Credo, quia absurdum.

旧「Mani_Mani」。ちょっと改名気分でしたので。主に映画、音楽、本について。ときどき日記。

「ヒトラーのためのソナタ」アレクサンドル・ソクーロフ

2008-02-10 21:27:55 | cinema
ヒトラーのためのソナタ
1979ソ連
監督:アレクサンドル・ソクーロフ
脚本:アレクサンドル・ソクーロフ
音楽:クシシュトフ・ペンデレツキ・ヨハン・セバスチャン・バッハ


ヒトラーの映像と音声の秀逸なコラージュ。
演説し談笑し休息するヒトラーの映像に、シンクロしない彼の音声、バッハの無伴奏フルートソナタ、ペンデレツキによる不安な音楽、意識下をなぞるようなノイズ。
ドラマ性はなく、ひたすら残された映像と音像による独裁者の肖像。
そうだこれは現代の肖像画だ。時間と記憶と共示を動員する現代メディアによる肖像画。ヒトラーとバッハとペンデレツキ、それぞれの指し示すイデオロギーや文化的コノテーションがミックスされて、ほとんど悪酔いのような気分にさらされる。
直接示されなくても、歴史の悲惨と無常/無情を思い知らされる。
10分程度の作品だが、ずっしりと重い。

***

同様の素材でたとえば「裕仁のための奏鳴曲」は作れるだろうか。四方田氏の著作によると、ソクーロフは「太陽」を撮る際に、多くの記録映像を観たそうである。そして、戦争終盤にかけて映像がまったく残されていないことを知り、「太陽」を撮る確信を得たという。また、遺された映像はいずれも無表情に軍服にくるまれた儀式の1コマであるとも。
日本版ソナタは難しそうである・・・

と思ったら、裕仁の記録映像をモンタージュして軍服から背広姿へ移行していく天皇像を描いた作品が日本にあるという。(「日本の悲劇」1946亀井文夫)そういう作品を「ヒトラーのための・・」と併映するような企画もあってよい。
(と思うが、禁忌に触れるようでなかなか実現は難しいのかもしれない。っつーかホロコーストの独裁者と並置ってのも過激かも。)



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コメント (2)
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