漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符「兆チョウ」<亀甲のヒビ割れ>と「眺チョウ」「挑チョウ」「跳チョウ」「桃トウ」「逃トウ」

2022年04月14日 | 漢字の音符
  チョウの解字を改めました。
 チョウ(テウ)・きざす・きざし  儿部

解字 占いで亀の腹の甲らや獣骨を焼いた時、パンと割れてできたヒビ割れを表す字。古代中国では占いで亀甲などを焼き、そのヒビ割れで吉凶を占った。篆文第一字(上)は[説文解字]に収録の古い字体(古文)で、字の中にh形の卜ボク(亀甲のひび割れの形)が入っている。篆文第二字(下)は、古い字形にさらに卜ボクを付け加え、うらないであることを念押した形の字。隷書レイショ(漢代)は北のような字形の中に「し」が入った形になり、楷書で兆になった。うらない、及び、うらないで出るきざしの意。また、数字の兆に当てられる。
意味 (1)うらない。「ト兆ボクチョウ」(トも兆も、うらなう意。また、うらないで出たきざし)(2)きざす(兆す)。きざし(兆し)。「兆候チョウコウ」「予兆ヨチョウ」(3)数の単位。「兆チョウ」(一億の一万倍)「一兆円」

イメージ 
 「ヒビ割れ」
(兆・眺・挑・誂) 
 「きざし」(晁・窕) 
 「左右に割れる」(桃)
 ヒビ割れが急に出ることから「ぱっと離れる」(跳・逃・佻)
 「形声字」(銚)
音の変化  チョウ:兆・眺・挑・誂・晁・窕・跳・佻・銚  トウ:桃・逃
変化パターン 兆は漢音でチョウ(テウ※歴史的仮名遣い)であり、トウの発音はテウ⇒トウのタ行変化。

ヒビ割れ
 チョウ・ながめる  目部
解字 「目(め)+兆(ヒビ割れ)」の会意形声。ひび割れやそれが示す兆候を目で見つめるのが原義。のち、頂チョウ(いただき)に通じ、いただきから遠くを見つめる意につかわれるようになった。
意味 (1)ながめる(眺める)。見つめる。 (2)遠くを見渡す。「眺望チョウボウ」「臨眺リンチョウ」(高い所から見渡す)
 チョウ・いどむ  扌部
解字 「扌(手)+兆(ヒビ割れ)」の会意形声。手で強く力を加えてたわめ、ひび割れをつけること。腕力を自慢し相手をけしかけること。転じて、いどむ意となった。
意味 (1)たわめる。 (2)いどむ(挑む)。しかける。けしかける。「挑戦チョウセン」「挑発チョウハツ」(けしかける)
 チョウ・あつらえる  言部
解字 「言(ことば)+兆(=挑。いどむ)」の会意形声。言葉でいどむこと。日本では、あつらえる意で使う。
意味 (1)いどむ。(2)からかう。(3)[国]あつらえる(誂える)。注文して作らせる。「洋服を誂える」

きざし
 チョウ・あさ  日部
解字 「日(太陽)+兆(きざす)」の会意形声。朝早く太陽の光が東の空にきざすこと。
意味 (1)あさ(晁)。よあけ。朝。 (2)人名。①阿部仲麻呂の中国名。「晁衡チョウコウ」また、官位をつけた「晁卿チョウケイ」とも。②江戸後期の画家。「谷文晁たにブンチョウ
 チョウ  穴部
解字 「穴(よこあな)+兆(きざす)」の会意形声。穴の中に光のきざしが入り、薄暗く奥深いこと。
意味 「窈窕ヨウチョウ」に使われる字。「窈窕ヨウチョウ」とは、①奥深く静かなさま。②奥ゆかしくうつくしいさま。「窈窕たる淑女」

左右に割れる
 トウ・もも  木部
解字 「木(き)+兆(左右に割れる)」の会意形声。実が左右に割れたような筋が走る桃。
意味 もも(桃)。大型のおいしい実をつける果樹。また、その果実。「桃源郷トウゲンキョウ」(桃の花が咲く別天地)「桃花節トウカセツ」(3月3日の桃の節句)「桃割(ももわ)れ」(髪を左右に分け輪にしてまとめた結い方)

ぱっと離れる
 チョウ・はねる・とぶ  足部
解字 「足(あし)+兆(ぱっと離れる)」の会意形声。地面から足を使って飛びあがること。
意味 (1)はねる(跳ねる)。とぶ(跳ぶ)。「跳躍チョウヤク」「跳馬チョウバ」 (2)おどる。おどりあがる。「跳舞チョウブ」「跳梁チョウリョウ」(跳ねまわる)
 トウ・にげる・にがす・のがす・のがれる  之部
解字 「辶(ゆく)+兆(ぱっと離れる)」の会意形声。ぱっと離れて行くこと。
意味 にげる(逃げる)。のがれる(逃れる)。「逃走トウソウ」「逃亡トウボウ」「逃避トウヒ
 チョウ・かるい  イ部
解字 「イ(人)+兆(ぱっと離れる)」の会意形声。すぐにぱっと離れ去る人。
意味 かるい。かるがるしい。「軽佻浮薄ケイチョウフハク」(軽はずみで落ち着きのない)

形声字
 チョウ  金部
解字 「金(金属)+兆(チョウ)」の形声。[説文解字]に「温器なり」とあり、チョウという名のものを温める鍋の類をいう。また、「一に曰く田器なり」とあり、スキ(鋤)の意。なお、酒器を銚子という。
意味 (1)なべ。柄と口のあるなべ。「銚子さしなべ」(つり手と注ぎ口がついたなべ) (2)酒を注ぐ容器。「銚子チョウシ」(酒を盃に注ぎ入れる容器) (3)すき。農具の一種。 (4)地名。「銚子市チョウシシ」(千葉県北東部の利根川河口に位置するする市)
<漢字音符>

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