Credo, quia absurdum.

旧「Mani_Mani」。ちょっと改名気分でしたので。主に映画、音楽、本について。ときどき日記。

「華氏451」フランソワ・トリュフォー

2013-06-02 03:18:09 | cinema
華氏451 [DVD]
クリエーター情報なし
ユニバーサル・ピクチャーズ・ジャパン


華氏451FAHRENHEIT 451
1966イギリス/フランス
監督:フランソワ・トリュフォー
原作:レイ・ブラッドベリ
脚本:フランソワ・トリュフォー、ジャン=ルイ・リシャール
撮影:ニコラス・ローグ
音楽:バーナード・ハーマン
出演:オスカー・ウェルナー、ジュリー・クリスティ 他


トリュフォーの初の英語作品であり、ブラッドベリ原作の本作。
原作の方を読んだので流れでこちらも観てみました。

大部翻案されているけれども大筋はおさえているという感じです。
原作にあったスリリングな逃走劇を期待したけどそれは地味におさえられてました。
あと戦争というモチーフもばっさり落ちています。

原作とくらべてどうこう言うのは野暮なのですが、やはり戦争である種の壊滅があるという状況においてこそ、
愚行をのりこえて人類の英知が再び築かれるのだという「彼ら」の信念が一層映えていたことを思うと、ちょっと残念。
彼らの存在の重みのようなものが、映画のラストでは欠けていたかなと思います。


映画としてはですね、
冒頭の「出動シーン」でぐぐっと心をわしづかみにされましたw
あのチープ感がたまらん。チープなものの上に直立不動で何人も乗っている姿が、
そのあとも時折写るんだけれど、そのたびにしびれるね。

書物を禁止するという強権的な権力のありようが、60年代の社会での保守的な規制にからめて表現されていたのが興味深かった。
書物だけでなく、どうらや長髪も禁止されているらしく、保健省?みたいなのが街角で長髪の若者をとっつかまえてバリカンでぞりぞりしてたり、消防署(じゃないけど)のなかでも、シャツの第1ボタンを外している下っ端を署長がめちゃくちゃにとっちめていたりする。
一種のディストピアものなのだけど、そこでの強権が現代の保守的な抑圧とおなじなんだよっていう風刺的なアイディアなのだろうね。

あとは何回かでてくる焚書のシーンでは、原作と違い、時の話題作や彼らが影響を受けたと思われる小説など(ジュネ、ヘンリーミラー、ベケット、ディケンズ、サド、などなど)が目白押しで出てきては焼かれる。趣味感満載である^^
署長が秘密の図書室を見つけてモンターグに演説ぶつところで、「全部燃やしてやる~」とかなんとか言うときに手にした本がヒトラー「我が闘争」だったというのも、痛烈な皮肉である。
ダリの画集が風に煽られてページがどんどんめくれていくのをずーっと写したりしているし、カイエ・デュ・シネマに石油?がだばだばかけられたり(笑)
本を撮りたくてしょうがないという感じだ。

消防署(?)の赤い壁に青い回転灯の光が映ったり、ときおり赤いフィルターがさっとかけられたり、色使いがヒッチコックっぽいのも面白い。そういえば音楽がバーナード・ハーマンだし(7拍子の「出動のテーマ」(?笑)とかいい感じだ)
署長室に忍び込んだところに署長が現れちゃって、モンターグが気絶しちゃうところとかはなんとなくヒッチコックっぽいリズムだったし。
そういうサスペンスタッチを用いつつ思索的な(かつ若干コミューン的な素朴指向のある)エンディングに持っていくというところにトリュフォーの野心のようなものを感じなくもないが、実際はどうだったのか。

そういやモンターグの家で妻リンダがはまっている参加型テレビドラマ?で列挙された女性の名前は、ひょっとしたらヒッチコックの映画のヒロインたちの名ではないか??と思ったが未確認。(かくにんしろー)
マデリンっていう名前でそう思っただけだけど。



***

あのモノレールもすごいフォトジェニック。
ほんとにあんなのあるのか。あの昇降システムはちょっとびっくりだ。雨風があったら危険だよねえ。しかもあんな原っぱのど真ん中に止まるのかねえ?

妻リンダ(と教師クラリス)を演じたジュリー・クリスティの姿は、どうもどこかで見たことがあるイメージ。直感的に岡田史子のどれかの作品にこんな顔の女性がいたような気がするのだが、これも未確認。
彼女は『赤い影』とか『ナッシュビル』とかに出ているようなのだが、もちろんワタシは見ただけではわからんぜ。

『赤い影』といえば『華氏451』の撮影はニコラス・ローグ。

2つのカットでマーク・レスター坊やが登場するのも見逃せない。
「オリバー!」は1968年ということなので、それよりも前の出演ということになる。

原作はずっと詩的で手が込んでいると思うので、そちらもどうぞ。

華氏451度 (ハヤカワ文庫SF)
クリエーター情報なし
早川書房




@自宅DVD
コメント (2)
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