風情漂う隠れ寺が点在し、爽やかな竹林も広がる洛西「大原野」付近を歩いてみた。 以前は洛東をメインに歩いたが、最近は所用にて洛西を訪れる機会が増えた。 京都は暑くて沢山歩いたわけではなく、「小倉山荘」で休憩した時に見つけた和歌をご紹介いたします。
一途 再会の時をつくりだす 一期一会の気持ち。
36歳という若さで他界した権中納言敦忠は、比叡山山麓に山荘を営むなど風流を好む歌人であったとの事です。 愛する人との逢瀬を成就させ、これで気持ちが薄れるかと思えばさもあらず。 ますます愛しさが募っていく気持ちの不思議さ、逢うほどに昂揚していく愛情もあることを、敦忠は詠みあげています。 この歌と同様、時と共にますます愛情が募っていくような関係こそが理想です。 『一期一会』の心、大切にしたいと考えます。
愛情 その想いの深さがにじみ出る歓び。
「小倉百人一首」の百首には、恋の歌が43首占めているそうです。 いつの時代も、だれもが心に抱くもっとも自然な感情であり、つねに共感とともに理解しあえるテーマなのでしょう。
平 兼盛は、愛する人を想う気持ちが高まれば高まるほど、その感情を隠しおおせなくなる人の心の難しさを詠みあげ、そこまで深く想い詰めている自分がいることに驚いています。
調和 思いやる心と応えようとする心が響きあう。
かつて奈良の都に咲き誇った八重桜が京の都へ献上された時、新人だった伊勢 大輔が、かの紫 式部から大役を譲られ、いざ献上の場で詠みあげたのが、この歌とのことです。 華やかさとめでたさを兼備し、八重と九重(宮中という意味)をかけた見事さに、時の権力者である藤原 道長の娘・藤原 彰子から返歌が詠まれるほど絶賛を集めたそうです。
後輩をひきたてようとした美しい紫 式部の配慮。 このような人が人を思いやる心には、とても大きな力が生まれます。 自分ひとりだけでなく、周りの人たちとも一緒に幸せに生きることを願う心を大切にしたい。
時流 伝統を忘れることなく、未来を創りだしていく。
絶世の美女と誉れ高い小野 小町は、13歳で都にのぼり、以後20年間宮中で活躍したそうです。
晩年の心境を吐露したこの有名な歌は、時の移り変わりの厳しさを慨嘆しつつ、だからこそ時をいたずらに浪費することなく精一杯生きることの大切さを教えてくれています。
感動 あふれ出す気持ち。
秋の山麓を燃えるように染めあげる紅葉は、見るたびに深い“感動”を呼び起こします。 詠み人である貞信公は、眼にした紅葉のあまりの美しさに感嘆するとともに「醍醐天皇にもこの景色をぜひ一目見せたいものだ」との想いを歌に託しました。
言葉に言い尽くせないほどの“感動”と出逢ったとき、それを一人の胸にしまい込むのではなく、愛しい人とも共有したいと願うものです。 それは私たち日本人が大切にしてきた思いやりの心でもあります。
これこそ私が写真を始めた考えの原点であります。
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