Credo, quia absurdum.

旧「Mani_Mani」。ちょっと改名気分でしたので。主に映画、音楽、本について。ときどき日記。

「猫と生きる。」猫沢エミ

2013-06-11 00:20:53 | 猫沢エミ
猫と生きる。
クリエーター情報なし
辰巳出版



猫沢エミさんの新刊「猫と生きる。」読みました。

愛猫ピキさんとの出会いから別れまで、その後の新しい家族ピガちゃんとユピちゃんとの出会い、と、猫との生活を綴ったエッセイと、合間に猫と暮らす上で必要なあるいは生活を豊かにするような情報ルポを差し挟んだ本です。

まさにタイトル通り、猫と正面から向き合って「生きる」姿がここにはあって、感動の一言です。
これは一つの生き方についての本であって、その意味ではたとえば「罪と罰」みたいな(適当に挙げましたが^^;)小説などと、ワタシが思うに全く同格の質を持った本になっているのです。
褒めすぎでしょうか?そんなことはないと思いますが。



猫を独立した対等の人格…猫格として認め、溺愛でもなく放置でもなく尊重し、猫の人生…いや猫生を飼い主の思惑で歪めたり不幸なものにしたりしてはいけないという姿勢は、それは猫沢さんの生きる上での原理のような考え方のひとつであって、猫のことに限らず人との関係や仕事のスタンスなどでもそのような原理を貫こうと努力する、そんな生き方が書かれている。

それは猫沢さんの生きてきた環境で培われていたものであるとともに、初めての飼猫ピキさんと暮らす中で意識され、強化された生き方でもあることもわかる。そういう成長の物語でもあるところも感動的。

拾って育てるところから、日々のごはんとか病気への対応とか、引っ越しとか、パリ暮らしの際の決断とか渡航手続きとか、最期を看取ることとか、そういう猫との暮らしに、迷い悩みつつも心を決めて全力で取り組む姿には、自ずと猫沢さん自身の生き方の姿がにじんできて、読んでいるこちらの方も居住まいを正さずにはいられない。じゃあ自分の人生はどうしようか?と思いながら読み進める感じです。

と言っても堅苦しいものでは全くなく、いろいろな出来事に悩み試行錯誤する猫沢さんに寄り添って、はらはらはワタワタしつつああこんな決断をしたんだ~と涙しながらほっこりしながら読む本です。猫飼ったことがある人なら、わかる~と共感するところ多数だし、猫と無縁の人でもへーこんなことがあるのかーと十分興味の持てる内容だと思います。

****

猫との生活が書かれているのだけれど当然猫沢さん自身に起こるあれこれも書かれていて、特に印象に残ったことのひとつは、まだピキさんを拾う前、交通事故の前に占い師さんと出会う話で。
青い顔して占い師さんが師匠のところへ行けと言ったあとに、駅の券売機から出てきたお釣りにその占い師の名前が書かれていたという逸話はそれ自体十分すぎるインパクトがあるのだけれど、ワタシが驚いたのは、そんなシンクロニシティに出会いながら、占に従ったら負けだと思い、実際に酷い交通事故にあっても、生き延びたことを意識した時に「賭けに勝った」と思ったという猫沢さんの思考。
これは感心というか、面白い考えだと思いました。困難にであった時(や、まあそうでもない時も)何かに支配されて生きるようになるかそうでないかは、こういう考え方のように自分で選び取ることができるのだなと。


それから、ワタシは割と呑気に猫沢さんの次のライブまだかなーとか、ライブに行ったら握手とかしてもらってニコニコしてたんですけど、その頃の猫沢さんの裏舞台は想像以上に凄まじかった!新曲ないのかなーとか思っていた自分を、まあ恥じる必要はないけれども、能天気だなーと思った次第です。
お客さんには裏事情を感じさせないプロ意識ということでしょうね。


あとは、挟まれるルポがとても面白く猫飼いには参考になることばかり。
パリの猫暮らし事情や、獣医さんや、ペットショップや、トリミングやるところとか、里親探しNPOとか、猫専門動物園とか。
読んでいて変化もあり、とてもよい企画の勝利だと思います。



ということで、ただの猫愛本ではありませんよ~
(あ、いや、本当の猫愛本というべきか)


コメント
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