漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符「毅キ」「侃カン」「諡シ」

2015年04月05日 | 漢字の音符
            キ <猪形の超獣>
 キ・つよい・たけし  殳部

解字 金文・篆文とも、「辛(かんむり)+豕(いのしし)+殳(投げやりを持つ)」の会意。辛シンは、取っ手のある大きな針や刃物の意で使われる字であるが、王や超越した力をもつ者がつける冠の変形字となることがある。例えば、商ショウの上部の立(辛の略体)は王冠を表し、商は王の宮殿を意味する(音符「商ショウ」を参照)。また、龍の字の立(音符「龍リュウ」を参照)は、金文と篆文で辛字形の冠飾りになっており、超越した力をもつ想像上の動物である龍を表す。そこで、「辛(かんむり)+豕(いのしし)」は、猪の形をした超越的な力をもつ獣を表す。
 そこに殳(投げやりを持つ形)がついた毅は、殳(投げやり)を持った相手に対し、猪形の超獣が、相手を睨みつけて毅然と立つかたち。つよい・力強くたつ意となる。現代字は、「立+豕+殳」(立と豕は、一部重複)からなる毅になった。
意味 つよい(毅い)。たけし(毅し)。力強く立つ。「毅然キゼン」(自分の信念をつらぬき物事に動じない)「弘毅コウキ」(度量が広く意志が強い)「剛毅ゴウキ」(すぐれて強い)


            カン <つよい>
 カン・つよい  イ部

解字 金文は、「人(ひと)+口(くち)+彡(おおい)」の会意。彡サンは飾りや模様をあらわす記号であるが、いくつも並んで模様をなすことから「たくさん」のイメージがある(音符「三・彡」を参照)。侃カンは、人が口から多くの言葉を発すること。人が多くの言葉を話すときは、①楽しくなごやかにおしゃべりする、②強い調子で議論する、の二つがある。金文の用法は①の楽しくなごやかの意で使われ、篆文以降は②のつよく議論する意が主流となった。字形は篆文から、彡⇒川となり、さらに現代字は川の変化した侃カンとなった。 
意味 (1)つよい(侃い)。つよく議論し主張する。強直なさま。「侃侃カンカン」(気性が強くひたむきなさま)「侃侃諤諤カンカンガクガク」(遠慮することなく強い調子で議論すること=侃諤カンガク)「侃直カンチョク」(持論をもち信念を曲げない) (2)やわらぎたのしむ。「侃爾カンジ」(なごやかだ。侃は、やわらぐ意、爾は状態を表す)


            シ <おくりな>
諡[謚] シ・おくりな  言部
解字 諡は、異体字の謚が変形した字とされる。謚は「言(ことば)+益(ます)」の会意。益エキは益の旧字で、追加する・ます意がある(音符「益エキ」を参照)。これに言がついた謚は、言葉を追加する意で、帝王や貴人の生前の功績をたたえて死後に名前をおくる(追加する)こと。諡は、謚が変形した字で、右辺の皿の上の「八一八」⇒兮ケイに変化した諡となった。
意味 おくりな(諡)。生前の功績をたたえて死者におくる名。「諡号シゴウ」(おくり名)
  
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