ださいたま 埼玉 彩の国  エッセイ 

埼玉県について新聞、本、雑誌、インターネット、TVで得た情報に基づきできるだけ現場を歩いて書くエッセー風百科事典

県西部が横浜元町・中華街と直通に

2013年03月18日 18時48分16秒 | 街道・交通


浦和駅に「湘南新宿ライン」が全便停車するというので、お祭り騒ぎをしている一方で、川越や飯能、和光市などは横浜の元町・中華街まで直通・乗り換えなしで行けるようになったと大喜びだった。

県西部の東武東上、西武池袋、それに東京メトロ副都心、東急東横、横浜高速鉄道みなとみらいの5路線の乗客が乗り換えなしで埼玉県と横浜市の間を往来できるようになるのだから画期的だった。

東急東横線の渋谷駅のホームが、地上2階から地下5階へ下がり、東京メトロ副都心線(和光市―渋谷)と東急東横線(渋谷―元町・中華街)が「相互直通運転」を始めたおかげである。

例えば、川越―元町・中華街間は、寝ていても1時間半で結ばれるようになった。

念のために和光市駅は、東京メトロ副都心線と有楽町線(和光市―新木場)の埼玉側の始発駅である。

「海なし県」の埼玉では、海と接続するというニュースはいつも大ニュースなのだ。

一昔前、東武東上線が地下鉄の有楽町線で東京の新木場までつながり、「埼玉がついに海(東京湾)に出た」という記事を書いたことをなつかしく思い出す。

だが、県にとってもっと切実な問題は、直通で行けるようになったので、県民が海を、横浜を目指してサイフォン現象のように一方的に出て行くようになるのか、それとも、横浜周辺の神奈川県民が、どれくらい川越や飯能や、余り知られていない和光市までわざわざ来てくれるのか、ということだった。

東急東横線には、自由が丘、田園調布、日吉などブランド力のある駅もある。

知名度は落ちるとはいえ、埼玉県側の川越、飯能、和光市はそれぞれ、横浜市からの観光客を呼び込もうと、活動を始めている。

3市の中では川越が「小江戸川越」でリードしている感じだ。3月30日~5月6日の「小江戸川越春まつり」の観光入り込み客数は全体で約17万6千人。前年比11万近く増え、2.6倍の客足となった。うれしいことに神奈川県からの来訪者が急増している。

14年2月末の発表では、13年の川越市への入り込み観光客は約630万人(前年比1%増)で1982年の統計開始以降で過去最高を更新、神奈川県からの観光客が前年比5.7%増加した、という。

15年2月の発表では、14年は657万7千人と最多を更新した。散策したい歴史ある町並みランキングで全国3位だとか。

奥武蔵野ハイキングが売り物の飯能は「エコツーリズム」で売り出そうとしているし、横浜直通の終点は、武蔵丘陵森林公園(滑川町)になっているのが頼もしい。

さすが国立公園とあって、一度足を運ぶと、季節ごとに行きたくなるところだ。

直通運転は、飯能、森林公園までながら、乗り換えれば、その奥にはまだまだ開発の余地がたぶんにある埼玉県の観光の宝庫「秩父と奥秩父」が広がる。

この冬には、ほとんど知られなかった奥秩父にある荒川源流の岩清水が凍りついた「三十槌(みそつち)の氷柱(つらら)」(秩父市大滝)が脚光を浴び始めた。

ライトアップされた氷の芸術は幻想的で、多くのマイカー族でにぎわった。

春は羊山公園の芝桜に、美の山公園の桜。「埼玉県に桜の名所をつくろう」との発想から秩父市と「秩父音頭」の発祥の地、皆野町にまたがる蓑山(みのやま)に10年かけて約8千本桜を植えたもので、ツツジ、アジサイなども植え、花の名所になっている。

秋には、埼玉県最西端に近い中津峡のモミジの美しさは驚くばかりだ。

東武東上線、秩父鉄道寄りの長瀞は、岩畳や夏の「長瀞ライン下り」で昔からよく知られていて、ジオパークや一つ星ながらミシュランのガイドにも紹介されて、新しい名所作りにも力を入れている。

箱根のように広い湖も温泉もなく(鉱泉が多い)、日光のような歴史的建造物もないものの、秩父の自然にはもっと多くの観光客が訪れてもいい。

今回の直通運転の開始が、秩父を含めた埼玉西部の本格的な観光の夜明けなるように県も自治体も鉄道各社も知恵を絞ってほしい。 

JR浦和駅と周辺の新世紀

2013年03月17日 05時47分05秒 | 街道・交通

2013年3月16日、県庁所在地の表玄関なのに、かつて「列車が停まらない」とか「特急が停まらない」駅とからかわれたこともあるJR浦和駅が、ようやく名実ともに“埼玉県の首都”(上田埼玉県知事)としての体裁を整えた。

この日のダイヤ改正で、これまで通過していた湘南新宿ラインも、新ホームが完成したため、始発から全列車134本が停車するようになった。横浜まで直通で約55分で着く。

同じ日、県庁のある東口と、「パルコ」もできて開発が進む西口の間も、13年にわたる工事で、高架下に幅25mの東西連絡通路が全面開通した。

湘南新宿ラインに加え、JRと東武鉄道の直通特急「日光」「きぬがわ」「スペーシアきぬがわ」の上下8本も停車し、日光・鬼怒川エリアへの観光も便利になった。

湘南新宿ラインは、朝夕の通勤時間帯の混雑緩和のため、それぞれ1本増発された。

浦和駅は1883(明治16)年、当時の日本鉄道が上野―熊谷間を開業した際に開設された。13年で130周年を迎えた。

1932(昭和7)年、赤羽―大宮間の電化で省線電車が開通したものの、浦和駅には電車だけで列車が停車しなくなった。このため大宮以北から県庁へ来るのに、大宮で乗り換えなければならなかった。

「列車が停まらない県庁所在地」と呼ばれたゆえんである。

この事態は、1968(昭和43)年の赤羽―大宮間の3複線工事の完成で、列車が再停車するまで続いた。

浦和駅にはもう一つ問題があった。通り抜ける連絡通路が無いので、駅が「ベルリンの壁」のような形になって東と西口が分断され、浦和の都市づくりの大きな妨げになっていたのである。反対側に出るには、遠回りしなければならず、急ぐ人は入場券を買って、出るほどだった。

広くなった連絡通路を歩いてみると、自由に行き来できるので、東西浦和が一体化したことを実感できる。駅が障害物ではなく、東西を融合させる媒体となった。人の流れが変わり、21世紀の浦和づくりに貢献することになるだろう。

残念なのは、駅の東西連絡通路には東西の土地の高低差のため階段があり、「自転車お断り」になっていることだ。

せっかく、「ツール・ド・フランス」の誘致に成功するなど、自転車による町づくりを目指しているのに、なにか良い知恵は無かったのだろうか。

高架下には、この連絡通路のほか、駅南側の田島大牧線が幅25mに拡幅され、その南に幅8mの自転車・歩行者道が新設される。駅北側の階段のある幅10mの自転車・歩行車道は、自転車に乗ったまま通行できる緩やかなスロープに改善、そのすぐ南には幅10mの歩行者道が新設される。

合わせて5本の東西通路ができるわけである。

JR東日本は14年度開業を目標に、高架下計8600平方mに大型商業施設の「アトレ」や、西口の旧駅舎跡地に17年度完成見込みで6階建て駅ビルを新設する。西口にはまた、国道17号に至る県庁通りを、歩道をバリアフリー化、自転車レーンも設置する予定。

隣接する約1.8haの南高砂地区には、27階地下3階の高さ約99mのタワービル(4階までは商業と業務)が建設される。5階から27階は約520戸のマンションで1500人以上が入居する。15年度に着工、早ければ18年度に完成する。

浦和駅周辺には19の商店会があるという。全部が完成すると、川口駅前に劣らず浦和駅周辺の光景は一変するだろう。


百観音温泉 久喜市

2013年03月02日 16時53分00秒 | 名所・観光
百観音温泉  久喜市

埼玉県の広報誌「彩の国だより」(月刊)の「知事コラム」はいつも面白い。13年3月号は、「『ネガポ』で明るく」というものだったが、大笑いした。

「ネガポ」とは、英語の「ネガティブ(否定的)」な言葉を「ポジティブ(肯定的)」なものに言い換える「ネガポジ変換」の略語だそうだ。

女子高校生三人が考え出したもので、主婦の友社から出た約600例収録の「ネガポ辞典」が売れているという。

例えば、「いいかげん」は「おおらか」、「不幸」は「これから幸せになれる」、「おならが出た」は「健康的」といった具合だ。

この調子で行けば、人に悪口を言われても、くよくよせず発想の転換で明るく前向きに生きていける。ものにはすべて、裏(陰)があれば表(陽)があるからだ。

観光面では、文字どおり「無い無い尽くし」。頭が痛い埼玉県にはぴったりの辞典だろう。

13年1月末、貴重な経験をした。無いはずのものがあったのである。

北隣の群馬県は、「おんせん県」の名称をめぐって、大分県と競っているというのに、火山がないわが埼玉には、鉱泉(冷泉)はあっても、熱い湯が噴き出す本当の温泉はまずないものと思い込んでいた。

ところがどっこい。

県内唯一、57度の湯が1分間に千リットル自噴する全国屈指の日帰りの療養型天然温泉が、JR宇都宮線東鷲宮駅の西口から徒歩でわずか3分の所にあると、今ごろ知って出かけた。

ちょうど創業11周年感謝祭の終わりに近く、平日なのに、何か所もある駐車場は一杯。祝祭日には、駐車場はもちろん中も大混雑という。

なにしろ、メタンガスの圧力で1500mの地下から有り余る湯が噴出してくるのだから、濾過機などを一切使わず、内湯・露天全ての浴槽で100%の源泉を、加水加熱せず掛け流しで使っている。豊富な湯が常に浴槽に注がれているので、循環措置は無く、完全放流式。

火山に近く、山深く渓流もある、いかにも温泉らしい温泉地でも、掛け流しは今では少なくなっているのに、関東平野のど真ん中、田んぼの中で、掛け流し湯に入れるのだからうれしい。

火山帯はなくても、地下深くから湧く平地型温泉もあると専門書にもあるので、これはその代表の一つだろう。埼玉県向きの温泉である。

ここでは内湯より露天風呂の方が、はるかに大型で、広い。立ち湯(深さ1.3m、湯温45~6度)も、寝湯も、上から落ちるのではなく、ノズルで上から吹き付ける打たせ湯もあり、温泉気分を満喫できる。

「日本天然温泉審査機構」の調べでは、源泉、泉質、引湯、給排湯方式、加水、新湯注入率の6項目で、いずれも自然度・適正度が5つ星(優良)で、全国最高クラスの数少ない天然温泉だった。6項目全てで5つ星というのは、全国でも10数か所だそうだ。

溶け込んでいるミネラルが高濃度の「高張性」で、「日本有数の泉質を誇る贅沢な温泉」とパンフレットはうたっている。

元は太古の海の水だから、泉質は「ナトリウム塩化物強塩温泉」。塩素イオンとナトリウムイオンが最も多い。アワが浮き、いくぶん褐色を帯びていて、指を舐めてみると、さすがに塩からい。

神経痛、腰痛などの痛み、慢性消化器病、疲労回復などのほか、アトピー、アレルギー、花粉症にも効くという声もある。

女性の肌をしっとりスベスベにする、いわゆる「美人の湯」には、ナトリウムイオンとカルシウムイオンを含んでいる共通点があるとか。この湯にもカルシウムイオンも多いので、美肌効果もある。

「百観音」の名を冠した化粧水や酒、だんごやまんじゅう、構内に百観音を祀った堂もある。

100m掘るごとに3度(埼玉の場合は約2.5度とも)、地温は地表より高くなるというから、運に恵まれれば、熱くなった化石海水による「温泉県埼玉」も夢ではない。実際、他にも高温、自噴の温泉もあるようだから、訪ねてみよう。