漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符 「伏フク」 <ふせる>  と 「袱フク」

2022年01月07日 | 漢字の音符
 フク・ふせる・ふす  イ部

解字 金文は、人の後ろの下方に犬を描いた形。意味は分からないが、史伏尊という器に「史伏が作る」とあることから姓か人名と思われる。篆文は「人+犬」の会意。後漢の[説文解字]は「司(=伺う)なり」とし、犬が人の様子を伺う、とするが納得できる説明ではない。[字統]は「墓で人を収めた棺の下に殉死させた犬を埋葬した殉葬の形」とする。伏流水や潜伏など、地下にもぐるイメージの熟語があることを考えると、金文の解字として独創的だと思われる。こうした説も念頭に私は『「イ(人)+犬(いぬ)」の会意。犬が人につき従い、飼い主の横で姿勢を低くしているさま、犬が伏せている姿を人にも及ぼしていう。また、犬が人に服従する意となる。さらに、転じて伏せてかくれる。ひそむ意味ともなる』との解字としたい。
意味 (1)ふせる(伏せる)。ふす(伏す)。うつむく。「伏臥フクガ」(ふす。ねる。伏も臥も、ふす意) (2)したがう。服従する。「屈伏クップク」「伏罪フクザイ」(罪に伏する) (3)ふせてかくれる。ひそむ。「伏兵フクヘイ」「潜伏センプク」「伏流フクリュウ」「伏魔殿フクマデン」 (4)姓のひとつ。「伏羲フクギ」(古代中国神話に登場する神または伝説上の帝王、文化をはじめてつくった存在として語られる) (5)地名。「伏見ふしみ」(京都市南東部にある地名。伏見区、伏見稲荷、伏見山(明治天皇陵墓)、などがある。語源は断層崖などの上から伏して見る(俯瞰する)意らしい。すると京都の場合、宇治・巨椋池を俯瞰できる伏見山が語源としてふさわしい。)

イメージ
 「ふせる」(伏・袱・茯・鮲)
音の変化 フク:伏・袱  ブク:茯  こち:鮲

ふせる
 フク・ふくさ  衤部
 
進物を載せる盆の上に掛けた袱紗 
【京都西陣】織屋ぼちぼちブログから
解字 「衤(ぬの)+伏(ふせておおう)」の会意形声。物の上にふせる(おおう)ぬの。物をおおいかくす布をいう。
意味 ふくさ(袱)。絹などの小形のふろしき。「袱紗フクサ=袱」(①進物などの上に掛ける小型のふろしき。②茶の湯で使う絹布)
 ブク・フク  艸部

ブクリョウ(茯苓)「生薬図鑑」(大正製薬情報サイト)より
解字 「艸(くさ)+伏(ふせる)」の会意形声。地中に伏せている植物(菌類)の意。
意味 「茯苓ブクリョウ」に使われる字。茯・苓ともに地中にある根を利用する生薬を意味する。赤松や黒松の切り株から3~5年を経た根の周囲の土中に生ずるマツホド(松塊)の菌核の外装を除いて乾燥させたもの。鎮静、利尿薬として、多くの漢方薬の要薬として使用される。
 なお、苓レイ・リョウはマメ科カンゾウ属の多年草。根は赤褐色で甘根・甘草とよび生薬として鎮痛・鎮咳薬剤として使われる。
鮲[国] こち  魚部

マゴチ(ウィキペディアより)
解字 「魚(さかな)+伏(ふせる)」の会意の国字。砂地のなかに伏せるようにして生息する魚で、コチをいう。
意味 こち(鮲)。鯒とも。上から押しつぶされたような平たい体と大きなひれをもち、海底に腹ばいになって生活する海水魚の総称。口は大きく尾は細い。ネズミゴチ、マゴチ、メゴチなどがいる。 
<紫色は常用漢字>

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