Credo, quia absurdum.

旧「Mani_Mani」。ちょっと改名気分でしたので。主に映画、音楽、本について。ときどき日記。

「テス」ロマン・ポランスキー

2013-07-06 00:11:03 | cinema
テスTESS
1979フランス/イギリス
監督:ロマン・ポランスキー
原作:トーマス・ハーディ
脚本:ジェラール・ブラッシュ、ロマン・ポランスキー、ジョン・ブラウンジョン
撮影:ギスラン・クロケ、ジェフリー・アンスワース
音楽:フィリップ・サルド
出演:ナスターシャ・キンスキー、ピーター・ファース、リー・ローソン


ポランスキー監督の文芸大作。
ナタキン(とは最近はあまり聴かない言葉だね)の美しさとちょっぴりぎこちない演技がすばらしい名作。
つまり彼女のあの美しさを写し取ったという奇跡がこの映画を名作にしているのだよよよ。

いちごを食べさせるところとか、
ストーンヘンジに横たえてみせるところとかは
監督のナタキン萌えをよく感じさせるシーンであり、
今観ると「そうなの?」と思われてしまうのかも知れないが、
当時はそうだったのだ。
多分今でもそうだ(断言)。

しかし彼女はあんなにかわいい声だっただろうか?
芯に強いものを持つ女性のイメージがありもうちょっと低い声を想定していた自分の固定観念は心地よく打ち破られて、いい感じやねん。
近いうちに『パリ・テキサス』での彼女の声を確認してみたい。



しかしあれですね、うちの奥さんがよく言うんだけど、美人には若いうちから変な男どもが寄ってきてろくでもないのとつきあうはめになり不幸になると。
まさにテスはその類いの人生なのだ。
最初のダーバヴィル(偽)の若旦那は悪いヤツではないんだろうけどちょっと気色悪いし征服欲があっていけすかん。
しかし一番の問題は2番目の男エンジェル(名前からしてどうよ)だろう。
彼の身勝手な虚栄がなければ、テスはあそこで幸せに暮らせただろう。
自分の過去は許してもらおうと思ってたくせに、テスの過去は許せないとか、ああいう身勝手さというのは、あの時代にはある種の典型だったのだろうかね。

そういう人の心のありようの移り変わりを感じ取れるというところが、昔の小説などを読む楽しみのひとつだよね。
自分が今ここで持っている常識や自分なりの考えというものが、決して絶対的なものではないこと、時代や環境によって人の考えは変わり得るんだということを学ぶのが楽しみだよね。

ということで、テス原作も読んでみたいです。
(というかあのイチゴとストーンヘンジが原作に出て来るのか確認したくもありw)

***


荒野を泥だらけになって歩くシーンなどは、『ポランスキー初めての告白』での話からすると、ポランスキーの幼年期の体験を反映したものなのだろうと思う。

終盤テスが屋敷から逃げ出し、召使がことに気づくまでのシーンが好きだな。
召使の視線と天上のシミ。

あとは、全編季節感のある画面でとてもよい。
5月の風や秋の薄日が感じられる。

ストーンヘンジなどはやはり大きいスクリーンで観たいね。
リマスターしてリバイバルしないかな。

タイトルロールの最後に「シャロンへ」と書かれていて、しみじみとする。
薄命の女性という題材故か(想像)
ポランスキーがアメリカを出たのが78年だと思うので、ヨーロッパでようやく落ち着いて映画を作ったときにシャロンのことを思い出したのかと思うとまたしみじみする(想像)

wikipediaによるとポランスキーは未成年のナスターシャとも関係していたということだけど、ナスターシャは最近になって、父親にもあれこれされていたと告白していて、上で書いた美人の不幸を実生活でも託っていたのか?な?

撮影のジェフリー・アンスワースは本作撮影中に亡くなったとか。


@自宅DVD


テス 上 (岩波文庫 赤 240-1)
クリエーター情報なし
岩波書店

テス 下 (岩波文庫 赤 240-2)
クリエーター情報なし
岩波書店
コメント (2)
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