漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符「御ギョ」<ひざまずいて祈る>  と 「禦ギョ」「卸シャ」

2021年01月21日 | 漢字の音符
 ギョ・ゴ・おん  彳部

解字 甲骨文字はひざまずいた人が杵形の信仰対象物に祈っているかたち。人に降りかかる災厄をふせぐ祈りで禦ギョ(ふせぐ)の原字とされる。杵形の信仰対象物は二種が描かれている。金文第1字は杵形の中央がへこんだ新しいタイプ。第二字は杵形の上部ふくらみが横斜めの「𠆢」に変化し、彳(ゆく)と止(あし:あるく)が付いた。「彳+止(あし)」は足で進む意であり、杵形の信仰対象物は貴人の動きを示す形に変化し、天子と諸侯の行為や所有物に添える敬語の意味になった。字形は金文の止が、篆文で杵形の下につき、現代字の御へと変化した。
 なお、御の発音ギョは馬をあやつる馭ギョに通じ、金文の時代から馬や馬車をあやつる意や、その仕事をする官名などの意になっている。
意味 (1)天子と諸侯の行為や所有物にたいする敬語。「御幸ギョコウ・みゆき」(天子の外出。行幸)「御衣ギョイ」(天子の衣服)「御ギョジ」(天子の印)「御物ギョブツ」 (2)[国]おん(御)。お(御)。ご(御)。尊敬または丁寧の意を表す語。「御意向ごイコウ」「御菓子おカシ」「御社おんシャ」 (3)馬や馬車をあやつる。あやつり使いこなす。「御者ギョシャ」(①馬や馬車をあやつる人。②従者)「制御セイギョ」「統御トウギョ」 (4)官吏。「御史ギョシ」(中国の官名。時代により役割が異なる)「女御ニョウゴ」(女官) (5)ふせぐ。まもる。「防御ボウギョ」(=防禦)

イメージ
 「ひざまずいて祈る」(御・禦)
 「その他」(卸)
音の変化 ギョ:御・禦  シャ:卸

ひざまずいて祈る
 ギョ・ふせぐ  示部
解字 「示(祭壇)+御(ひざまずいていのる)」の会意形声。御の甲骨文は人に降りかかる災厄をふせぐため杵形の信仰対象物に祈る形。そこに示(祭壇)をつけて、ふせぐ意味を強調した字。災いから身をふせぐ、さらに敵から身をまもる意となった。
意味 (1)まつる。祭って災いをふせぐ。 (2)ふせぐ(禦ぐ)。まもる。「防禦ボウギョ」(=防御)「禦戦ギョセン」(ふせぎ戦う)「守禦シュギョ」(まもりふせぐ」

その他
 シャ・おろす・おろし  卩部
解字 御の字から「彳(ゆく)」を取り去って作った会意文字。御ギョは本来の意味のほか、馭ギョに通じ「馬をあやつる」意味があるが、そこから彳(ゆく)を取り去った卸シャは、「馬をあやつるのをやめる→馬をとめ荷物をおろす」意味となる。
意味 (1)[国]おろす(卸す)。荷物を下におろす。「棚卸たなおろし」「積卸つみおろし」 (2)[国]おろし(卸)。商品を問屋が小売業に売り渡すこと。「卸値おろしね」「卸売おろしうり」 (3)(束縛を)解く。のがれる。ぬぐ。「卸責シャセキ」(責任をのがれる)「卸頭シャトウ」(婦人が髪飾りをはずす) (4)おちる。「凋卸チョウシャ」(おちぶれておちる)
<紫色は常用漢字>


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