漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符「竟キョウ」<長い祭祀がおわる>と「境キョウ」「鏡キョウ」

2017年02月08日 | 漢字の音符
 私はこれまで竟を篆文の字体である「音+儿(人)」で解字していたが、このたび甲骨文字・金文が判明したので、やり直しました。しかし、漢字の書き方としては「音+儿」で覚えるほうが書きやすいとおもいます。

 キョウ・ケイ・ついに・おわる  立部

解字 甲骨文第1字は、「冠の形+兄キョウ(神に祈る人)」の会意形声で、冠をつけた貴人が祭祀(祖先や神をまつる)をおこなっているさま。(兄は音符「兄キョウ」を参照)。甲骨文第2字は、冠の略体(▽)をつけた形。意味は、①祭祀名。②人名だという(甲骨文字辞典)。金文も甲骨第1字を踏襲しているが、篆文から、冠⇒辛、口⇒曰、人⇒儿に変化し、現代字は、「音+儿」の竟になった。意味は、祭祀が長きに「わたる・つづく」、祭祀が「ついに、おわる」こと。また、おわった所が「さかいめ」の意がある。
意味 (1)わたる。つづく。「竟日キョウジツ」(一日中)「竟夕キョウセキ」(夜どおし) (2)ついに(竟に)。「畢竟ヒッキョウ」(つまるところ)「竟成キョウセイ」(ついに成る)「有志竟成ユウシキョウセイ」(志の有る者は事をついに成し遂げる) (3)おえる。おわる(竟わる)。「竟宴キョウエン」(祭事のおわった後に開く宴会) (4)さかいめ。「竟内ケイダイ」(区域のうち。=境内)

イメージ
 「わたる・おわる」
(竟)
  終わったところが「さかいめ」(境・鏡)
音の変化  キョウ:竟・境・鏡

さかいめ
 キョウ・ケイ・さかい  土部
解字 「土(とち)+竟(さかいめ)」の会意形声。土地のさかいめ。
意味 (1)さかい(境)。「境界キョウカイ」「国境コッキョウ」「境内ケイダイ」(境界の内。社寺の境域の内) (2)中央から離れた土地。場所。「辺境ヘンキョウ」「秘境ヒキョウ」 (3)人が置かれている状況。「苦境クキョウ」「境遇キョウグウ」 (4)地名。「堺市さかいし」(大阪市の南に接する政令指定都市。北の摂津(せっつ)国・東の河内(かわち)国・南の和泉(いずみ)国の堺(さかい)に発展したからとされる)
 キョウ・かがみ  金部
解字「金(金属)+竟(さかいめ)」の会意形声。金属をみがいて境目を反射させるようにした鏡。
意味 (1)かがみ(鏡)。「銅鏡ドウキョウ」「水鏡みずかがみ」「手鏡てかがみ」 (2)レンズ。「眼鏡めがね」「拡大鏡カクダイキョウ」「望遠鏡ボウエンキョウ
<紫色は常用漢字>

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