漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符「音オン」<おと> と 「暗アン」「闇アン」「諳アン」

2023年05月05日 | 漢字の音符
 オン・イン・おと・ね  音部                   

解字 金文は、言(いう)の口のなかに短線を入れた形で、言葉を言うのでなく口からでる音声を表した指事文字。言葉以外の、人の声帯の振動をともなう音声がもとの意。のち物の振動から出る音やひびきもいう。篆文で、「口+短線」は日となり、現代字は上が立に変化した音になった。
意味 (1)おと(音)。ひびき。ねいろ。「音楽オンガク」「音階オンカイ」(音楽の音を高さの順に並べたもの)「音色ねいろ」(音の特性) (2)こえ。「音声オンセイ」(人間が発する言語の音) (3)おん(音)。漢字の字音。「呉音ゴオン」(古代に伝来した中国南方系の字音)「音訳オンヤク」(外国語の発音を漢字で表すこと。地名や仏典に多い) (4)知らせ。たより。「音信オンシン
参考 音は部首「音おと」になる。左辺や下部に付いて音の意味を表す。しかし、主な字は響キョウ・ひびく(音+音符「郷キョウ」、韻イン・ひびき(音+音符「員イン」)の2字しかない。

イメージ 
 「おと」
(音)
 「形声字」(暗・闇・諳・黯)
音の変化  オン:音  アン:闇・暗・諳・黯

形声字
 アン・くらい  日部
解字 「日(太陽)+音(イン⇒アン)」の形声。アンはアン(くらい)に通じる。アンは「日(ひ)+奄エン(おおう・さえぎる)」で、日の光がさえぎられて、くらい意。暗も同じく、日がさえぎられてくらい意となる。
意味 (1)くらい(暗い)。くらがり。やみ。「暗雲アンウン」「幽暗ユウアン」(くらいこと)「暗黒アンコク」 (2)隠れていて見えない。「暗礁アンショウ」 (3)あんに。ひそかに。「暗殺サンサツ」 (4)おろか。「暗愚アング」 (5)そらで覚える。「暗記アンキ」(=諳記)  
 アン・やみ・くらい   門部
解字 「門(もん)+音イン⇒アン(=暗。くらい)」の会意形声。門を閉じて中が暗いこと。日本語のやみ(闇)は、光が止(や)む意。「光ノ止(や)みタル二テ暗キ意」(大言海)。
意味 (1)くらい(闇い)。やみ(闇)。くらがり。「夕闇ゆうやみ」(夕方の暗さ。日が落ちて月がのぼるまでの暗さ)「闇夜やみよ」(月のない夜) (2)ひそかに。こっそりと。「闇市やみいち」 (3)とじる。門をとじる。「諒闇リョウアン」とは「まことに暗し」の意味で天子が父母の喪に服する期間を言い、一年とされた。闇アンは、くらい意味であるが、天子が居所の門をとじる意味も含まれている。
くらいと闇やみの違い
 暗アンは日の光がさえぎられて、くらい意であり、闇アンは門が閉じられてくらい意。どちらも「くらい」意味で用いるが、暗は日の光がさえぎられるので、薄暗い意味でも使える。しかし、闇アンは門を閉じるので門の内(=屋内)に光がまったく入らない暗さの意味で「まったく光のない所」のニュアンスがある。
「暗アン」は「相対的に明るくないこと」。「薄暗い」と言い換えると分かりやすい。まったく暗い意味は「暗黒アンコク」といい黒をつける。
「闇アン」は「絶対的な暗さ」であり、ここから転じて「闇市やみいち」「闇金融やみキンユウ」などの語も派生する。
 アン・そらんじる  言部
解字 「言(いう)+音イン⇒アン(=暗。くらい)」の会意形声。暗い中で文字を見ずに言うこと。
意味 そらんじる(諳んじる)。そらでおぼえる。「諳記アンキ」(そらでおぼえる=暗記)「諳誦アンショウ」(そらでおぼえていて口に出していう=暗誦)
 アン・エン・くろい・くらい  黒部
解字 「黑(くろい)+音(オン⇒アン)」の形声。[説文解字]は「深い黑くろ也(な)り。黑に従い音の聲(声)。発音は「乙減切(アン)」とする。深い黒の意。
意味 (1)くろい(黯い)。深い黒。あおぐろい。「黯黒アンコク」(くろい。黯も黒も、黒い意) (2)くらい(黯い)。奥深い。「黯黯アンアン」(暗いさま)「黯爾アンジ」(くらいさま。爾は状態を表す)「黯澹アンタン」(①うす暗くふかい、②くらい気持ちのさま)「黯靄アンアイ」(くらくたちこめた靄もや) (3)いたましい。心がふさぐ。「黯然アンゼン」(悲しみでくらく沈んでいるさま。=暗然)
<紫色は常用漢字>



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