トマトの摘芯作業がまだ終わるか終わらない頃、とても頭の中は舞茸どころではなかったのだが、ちらほら「あの人は20㎏採ったらしい」だの「もう遅かった…」だの聞くと、もう気が気ではなかった。
居ても立っても居られず、摘芯が終わった瞬間、つまり3日前に山を見てきた。
雨は降り止まない。山はガスの中だ。
ただでさえしっとりの山は、この雨天で乾いたものを片っ端から濡らす。カッパなしでは歩けない。
堂々と聳えるブナの大木。雨水が幹を伝う。
よく見ると「大正四年…」の文字が。100年以上前から、変わらず自分もこの山に関わっていることを嬉しく思う。
目指すはナラの巨木。今年の山はブナが不作だが、ミズナラは沢山のドングリを成らしていた。
何本か見て回るうちに、まだ若い舞茸が一株あった。
さらに別の大木へ向かう。雨本降りの中、カッパの中も汗と雨でずぶ濡れだ。急斜面を駆け上り降りを繰り返し、だいぶ疲労を感じたころ。
目指す大木を上目に見て息を切らしながら近づくと、根本に2,3株の若い舞茸が見えた。やった!と一息ついて近づこうとした時、黒い物体が大木の裏側で動いた。大きさまではよく分からなかったが、熊だ。どうやら、私が近づく前まで木の上でドングリを食べていたようだ。
足音とともに灌木がゆさゆさ揺れている。まずいなあ、と思い熊スプレーの安全ピンを外す。
気配は感じられなくなったが、根本に近づくにも突然襲われるかもしれないので、ここは舞茸を諦め退散することにした。
そして三日後の今日、再び取り損ねた舞茸を狙う。今日も雨降り…。
三日前、熊とニアミスしたナラの大木へ向かう。今度は、だいぶ下のほうから自分の存在を積極的に知らせようと、
勢子(せこ)声を出したり、声のトーンを変えて複数人の雰囲気をだしたり、あたかも犬を連れているかのように、犬を呼ぶ声(なぜか、ジョン!)&犬の鳴きまねをして徐々に近づいた。山で独り声優ごっこ。こういうの、嫌いではない。
熊の気配はない。
そして、根本を見回すと…
舞茸まつりでしたー
舞茸は背負いかごに溢れんばかりに。結局のところ、あの熊のおかげで小さい株を取らずに済んだことが、今日の舞茸まつりにつながったのでした!
今年は一つの大木で、11㎏の舞茸を頂きました。
山の神、そして熊に感謝…。
今年は秋雨が長いせいか、この辺りでは舞茸豊作みたい。
舞い!まではいかなかったけど、しっかりガッツポーズでしたよ~
この調子で、トマトも最後のボーナスステージは豊作!で終わりたいです!