(写真は先日の秋田岩手テレマークツアーより。)
ああ、秋田岩手県境のたおやかな山並み。シールを着け外しなんて煩わしいことしなくていい、ウロコ板ツアー…。
うふふっ、あはは!と軽快に歩き・滑り・転び、テレマークの本質を存分に楽しめる環境にうっとり…。
南会津にもどり、ここ数日その余韻から抜けられずにいた。
そうだ!会津駒から三ツ岩界隈もたおやかな山並みがあるじゃないかっ!
あの軽快なウロコ縦走を企て、ひとまず会津駒を目指した。入山してすぐの沢沿い林道を、登りでご一緒した友人のニッシーさん一行とおしゃべりしながら軽快に進む。
と、最初の30分は軽快だった…。
ヘアピンカーブからの急登は想定内ではあるが、覚悟はしていた。
ウロコは効くはずもなく、持って来たくはなかったが念のため持ってきたワカンを履いて、板はAフレームで担ぐ。
一泊二日を予定しているのでザックは15~16キロ。それに板をかついでいるのでそれ以上…。
ほんとにウロコ縦走って軽快なのか…。
スタートしてから最初の2時間で、うきうき会津駒ウロコツアー!に疑念が生じ始める。
くそみたいな急登を終えヘリポート尾根付近から再びウロコ板を履いて登りだしたが、濡れた腐れ雪にウロコは度々効かず何度もずる剥ける。
ウロコツアーなのでシールは持ってきてない。ウロコツアーにシールは要らない!ここはこだわりたい。
標高1,500m付近からガスの中になった。気温は0℃。上部では風の唸りが聞こえる。
強風と濃いガスで早々と登頂を断念して戻ってくるスキーヤーや登山者もある。
本日と明日の天候予想から、樺太低気圧を中心に日本海から新潟・南東北に回り込む気圧の谷が連続することは分かっていた。
ただ今日は午前中ひとつの谷が通り過ぎ午後から回復するともくろみ、諦めることは考えない。
標高2,060mの駒の小屋に到着。気温ー1℃、南西の風はそれほど強くはないが、ガス濃く視程10mほど。
ここまで4時間45分。標高差1,100m。やっとうきうきウロコツアーの舞台へやって来たのだが、天候が悪い。
まだ12時なので、小屋の影で風を避けながら待つことにした。ちなみに小屋は使用不可。
1,300mのヘリポート付近より上は、この板に着けているバンド式クランポンSKEATSオリジナル60㎜が頑張ってくれた。
ウロコツアーにシールを持たないことにこだわりたい自分は、この軽くてかさばらないクランポンが強い味方だ。
午後1時過ぎまで待ったが回復せず。当初予定していた今日の三ツ岩小屋までの縦走は断念…。
ひとまず、この付近で雪洞泊して明日のチャンスをうかがうことにした。
掘りながら考えた。この会津駒界隈でウロコツアーを楽しむためには、5時間近くのハイクアップ&標高差1,100m以上の労力を掛けなければならないこと。秋田岩手県境エリアの場合、スキー場トップまたは2時間程度のハイクアップで普段着気分で楽しめちゃうこと。
やはり会津駒~三ツ岩界隈のうきうき軽快ウロコツアーは幻想なのか…。
そんなぶつくさ言いながら昭和の炭鉱夫のように黙々掘っていたら、なんと外では一気にガスが抜けてきたではないか!
素晴らしい…。
何度も見る会津駒ではあるが、このような劇的な姿の表し方はまるで「お前、秋田岩手にうつつ抜かしてんじゃねえぞ!」
と魅力をチラつかせられた気分。地元の山に痛く感動させられたのでした。
下界もすっかり見通しがいい。
陽もすっかり傾き、明日の予想外の好天を夢見て雪洞にもぐり込んだ。
ウイスキーをちびりちびり、定番の辻まことの「山からの絵本」を読んで時間をつぶす。
酒と本も欠かせないが、ラジオも欠かせない。山では異常に生活リズムが前倒しになるので早ね深夜起きになってしまう。そんな時はNHKラジオ深夜便が欠かせない。
夜中、家に泥棒が入り出くわして口論&格闘する夢を見た。おそらく雪洞内で迷惑な喚き声を上げていただろうが、共有する人もなく暗いうちに目が覚めた。
外に出ると今朝も濃いガスの中。昨夜には小さい低気圧が抜けたらしく、かなりの強風だったようだ。雪洞の外にはアオモリトドマツの針葉が散らばめられていた。
往生際良く、朝から下山することにした。
雪洞付近は小雪程度だったが、標高を下げるとすぐに雨となった。ウェアは濡れてべったべただ。
1,600mのブナ森まで来たあたりでガス帯を抜けた。しかし、すっかり雨模様。
ぐっさぐさの腐れ雪をがんばってテレマークターンしてみたが、さすがにT4ブーツに15、16キロのザックでは太刀打ちできなかった。
まったくレッスン受講生やガイドゲストさんにお見せ出来ないほどの転がり具合。
身の危険を感じ、ワカンに履き替えた。やっぱり会津駒界隈のウロコ板ツアーにはワカンは必須かなあ…。
林道からは再びウロコ板に履き替え、踏み固められた林道を見違えるようにすいすいと下りてきた。
その先には逆光の石碑と「お疲れさまで…」。
悪天候は仕方ないが、どうも幻想を打ち砕かれて、負けて帰ってきた敗北感。煮え切らない31日の朝でした…。
帰り道、畑に久しぶりに立ち寄ると雪はほとんど消えていました。
さ、あとは熊狩りもしながらトマト作りの準備もしなければですね!