ださいたま 埼玉 彩の国  エッセイ 

埼玉県について新聞、本、雑誌、インターネット、TVで得た情報に基づきできるだけ現場を歩いて書くエッセー風百科事典

百観音温泉 久喜市

2013年03月02日 16時53分00秒 | 名所・観光
百観音温泉  久喜市

埼玉県の広報誌「彩の国だより」(月刊)の「知事コラム」はいつも面白い。13年3月号は、「『ネガポ』で明るく」というものだったが、大笑いした。

「ネガポ」とは、英語の「ネガティブ(否定的)」な言葉を「ポジティブ(肯定的)」なものに言い換える「ネガポジ変換」の略語だそうだ。

女子高校生三人が考え出したもので、主婦の友社から出た約600例収録の「ネガポ辞典」が売れているという。

例えば、「いいかげん」は「おおらか」、「不幸」は「これから幸せになれる」、「おならが出た」は「健康的」といった具合だ。

この調子で行けば、人に悪口を言われても、くよくよせず発想の転換で明るく前向きに生きていける。ものにはすべて、裏(陰)があれば表(陽)があるからだ。

観光面では、文字どおり「無い無い尽くし」。頭が痛い埼玉県にはぴったりの辞典だろう。

13年1月末、貴重な経験をした。無いはずのものがあったのである。

北隣の群馬県は、「おんせん県」の名称をめぐって、大分県と競っているというのに、火山がないわが埼玉には、鉱泉(冷泉)はあっても、熱い湯が噴き出す本当の温泉はまずないものと思い込んでいた。

ところがどっこい。

県内唯一、57度の湯が1分間に千リットル自噴する全国屈指の日帰りの療養型天然温泉が、JR宇都宮線東鷲宮駅の西口から徒歩でわずか3分の所にあると、今ごろ知って出かけた。

ちょうど創業11周年感謝祭の終わりに近く、平日なのに、何か所もある駐車場は一杯。祝祭日には、駐車場はもちろん中も大混雑という。

なにしろ、メタンガスの圧力で1500mの地下から有り余る湯が噴出してくるのだから、濾過機などを一切使わず、内湯・露天全ての浴槽で100%の源泉を、加水加熱せず掛け流しで使っている。豊富な湯が常に浴槽に注がれているので、循環措置は無く、完全放流式。

火山に近く、山深く渓流もある、いかにも温泉らしい温泉地でも、掛け流しは今では少なくなっているのに、関東平野のど真ん中、田んぼの中で、掛け流し湯に入れるのだからうれしい。

火山帯はなくても、地下深くから湧く平地型温泉もあると専門書にもあるので、これはその代表の一つだろう。埼玉県向きの温泉である。

ここでは内湯より露天風呂の方が、はるかに大型で、広い。立ち湯(深さ1.3m、湯温45~6度)も、寝湯も、上から落ちるのではなく、ノズルで上から吹き付ける打たせ湯もあり、温泉気分を満喫できる。

「日本天然温泉審査機構」の調べでは、源泉、泉質、引湯、給排湯方式、加水、新湯注入率の6項目で、いずれも自然度・適正度が5つ星(優良)で、全国最高クラスの数少ない天然温泉だった。6項目全てで5つ星というのは、全国でも10数か所だそうだ。

溶け込んでいるミネラルが高濃度の「高張性」で、「日本有数の泉質を誇る贅沢な温泉」とパンフレットはうたっている。

元は太古の海の水だから、泉質は「ナトリウム塩化物強塩温泉」。塩素イオンとナトリウムイオンが最も多い。アワが浮き、いくぶん褐色を帯びていて、指を舐めてみると、さすがに塩からい。

神経痛、腰痛などの痛み、慢性消化器病、疲労回復などのほか、アトピー、アレルギー、花粉症にも効くという声もある。

女性の肌をしっとりスベスベにする、いわゆる「美人の湯」には、ナトリウムイオンとカルシウムイオンを含んでいる共通点があるとか。この湯にもカルシウムイオンも多いので、美肌効果もある。

「百観音」の名を冠した化粧水や酒、だんごやまんじゅう、構内に百観音を祀った堂もある。

100m掘るごとに3度(埼玉の場合は約2.5度とも)、地温は地表より高くなるというから、運に恵まれれば、熱くなった化石海水による「温泉県埼玉」も夢ではない。実際、他にも高温、自噴の温泉もあるようだから、訪ねてみよう。


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