のジャーナリストの視点を介して、その事実を再認識するのに有益なレポートと位置づけられる。
「はじめに」を読むと、著者は2009年に福島県と仙台地方を訪れていて、20011年3月以前の東北の風景を見聞している。そして、2012年9月に特派員として日本に住み始めて、その数ヶ月後に、放射能に汚染されなかったが津波に破壊された地域を訪れている。
本書は2013年9月、S・ショウタと記す広野在住の原発作業員に対する初めての取材を皮切りに、2015年9月中旬までの取材活動の結果をまとめたものである。
著者が2014年7月、ある原発労働者と一緒の時に、ショウタから電話連絡があったのが最後だという。その時「彼は心配そうで、ピリピリしていた」と著者は記す。その後、本書を次の文章で締めくくっている。
「彼の話では、周囲で不審な事が起きていた。相手が何者かよくわからないまま、喋りすぎた労働者が翌日解雇された。ショウタは何であり、自分の身に同じような難儀が降りかかるのが怖くて、『本当に、生活していく金がいるんだ』と言う。この日、私は彼を安心させることなんてできただろうか。それからというもの、彼からのメッセージも電話も一切なかった。恐怖が彼を連れ去ってしまった。ショウタは蒸発した。ここで、道は途絶えた」(p199)
本書において、著者は幾人かの原発作業者への直接取材により理解した原発労働者の実態とフクシマの状況を詳細に描き出す。S・ショウタ(第2章)、タケシ(第5章)、白髭幸雄(第5章)、上地剛立(第6章)、林哲哉(第7章)、マサヒト(第8章)である。これら原発労働者たちは出身も原発での作業場も様々に異なる。東電ですら多分把握しきれていない原発労働者の下請雇用形態の実態も含めて、フクイチの実態が描き出される。
さらに、原発作業員の経験をしたジャーナリストの桐島瞬の経験談も加わる。いわき自由労組書記長桂武、組合活動家北島三郎にも取材している。
元東電の社員であり、福島第2原発で管理職として勤めていて、フクイチの事故後に退職し、AFWという原発労働者に対する支援団体を設立して活動する吉川彰浩(第9章)への取材結果にも一章を当てている。元東電ファミリーの一人だった人物の体験と意識の変遷を追っている。
一方で、著者自身がフクイチの現場見学を行い、その体験記を記す。そして、東電側の人々からの取材事実も勿論各所に書き込んでいる。福島第一原子力発電所所長・小野明(第4章)、東電東京本社原子力設備管理部・小林照明、広報担当・吉田真由美など東電側の担当者である。
原発労働者を支援する弁護士・水口洋介、岐阜大学社会学教授高木和美、阪南中央病院放射線科医村田三郎、防衛医科大学校で教鞭をとる精神科医重村淳などに取材し、各種報告書類の内容にも言及する。つまり、客観的に幅広く取材を進めていることが読み取れる。
第10章では、福島での原発建設の初期から携わり、「存命する福島の原子力発電の生みの親の一人」(p156)である東北エンタープライズ会長名嘉幸照に対する取材結果を克明に記している。そして、福島第一原発の爆発事故は自然の破壊力の結果では無い。日本原子力ムラの抱えている問題が引き起こした結果であると、このジャーナリストは捉えている。名嘉に対する取材から、「危機を予感していたのに、人為ミスと過失がトラブルの原因になり大事故を引き起こすことがわかっていたのに、それを聞いてもらえなかったことを悔やんでいる」(p165)と著者が受け止めた事実を記す。
第11章で、著者は「日本原子力ムラ」について、その実態を営利に分析している。
勿論、経済産業省資源エネルギー庁の電力ガス事業部原子力政策担当副部長河本順裕、原子力政策課課長補佐鈴木瑠衣や、清水建設の広野の事務所を仕切っていた松崎雅彦への取材なども盛り込んでいる。ここには政治家、専門家をはじめ数多くの関係者の名前が登場してくる。原子力ムラの人間関係図が垣間見える。
日本製原発の海外への売り込みについて、「彼(注記:安倍晋三)はフクシマの危機は豊かな教訓をもたらし、これによって原子力の分野における日本の専門力が強化されたとぶち上げ、自国のノウハウを売り込んだ。彼は逆説的な弁論を弄して、危機をチャンスに変えようと試みた」(p188)とシニカルに記す。
「同時に、日本原子力ムラはフクシマの沈静化を画策している。大多数が再稼働に反対する世論に敵対する動きであることをよくわかっていながらである」(p188)
「こんにち、原発の解体と再建は技術的な問題に還元されており、そこでは往々にして人間的な側面が排除されている」(p189)
と痛烈である。
経済産業省の官僚に著者が取材したときに、挨拶代わりの名刺交換の後、「おたくは、原子力エネルギーに賛成ですか、反対ですか?」という質問をその官僚が担当直入に質問してきたと記す。その後に著者が特派員となっている『リベラシオン』紙のことについてのやり取りが書き出されている。まさに日本原子力ムラの一端を示すエピソードになるシーンである。p172~173をご一読いただくとよいだろう。
著者は本書で一貫して、フクシマの人間的側面に焦点を絞り込んでいく。
そして、「使い捨て人間たち」と位置づけられている実態を見つめていく。
フクシマの発現当時から数年は、あれだけ華々しく報道したマスコミが、真っ先に報道の沈静化に加担しているかの感すらある。報道が少ないことは、フクシマの事実が断絶し、一般庶民の意識が風化することに繋がって行く。適正な情報を求め続け、意識化する機会を持ち続けることがまず必要なのだろう。そのための一冊がここにある。
本書は、読者を「事故はまだ終わっていないのである」という再確認に回帰させる。
ご一読りがとうございます。
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本書からの関心の波紋としてネット検索した事項を一覧にしておきたい。
ホールボディカウンターによる内部被ばく検査 検査の結果について(平成30年1月分掲載) :「福島県」
廃炉プロジェクト :「東京電力ホールディングス TEPCO」
福島第一原子力発電所作業者の被ばく線量の評価状況について :「TEPCO」
「東京電力福島第一原子力発電所の現状と廃炉に向けた取り組み」についてパンフレットが作成されました!! :「福島県富岡町」
40年後の未来へ 福島第一原発の今 :「NHK NEWS WEB」
ドイツが福島の現状を正確に伝える8分・・・全員見るべし・・・ドイツARD「放射能汚染された土地」2016年3月12日 :「Sharetube シェアチューブ」
福島第一原発について、あなたが知らない6つのこと :「HUFFPOST」
福島第一原発「震災6年後の真実」新たな惨事の可能性も :「東スポWeb」
福島原発事故から6年 「アンダーコントロール」からほど遠い現状、海外メディア伝える :「NewShrere」
福島原発の現状がヤバすぎる!放射能漏れがコントロール不能の原発事故!東京オリンピック中止しよう! :「NAVERまとめ」
意外と知らない!?命が安売りされる、原発作業員の「噂と現実」 :「NAVERまとめ」
福島の甲状腺がん→現状で子供193人が発病!原発事故の現在と影響
:「福島原発事故の真実と放射能健康被害」
【福島の深刻な現状】なぜ六ヶ月で中絶したか :「原発問題」
原発労働者の描く強烈な漫画! いま福島で行われている「世界初の作業」とは何か?
:「講談社コミックプラス」
原発で働く人々(1) :「よくわかる原子力」(原子力教育を考える会)
あまりの被曝量「話が違う」(原発作業員と3.11)=訂正・おわびあり
:「朝日新聞SIGITAL」
放射能プールに潜らされる作業員、死亡事故の隠蔽、ボヤの放置…原発労働の悲惨な実態 :「LITERA」
20160116 原発労働者の実態と権利擁護の闘い QA :YouTube
福島第一原発労働者の実態を撮影:小原一真(独ZDF) :YouTube
原発作業員が去っていく 福島第一原発“廃炉”の現実 :「クローズアップ現代」
第一原発元作業員の53歳、作業11か月で3つのがんを同時発症 :「週刊女性PRIME」
原発労働者の健康相談スタート 健康管理の課題は山積 :「全日本民医連」
原発労働をめぐる労働法的考察 奥貫妃文氏 論文 pdfファイル
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今までに以下の原発事故関連書籍の読後印象を掲載しています。
読んでいただけると、うれしいです。
『福島第一原発収束作業日記』 ハッピー 河出書房新社
『原発と戦争を推し進める愚かな国、日本』 小出裕章 毎日新聞社
『原子力安全問題ゼミ 小出裕章最後の講演』 川野眞治・小出裕章・今中哲二 岩波書店
=原発事故及び被曝に関連した著作の読書印象記掲載一覧 (更新4版 : 51冊)=
訳者が直訳的ではないタイトルにしたのは、本書の内容が福島第一原発の爆発後に、フクイチで働く原発作業員そのものだけでなく、福島がフクシマに転換した「フクシマの荒廃」のプロセスにおいて、著者であるフランス人特派員の見聞と探求が広がっていることにある。生活の場を奪われ避難を余儀なくされた地元の人々、地元で原発労働者となっている人々の家族の有り様にも目を向けている故なのだろう。
「原発棄民」という表現には、一群の原発労働者が「使い捨て人間」として扱われていると特派員が明確に受け止める側面に加えて、愛する土地を離れねばならなくなって地元に戻れない人々をも包含した語彙として使っているのではないかと思う。併せて、直訳的タイトルにすると、本書を読まない限り、それが誰を意味するかが直接解らずに誤解を与える可能性もあるからかもしれない。
今までに、原発事故と被曝に関連した著書をかなりの冊数読んでいるが、その殆どは著者が日本人だった。フクシマを実際に見聞し、取材した外国人ジャーナリストの目線と思考で捉えたものはほぼなかった。それ故、著者が原子力発電大国であるフランスからやってきたフランス人特派員という立場が目に止まった。
結論から言えば、著者はかなり客観的公平に取材対象を拡げて「フクシマの荒廃」の事実と背景、原因を探求しているように感じる。外国人ジャーナリストの視点とその描写、そしてその捉え方は読み応えがある。
本書は「再確認」という見出しから始まる。2011年3月11日14時46分(日本時間)、東北沿岸沖でマグニチュード9の地震が発生したことにより、原発事故がフクシマの事態を現出した。この事実の経緯をまず端的に3ページ余に要約している。このセクションの末尾に、本書執筆時点までの事実として、「2011年3月以降、4万4530人の作業員が原発で働いた。少なくとも2040年までかかる福島第一の解体作業のために、さらに厖大な作業員が働きに来るであろう」(p10)と記す。この作業員の数字を現在の日本人がどれほど知っているだろうか。
「原子炉は、常に冷却し続けなければならない。現在どのような状況であるかはほとんどわかっていない。太平洋岸に横たわる東京電力の建物を蝕む炉心溶融物が今どうなっているのか、正確には何一つわからないのだ。事故はまだ終わっていないのである。」(p10)という文で「再確認」を結んでいる。
日本には「喉元過ぎれば熱さ忘れる」というフレーズがある。「フクシマ」の厳然たる事実を同様に風化してしまってはならないのだ。「事故はまだ終わっていないのである」本書は、あらためて、外国のジャーナリストの視点を介して、その事実を再認識するのに有益なレポートと位置づけられる。
「はじめに」を読むと、著者は2009年に福島県と仙台地方を訪れていて、20011年3月以前の東北の風景を見聞している。そして、2012年9月に特派員として日本に住み始めて、その数ヶ月後に、放射能に汚染されなかったが津波に破壊された地域を訪れている。
本書は2013年9月、S・ショウタと記す広野在住の原発作業員に対する初めての取材を皮切りに、2015年9月中旬までの取材活動の結果をまとめたものである。
著者が2014年7月、ある原発労働者と一緒の時に、ショウタから電話連絡があったのが最後だという。その時「彼は心配そうで、ピリピリしていた」と著者は記す。その後、本書を次の文章で締めくくっている。
「彼の話では、周囲で不審な事が起きていた。相手が何者かよくわからないまま、喋りすぎた労働者が翌日解雇された。ショウタは何であり、自分の身に同じような難儀が降りかかるのが怖くて、『本当に、生活していく金がいるんだ』と言う。この日、私は彼を安心させることなんてできただろうか。それからというもの、彼からのメッセージも電話も一切なかった。恐怖が彼を連れ去ってしまった。ショウタは蒸発した。ここで、道は途絶えた」(p199)
本書において、著者は幾人かの原発作業者への直接取材により理解した原発労働者の実態とフクシマの状況を詳細に描き出す。S・ショウタ(第2章)、タケシ(第5章)、白髭幸雄(第5章)、上地剛立(第6章)、林哲哉(第7章)、マサヒト(第8章)である。これら原発労働者たちは出身も原発での作業場も様々に異なる。東電ですら多分把握しきれていない原発労働者の下請雇用形態の実態も含めて、フクイチの実態が描き出される。
さらに、原発作業員の経験をしたジャーナリストの桐島瞬の経験談も加わる。いわき自由労組書記長桂武、組合活動家北島三郎にも取材している。
元東電の社員であり、福島第2原発で管理職として勤めていて、フクイチの事故後に退職し、AFWという原発労働者に対する支援団体を設立して活動する吉川彰浩(第9章)への取材結果にも一章を当てている。元東電ファミリーの一人だった人物の体験と意識の変遷を追っている。
一方で、著者自身がフクイチの現場見学を行い、その体験記を記す。そして、東電側の人々からの取材事実も勿論各所に書き込んでいる。福島第一原子力発電所所長・小野明(第4章)、東電東京本社原子力設備管理部・小林照明、広報担当・吉田真由美など東電側の担当者である。
原発労働者を支援する弁護士・水口洋介、岐阜大学社会学教授高木和美、阪南中央病院放射線科医村田三郎、防衛医科大学校で教鞭をとる精神科医重村淳などに取材し、各種報告書類の内容にも言及する。つまり、客観的に幅広く取材を進めていることが読み取れる。
第10章では、福島での原発建設の初期から携わり、「存命する福島の原子力発電の生みの親の一人」(p156)である東北エンタープライズ会長名嘉幸照に対する取材結果を克明に記している。そして、福島第一原発の爆発事故は自然の破壊力の結果では無い。日本原子力ムラの抱えている問題が引き起こした結果であると、このジャーナリストは捉えている。名嘉に対する取材から、「危機を予感していたのに、人為ミスと過失がトラブルの原因になり大事故を引き起こすことがわかっていたのに、それを聞いてもらえなかったことを悔やんでいる」(p165)と著者が受け止めた事実を記す。
第11章で、著者は「日本原子力ムラ」について、その実態を営利に分析している。
勿論、経済産業省資源エネルギー庁の電力ガス事業部原子力政策担当副部長河本順裕、原子力政策課課長補佐鈴木瑠衣や、清水建設の広野の事務所を仕切っていた松崎雅彦への取材なども盛り込んでいる。ここには政治家、専門家をはじめ数多くの関係者の名前が登場してくる。原子力ムラの人間関係図が垣間見える。
日本製原発の海外への売り込みについて、「彼(注記:安倍晋三)はフクシマの危機は豊かな教訓をもたらし、これによって原子力の分野における日本の専門力が強化されたとぶち上げ、自国のノウハウを売り込んだ。彼は逆説的な弁論を弄して、危機をチャンスに変えようと試みた」(p188)とシニカルに記す。
「同時に、日本原子力ムラはフクシマの沈静化を画策している。大多数が再稼働に反対する世論に敵対する動きであることをよくわかっていながらである」(p188)
「こんにち、原発の解体と再建は技術的な問題に還元されており、そこでは往々にして人間的な側面が排除されている」(p189)
と痛烈である。
経済産業省の官僚に著者が取材したときに、挨拶代わりの名刺交換の後、「おたくは、原子力エネルギーに賛成ですか、反対ですか?」という質問をその官僚が担当直入に質問してきたと記す。その後に著者が特派員となっている『リベラシオン』紙のことについてのやり取りが書き出されている。まさに日本原子力ムラの一端を示すエピソードになるシーンである。p172~173をご一読いただくとよいだろう。
著者は本書で一貫して、フクシマの人間的側面に焦点を絞り込んでいく。
そして、「使い捨て人間たち」と位置づけられている実態を見つめていく。
フクシマの発現当時から数年は、あれだけ華々しく報道したマスコミが、真っ先に報道の沈静化に加担しているかの感すらある。報道が少ないことは、フクシマの事実が断絶し、一般庶民の意識が風化することに繋がって行く。適正な情報を求め続け、意識化する機会を持ち続けることがまず必要なのだろう。そのための一冊がここにある。
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廃炉プロジェクト :「東京電力ホールディングス TEPCO」
福島第一原子力発電所作業者の被ばく線量の評価状況について :「TEPCO」
「東京電力福島第一原子力発電所の現状と廃炉に向けた取り組み」についてパンフレットが作成されました!! :「福島県富岡町」
40年後の未来へ 福島第一原発の今 :「NHK NEWS WEB」
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:「講談社コミックプラス」
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あまりの被曝量「話が違う」(原発作業員と3.11)=訂正・おわびあり
:「朝日新聞SIGITAL」
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20160116 原発労働者の実態と権利擁護の闘い QA :YouTube
福島第一原発労働者の実態を撮影:小原一真(独ZDF) :YouTube
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『福島第一原発収束作業日記』 ハッピー 河出書房新社
『原発と戦争を推し進める愚かな国、日本』 小出裕章 毎日新聞社
『原子力安全問題ゼミ 小出裕章最後の講演』 川野眞治・小出裕章・今中哲二 岩波書店
=原発事故及び被曝に関連した著作の読書印象記掲載一覧 (更新4版 : 51冊)=