16年10月3日、「独立行政法人造幣局さいたま支局」が新都心の近く、三菱マテリアル跡地にオープンした。東京・池袋のサンシャインシティ近くにあった「東京支局」が移転、「さいたま支局」に名前が変わったのである。
「支局」というから「本局」はどこにあるのだろう。大阪市にある。「通り抜けの桜」で有名なところだ。
支局はもう一つ広島市にあって、銅、ニッケル、アルミなどの貨幣の素材になる金属の鋳造を一手に引き受けている。丸い硬貨の原型は、円形(えんぎょう)と呼ばれる。広島支局で鋳造され、さいたま支局などへ送られてきて仕上げ工程が施される。
日頃目にする1円、5円、10円、50円、500円硬貨は「通常硬貨」と呼ばれる。さいたま支局の主な業務は、通常貨幣ではなく、「プルーフ貨幣」セット、勲章の製造、貴金属製品の品位証明などである。500円玉も造っている。
「プルーフ貨幣」とは、収集のための貨幣だ。流通している貨幣とデザインは同じで、市中でも使用できる。表面を鏡のように磨き、模様を鮮明にするため圧印を2回打ちするなど、特別丁寧に製造されている。
勲章にもいろいろある。旭日章は民間用、瑞宝章は公務員用。さいたま支局では22ある勲章のうち、旭日は小綬章、瑞宝章は中綬章、小綬章を製造している。
日本で開かれるオリンピックのメダルも造幣局で造られる。
品位証明は、製造・販売業者からの依頼で品位試験を行い、合格したものに「ホールマーク」を打ち、品位を証明するものだ。
一般の見学者にとっては、併設されている博物館が面白い。歴史を振り返れば、永い間“日本最古”の流通貨幣とされてきた「和同開珎(ちん)」は、708年、秩父市黒谷にある和銅(にきあかがね 製錬を必要としない自然銅)が発見されてでき、元号が「和銅」と改元されたほどだから、貨幣と埼玉県との関係は深い。
約1000点が展示されていて、普段はあまり目にしない各種の勲章やオリンピックの金、銀、銅メダルなどのほか、地方自治法施行60周年を記念した都道府県の記念貨幣もある。埼玉県の表面は渋沢栄一と川越の時の鐘の組み合わせ、裏面は埼玉スタジアム2002になっている。慶長大判、小判などの古銭ももちろんある。
1932(昭和7)年に発行され、発行枚数さえ分からないことから、”幻の金貨”といわれる20円金貨もある。
桜好きにとってうれしいのは、博物館沿いに200mの桜並木ができていることである。(写真 パンフレットから) まだ3~4年の中木だが、50本ずつ両側に合わせて100本。
八重(里)桜が主で約20種類。多い順に関山が12本、奈良の八重桜が7本、松月が6本、思川、一葉、天の川、普賢象などが各5本、白妙、福禄寿などが各4本・・・といった感じである。珍しいことに、どこにでもあるソメイヨシノは一本も植わっていない。
童謡「雨降りお月さん」などで知られる詩人野口雨情の宇都宮市の邸内にあった珍しい「雨情枝垂れ」も4本ある。
「浪速の春の風物詩」とされる本局の「通り抜けの桜」(133種・349本)、広島市内一のお花見スポットになっている広島支局の「花のまわりみち」(約60種・約220本)には、及ばないものの、さいたま市の花の名所になるだろう。遅桜の季節が待たれる。