漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符「黹チ」<ぬいとり・刺繍をする>と「黼フ」「黻フツ」

2022年01月31日 | 漢字の音符
 チ・ぬいとり・ぬう  黹部

解字 甲骨文は巾(きれ)に刺繍(ぬいとり)をした形の象形。第1・2字とも糸を通した針の動きと縫目を描いている。金文1・2字とも縫目と針の進行状況だが、第2字の上部に4つの縫目がある形が、篆文で「ギョウの上部+敝ヘイの左辺」のかたちになり、現在の黹になった。
覚え方 
(ギョウ)の上と(ヘイ)の左で
(ギョウ)の上と、ハ巾(キン)
意味 (1)ぬいとり(黹)。刺繍をする。刺繍をした衣。「鍼黹シンチ」(裁縫や刺繡などの針仕事。鍼は針) (2)ぬう(黹う)。刺繍をする。
参考 黹チは部首「ち・ぬいとり」になる。黹部の主な字は以下のとおり。

 フ・ホ  黹部

解字 「黹(ぬいとり)+甫(フ)」の形声。フは斧フ・おのに通じ、斧をかたどった刺繍をいう。天子が祭りごとをするときの衣装に刺繍された十二章紋のひとつ。
意味 (1)天子の祭礼衣装のなかの斧をかたどった刺繍。また、その衣装。「黼黻フフツ」(①(斧)と(背中合わせ弓)の刺繍紋が入った大礼服。②美しい文章のたとえ)「黼座フザ」(天子の御座所。天子の座の後ろに黼紋の屏風があったため)
 フツ・ホチ  黹部

解字 「黹(ぬいとり)+犮ハツ(とりのぞく)」の会意形声。犮ハツは犬にノを加えて犬を犠牲にして神にそなえ災いを取り除くかたち。フツは災いをとりのぞく黹(ぬいとり)の意味で、弓を背中合わせにした模様の黹(ぬいとり)をいう。左右に弓を背中合わせに配し、左右の邪悪を弓で祓う意味がある。天子が天を祭る祭礼で着る衣装の12章の一つ。発音は、ハツ⇒フツに変化。また、フツ(ひざかけ)に通じ、ひざかけをいう。
意味 (1)天子の礼服の模様。弓を背中合わせにした図章の黹(ぬいとり)をいう。また、その礼服。「黻衣フツイ」(古代の祭礼服)「黻冕フツベン」(①斧の形をぬいとりした礼服と礼冠。②古代の礼装) (2)ひざかけ()。礼装用のひざかけ。

皇帝十二章とは
 古代の中国および東アジア諸国の王・皇帝の礼服である袞衣(コンイ)に用いられる模様。日、月、星辰(星座)、山、龍、華虫(美しい華と美しい羽の雉)、宗彝ソウイ(宗廟の儀式用の酒器。虎と猿の図柄)、藻(水と清浄)、火、粉米(米粒)、(斧図)、フツ(背中合わせ弓図)の12章。この十二種類は古代の天子の冕服ベンプク(王冠をつけた服装)に用いられる模様であった。
竜袍(天子の礼服)12章
https://baike.baidu.com/item/黻黼/4759858

皇帝の礼服
一番下にフツ、その上にが左右にぬいとりされている。
(百度の検索サイトの画像から)





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