Credo, quia absurdum.

旧「Mani_Mani」。ちょっと改名気分でしたので。主に映画、音楽、本について。ときどき日記。

エンキ・ビラル「ゴッド・ディーバ」

2006-06-17 17:22:16 | cinema
ゴッド・ディーバ

ポニーキャニオン

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2004フランス
監督・脚本・原作:エンキ・ビラル
出演:リンダ・アルディ、トーマス・クレッチマン
シャーロット・ランプリング、フレデリック・ピエロ
ヤン・コレット

フランスの漫画?作家エンキ・ビラルによる監督作品
とっても独自な世界像をもった作家だと思う。
その奇想はある意味ブレードランナーもマトリックスもしのぐ
(ってマトリックスは観てないけどさ(笑))
と同時に、悪趣味度もデヴィッド・リンチの「デューン」をしのいでいるかも。

どうやら神のフリをした(いやほんとうに神なのか?)エイリアン、マルス
事故で囚われの身から解放された政治犯ニコボル
マルスは乗り移れる体をもとめて7人くらいをぶち殺したのち、ニコボルに出会う。
ニコボルには乗り移っても大丈夫らしい。
マルスはニコボルの体をかりて、ミュータントの青い髪の女ジルを誘惑し、
神の子を宿そうとする。
(ようするにレイプなのだが。)
で、その時はマルスに支配されちゃうニコボルは、我にかえったときに、
マルスに詰め寄るのだ。このふぁっきんレイプ野郎!って。

ああ、なんだか変なストーリーになってしまう(笑)

ジルは、ジョンという、ジルを地球に送り込んだ人物からクスリをもらっている。
そのクスリは、ミュータントとしての過去の記憶を消し去り、
人間の女として生きてゆくために処方されたものらしい。
ジルはクスリを飲み続ける。
一方でニコボルとの関係を深めてゆき、人間の女としてのアイデンティティを形作ってゆく。

・・・のかと思いきや、最後ではジルの「治療」が完結するとともに、全ての記憶がさらになって、
誰の子ともしれない子を産む。
1年後、エッフェル塔の上で二コボルはジルに出会う。
初対面のように振る舞う二人の間に、浮かぶゆりかごで揺れる青い髪の子供がいる。

いや~さっぱりすっきりしないストーリーではありますが、
主要な登場人物以外はCGだったり、都市の交通網がアナクロなのか最先端技術なのかわからなかったり、
ニコボルの登場が血まみれだったり、ジルの視野がとっても幻想的だったり、
ジンベイザメの皮を剥いたような怪物はでてくるわ、首だけ鷲のホルスの喉のところがセリフに合わせて動くわ、
なんといいますか、ディテールがものすごく独特なグロテスクに貫かれているわけです。

いろいろと世の中の感想を調べてみると、とんでもない失敗作!とかけちょんけちょんな感想が目立つのですが、
これは、ある意味自然な感想かもしれません。
とくにSF超大作を期待した場合には、そのストーリーのわからなさ、ディテールの気色悪さ、特撮やCGの平板さにがっかりするでしょう。

でも私は、この奇想を貫くヨオロッパ人の映画をしっかり支持します。

え~と、おそらくはフランスのバンド・デシネ事情をある程度知っているとより楽しめるのでしょう。
「バットマン」をアメコミを知る眼で観るのと同じように。
(という私は、両方ともに疎いのでありますが・・・)

調べてみると、このゴッド・ディーバもバンド・デシネをベースにしたものらしく、
原作者は監督自身。
映画に出てきたワン・シーンの画像もありました。


というわけで、青い髪のジルのか弱さと美しさと食生活にみとれながら、
104分をあっというまに観続けることができました。

エンキ・ビラルの作品は邦訳版がありますね。
ああ、ニコボルじゃなくてニコポルだったみたい。
ニコポル三部作〈1〉不死者のカーニバル

河出書房新社

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ニコポル三部作〈2〉罠の女

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ニコポル三部作〈3〉冷たい赤道

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あと、近未来のニューヨークを舞台にしているんだけれど、
そこには異常に権力を発達させた大企業が警察以上に暴虐の限りをつくしていて、
しかもその企業が医療関連企業だというところが、なかなかぞっとさせる設定でよい。
遺伝子工学やらナノテクノロジーだのをふりかざし、
不法侵入ミュータントの捕獲を行っている企業。
う~ん、気味が悪い。

ジルを救う女医はシャーロット・ランプリングだったのね。気づかなかった。年とったね。
コメント (10)
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