ジローのヨーロッパ考

デンマークやドイツの農家に長期(?)滞在、体験したり感じたことを綴ります。

アイルランド: ワイルド・ギースのWhiskey

2016-03-10 18:38:13 | 日記
2016年3月10日(Thu.) 先日(2月21・22日)のブログで、アイリッシュ・ウィスキーの話題を取り上げました。今日は、その続編とでも言いましょうか・・・。  アイリッシュ・ウィスキーの種類を探していると、「ワイルド・ギース( Wild Geese )」と呼ばれるものがあるようです。直訳すれば野性の雁(野雁)と言うことになりそうですが、これには深い意味がありました。



一旦、話をアイルランドの歴史に戻します。12世紀以降、イングランドの影響が強まったアイルランドですが、17世紀には、あのオリバー・クロムウェル( Oliver Cromwell )の残虐な殺戮が行われました(1649年)。有名なのはドローエダ( Drogheda )とウェックスフォード( Wexford )の戦いに関するものでしょう。アイルランドのカトリック系の人々が、大勢殺傷されたと伝えられています。

そして、その後、イングランドでの王政復古、さらには、カトリック系であったジェームズ2世から、宮廷革命を経てプロテスタント(反カトリック)のオレンジ公ウィリアム3世へと王政が引き継がれます。オレンジ公ウィリアム3世は、強力な軍隊をアイルランドに進め、いくつかの戦いを経てリムリック( Limerick )条約の締結(1691年)に至ります。 これによって、アイルランド内のカトリック教徒は、差別的な扱いをさらに受けることになって行きます。

結果、アイルランドの中の多数を占めるカトリック教徒が、プロテスタント(イギリス国教等)に統制強化される構図が出来上がり、土地・不動産の財産や権力基盤等は少数のプロテスタントが握って行くことになります。

このリマリックでの攻防で敗れた、アイルランド側で指揮してきたパトリック・サースフィールド( Patrick Sarsfield )は、19000人(12000、14000とも)の兵士を連れてフランスに渡りました。そして、先に亡命していたイングランドのジェームズ2世と組んで、アイルランドに戻ることを画策したそうです(上手くは行かなかった)。

このフランスに渡った19000人の兵士達は、いつかは祖国アイルランドに帰ることを夢見て、フランスを始めとするヨーロッパ各地で、傭兵・職人・商人などとして生き延びて行ったのです。また、彼らの多くは、祖国アイルランドに家族・親戚を置いてきたとも伝えられており、この祖国を離れざるを得なかった人々のことを「 Wild Geese 」と呼ぶようになったと言います。 渡り鳥のように、いつかは故郷に戻ることが出来る・・・と。






アイリッシュ・ウィスキーの「 Wild Geese 」 は、これらのことを意図して命名されたと説明されています。 このウィスキーの名称も知りませんでしたが、17世紀末頃からの、祖国アイルランドを離れざるを得なかった方々の呼称であることも知りませんでした。

当時の、イングランド、スコットランド、アイルランドの関係と、フランス、スペイン等との関係は、プロテスタント(イギリス国教、及び、プロテスタント改革派など)とカトリックの争いが主な要因であったと思われます(複雑です・・・)。




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ところで、今日は3月10日、明日の11日は「3.11」、東日本大震災と、それに伴う福島原発過酷事故から丸5年経つことになります。各地の震災からの復興は、十分なものとは報じられていません。また、言うまでもなく、福島原発周辺は、帰りたくても帰れないのです。

まるで、17世紀のワイルド・ギースと呼ばれたアイルランドの人々と同じような運命ではありませんか(事情は違えど)。



そして、昨日(3月9日)、滋賀県の大津地裁にて、関西電力高浜原発(3・4号機)の運転差し止め判決が出されました。誠に妥当な判断が下されたと思います。福島の現実を正視できるのであれば、原発再稼動は選択肢から除外するしかないでしょう。

さらに、「停止」は「 Under Control 」と言うことで、停止制御中なのであって、想定外(?)の災害や事故が起これば、稼働中同様の事態に陥ることになりかねません。つまり、私達の選択は「廃炉・撤去」が正しい考えでしょう。

もちろん、今日・明日と言うわけにはいかないでしょうが、原発に頼らない電源供給で、年間を通して乗り切ってきた「実績」もありますので、再稼動への無駄な時間・コスト投入は速やかにやめるべきで、そうした努力等は、廃炉・撤去への歩みに用いるべきではありませんか。

それにしても、高浜原発のある福井県の首長らが、大津地裁の判断に対して同意しかねる主旨の発言をしたり、原発マネーが生活の頼りである関係者も、戸惑うかのような意見を述べているようです。周辺住民や、子々孫々への影響等を顧みない、今が・自分たちさえ良ければそれでいい・・・と考える尊敬には値しない人々が少なくないようです。



さて、気分を新たにして、祖国アイルランドを離れざるを得なかった人々にも思いを馳せながら、今宵はアイリッシュ・ウィスキーをいただきましょうか。




*** 下の写真は、記事内容とは関係ありません。




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