読売新聞社の経済再生に向けた5項目の緊急提言は、まだ物足りない

2010年05月07日 21時05分36秒 | 政治
◆読売新聞社が5月7日付朝刊で経済再生に向けた5項目の緊急提言を掲載している。鳩山政権が国家戦略担当相を設け、政権樹立から8か月を経過していながら、明確な国家戦略を国民に提示できないのを見て、イラつき、お節介にも報道機関の節度を超えて、模範答案を示した感がある。
◆提言は、①マニフェスト不況を断ち切れ②コンクリートも人も大事だ③雇用こそ安心の原点④内需と外需の二兎を追え⑤技術で国際競争を勝ち抜け-という5つの柱からなっている。いずれもごもっともな提言ばかりである。しかし、失礼ながら、どれもこれも、陳腐の憾みを拭えない。斬新さに欠けているうえに、パラダイムシフトが進行中の国際社会のなかで、どう見ても日本経済を再生させる決め手にはなり得ていない。はっきり言えば、新聞記者の机上の空論の域を出ていない。
◆①マニフェスト不況を断ち切れ-現在の不況は、日銀から都市銀行に流れる資金が、国債に回され、国民個人金融資産は預貯金されてフリーズになり、日本全体の資金が還流していないためにおきているのであり、不況脱出には、カネ回りをよくしてやることが先決である。子ども手当は、子どもを持つ家庭の可処分所得を増やす効果が期待でき、単なるバラマキとは言えず、不況は、民主党のマニフェストのせいにするのは、短絡的である。
②コンクリートも人も大事だ-7日朝のテレビ朝日の番組「スーパーモーニング」で玉川徹記者がフランス・バリに飛んで取材した成果を「これがハコモノ行政だ」として報告していた。このなかで、日本で建設された4000を上回る博物館の多くが廃止されて、巨額の負債を残して無残な姿を晒しているのに対して、パリでは、古い建物から最新のオフィス街の建物までが、調和よく建設されていて、壮大な文化財となり、年間7000万人の観光客を呼び込む資産になっていると報道していた。コンクリート行政を根本から改善しない限り、国の借金はますます膨大になるばかりである。
③雇用こそ安心の原点-日本において、雇用機会は、決して少なくなっているのではなく、本当に生涯をかけて取り組める職業を見つけられず、偏差値や成績至上主義、見栄や外聞優先の生き方を追い求める若者たちが増えている。雇用問題というよりは、ニートや派遣社員の問題は、教育問題である。
④内需と外需の二兎を追え-⑤とも関連するけれど、外需を増やそうとする場合、最先端技術を駆使した「良い製品」を買える層の大多数は、富裕層・中流階層ではなく、低所得層である。高度な機能がなくても、所得者相応に満足できる安価な製品を大量生産して売れば、大きな外需となる。
⑤技術で国際競争を勝ち抜けー日本の得意技であるだれにも真似のできない高度な製品を製造し、富裕層・中流階層向けに売るのは、もちろん、低所得層向けの製品を人件費をかけずに低コストで大量生産する技術を開発すべきである。発想の転換が求められる。
◆「景気を押し上げる5つの基礎的条件」を揃えた吉田茂、池田勇人、中曽根康弘という3人の首相の成功体験を改めて検証し、これを次の経済成長戦略の立案に活用すべきである。この点で、読売新聞社の提言は、まだ物足りない。 
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