ださいたま 埼玉 彩の国  エッセイ 

埼玉県について新聞、本、雑誌、インターネット、TVで得た情報に基づきできるだけ現場を歩いて書くエッセー風百科事典

埼玉の酒 大試飲会

2010年02月25日 03時11分55秒 | 食べ物・飲み物 狭山茶 イチローズモルト 忠七めし・・・
埼玉の酒 大試飲会

埼玉県の広報紙「彩の国だより」(月刊)は、編集も凝っていてなかなか面白い。10年10月号の最終ページは、「多酒埼彩! うまいぞ、すごいぞ、埼玉の地酒」の特集。「多酒埼彩!」とは、埼玉の「埼」と、埼玉が自称する「彩の国」の「彩」をもじったもので、うまい見出しである。

この見出しに魅かれて、読んでみると、知らないことがいくつも書いてある。埼玉では、「酒造りに適した酒米『さけ武蔵』を作り出し、17の蔵元で埼玉の地酒造りに挑戦している」「江戸時代から江戸に酒を出荷、現在、蔵元は35、日本酒出荷量は約2万klで、全国7位(09年)」「県酒造組合(事務局・熊谷市)では若手の杜氏育成に務めている」などだ。

11年度には、出荷量は約2万2千klで、兵庫、京都、新潟の酒どころに告ぐ第4位になったというから驚く。消費量も4位。一人当たりの年間消費量は36位になったが、1位の新潟県や2位の秋田県とは2-3倍の差があるという。県産酒のシェアは18%と低い。

さらにページの最下端まで見ると、「埼玉35酒蔵大試飲会 開催 各蔵自慢の地酒の地酒を飲み比べ」とあり、費用はわずか500円とのこと。県酒造組合が05年から毎年開いている。

10月5日午後4時、大宮区のソニックシティの会場には長い行列ができていた。入り口で、試飲用のお猪口と、銘柄名リストとアンケート用紙を渡される。

埼玉の酒を飲まなかったわけではない。「清龍」(蓮田市)は池袋店で大学に入って初めて飲んだ日本酒だった。昔コマーシャルでよく聞いた「清酒力士はうまい酒}の「力士」(加須市)は、有楽町駅前にも飲ませる店があった。その蔵元の釜屋は1748(寛延元)年の創業だ。秩父の銘酒「秩父錦」(秩父市)は都内でも店構えはどっしりとしている。

小川町の「帝松」も県内で飲んだことがある。「帝松」は全国新酒鑑評会で7年連続金賞を受賞しているという。後で知ったのだが、「秩父錦」も08年まで七年連続金賞を受けている。

試飲会ではどれを飲んでもうまかった。大吟醸や吟醸、古酒、「ひやおろし」・・・と取っておきの酒を飲ませてくれるからだ。吟醸酒ブームの時代、日本吟醸酒協会の試飲会に毎回、通ったのを思い出す。

「ひやおろし」というのも、今度初めて知った。春先にしぼった新酒を一度、火入して、夏の間冷たい蔵で熟成させ、秋になったら、二度目の火入れをせずに出荷する酒のこと。「秋の酒で、今が一番おいしい」とのことで、盃を重ねた。

地元さいたま市にも、創業100年を超える酒蔵が4つある。西区の「金紋世界鷹」の小山本家酒蔵は、「地産地消」をコンセプトに県産米の「日本晴」、蔵内湧水、蔵付き酵母「又兵衛酵母」を使って「埼玉県内限定」で売っている。岩槻区にはお城にちなんだ「大手門」や「万両」の鈴木酒造、見沼区には「九重桜」の大瀧酒造、旧浦和市の桜区には「旭正宗」の内木酒造(写真)があり、健闘している。

埼玉県には荒川と利根川の2つの大河があり、伏流水が豊富。利根川系に比べて、荒川系の方がやや硬度が高い。全体的に軟水で、酒質はやわらかく、口当たりの良いまろやかな酒ができると、県酒造組合のパンフレットにある。

環境省が08年にまとめた「平成の名水百選」に県内から4か所が選ばれた。小鹿野町の毘沙門水、秩父市の武甲山伏流水、熊谷市の元荒川ムサシトミヨ生息地、新座市の妙音沢で、県で4か所は、酒どころ新潟、富山と肩を並べる。

地元の酒蔵の座談会を読んでいると、埼玉の冬場の平均気温と乾燥した気候が酒造りにぴったり。気温が高過ぎると冷やさなければならないし、ものすごく寒いともろみを温めなければならない。埼玉の平均気温が最適だというのである。

埼玉の酒は淡麗とか濃醇とか一言で表現できる特徴は無いものの、料理と一緒に出すと評判がいいという話もあった。





エコツーリズムの先進地 飯能市

2010年02月22日 11時45分17秒 | 名所・観光
エコツーリズムの先進地 飯能市

10年2月21日、新聞で知って、飯能市役所で開かれた「里山づくりシンポジウム」に出かけた。良好な自然環境をまちづくりとどう結び付けるかに、昔から興味を持っているからだ。

埼玉県南西部にあるこの市(人口8万3千人)は、埼玉県には珍しく、ハイキングにぴったりの天覧山(195m)、多峯主山(とおのすやま 271m))、宮沢湖、入間川、高麗川、能仁寺などの観光資源に恵まれ、市域の76%が森林。

市では「森林文化都市」を宣言していて、08年には環境省のエコツーリズム大賞を受賞した。09年には、国のエコツーリズム推進法に基づき、「飯能市エコツーリズム推進全体構想」が全国で第1号の認定を受けている。環境省の「エコツーリズム推進モデル地区」に選ばれ、さる1月、「全国エコツーリズム推進セミナー」も開かれた。エコツーリズムの先進地である。海外からも注目されている。

市制50周年を記念して始まった飯能ツーデーマーチもすでに7回目を迎え、地元で捕獲したイノシシ肉を使った「しし肉うどん」が食べられるところもある。

このような背景もあって、シンポジウム会場の市役所の会議室は170もの人で一杯。東京農工大名誉教授の亀山章氏が「里山の過去・現在そして未来」と題して、要旨以下のような講演をされた。

・森林文化都市を歴史文化と結びつけたらどうか
・里山の「山」は、必ずしも傾斜がなくてもいい
・飯能には山地、丘陵地、台地、低地、谷地、湧水、水路、ため池といった里山の地形が全部ある
・埼玉県菖蒲町出身の日本の“林学の父”本多静六が明治45年、飯能の天然の美を生かした観光・地域開発のための具体的な指導をしている(市史に残る)
・飯能には7か所ぐらいゴルフ場がある。ゴルフ場も里山の一つで、管理もうまくいっている。夜には人がいないので動物天国。狸、狐、野兎、雉、リスなどの動物、金ラン、銀ラン、山ユリなどの植物が存在しており、生物多様性が尊重される時代にゴルフ場も悪くない。他の地では都市計画緑地に指定されているところもある。

ゴルフ場はこれまで。環境面から評価されることはほとんどなかったが、このような見方もあるのかと感心した。

エコツーリズムの先進地飯能が今後、まちづくりをどう進めていくか注目したい。学ぶことの多い有意義な午後だった。




埼玉の地酒 出荷伸び率日本一

2010年02月19日 09時59分49秒 | 食べ物・飲み物 狭山茶 イチローズモルト 忠七めし・・・
埼玉の地酒 出荷伸び率日本一

久しく、いも焼酎専門だった。若いころは日本酒も人並み以上に飲んでいたので、新聞にお酒関係の記事が載っていると自然に目が行くようになっている。朝日新聞埼玉版(11年2月19日)を開くと、「埼玉の地酒日本一」と信じられないような見出しが飛び込んできた。

酔眼なので、「ナヌ!」とよく見ると、日本酒造組合中央会の調べで、10年の1―9月期の全国の清酒出荷量が前年同期比4.4%減と低迷する中、県産出荷量の伸び率が、前年同期比2.2%増と全国一になったというのだ。

中央会によれば、11年には出荷量は、実に前年比24.4%増え、2万2695klとなり、酒どころの兵庫、京都、新潟に次ぎ、前年の7位から4位に上昇したという。

全国の出荷量は、0.8%減の約60万kl、縮小に向かうなかで、県の出荷量の伸びは全都道府県で最高となった。

小山本家酒造(さいたま市)が子会社の茨城県の賜杯桜酒造を統合した影響だとか。出荷量の内訳は、一般酒が28.7%増で最も伸びが高かった。吟醸酒やアルコールを添加しない純米酒も一桁台で伸びている。小山本家酒造以外の出荷量も増えているという。

ちょっと考えてみると、伸びている理由はよく分かる。「安くておいしい」から知名度は低くともこのデフレ時代にぴったりマッチしているからだろう。

東京の池袋を本店とする「居酒屋清龍」というチェーン店が御徒町、神田など都内各地にある。「清龍」の升酒一杯の値が格安で、おつまみも手ごろなので、いつも客でにぎわっている。

蓮田市にある蔵元清龍酒造も何度か訪ねた。江戸時代から続いていて、馬をつなぐ柵が残っているのが印象的だった。岩手県花巻市に自社水田を持っているのが自慢。

そう言えば、騎西町の釜屋の「力士」のテレビコマーシャルを覚えておられる方もあろう。これも江戸時代からの蔵元で、ホームページを見ると、平成21年の埼玉県春季清酒鑑評会で技術優秀賞と埼玉県総合第一位を獲得したと書いてある。

この他にも「秩父錦」など東京にも知られた銘柄もいくつかある。荒川と利根川の二つの大河に恵まれ、水には恵まれているので、うまい酒ができないはずはない。

課題は、成人一人当たりの清酒消費量は全国40位(08年度)、県内での県産酒消費割合も2割に満たないことと、県酒造組合では言っているという。埼玉の地酒の消費量の今後の伸びが楽しみだ。