漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符「曼マン」 と 「漫マン」「慢マン」「蔓マン」「鰻マン」「幔マン」「鏝マン」「鬘マン」「饅マン」

2024年07月12日 | 漢字の音符
 改訂しました。
 マン  日部 màn        


目出し帽(販売広告より)。この下に帽子をかぶせる又(手)をつけた形が曼マン
解字 金文は「かぶりもの+まゆ(眉)と目+又(手)」の会意。篆文は「冃ボウ(かぶりもの)+罒(横に描かれた目)+又(手)」となった。ずきん(頭巾)を手でひいて深くかぶり、目だけ出している形。[字通]はこの頭巾を「面衣メンイ」としている。貴人の女性が外出するとき人目を避けるため目だけ出す特別な頭巾があったのかも知れない。眉目ビモクの美しさがあらわれる意で、婦人の美しい目元をいう。
 しかし、音符イメージは頭巾を「かぶる(おおう)」となる。現代字は、冃ボウ⇒日に変化した曼となった。字の構造は冒ボウ(=帽子)に又をつけた形である。
意味 (1)(出ている目が)美しい。「曼理マンリ」(美しい肌理きめ)「曼姫マンキ」(美しい姫)(2)ひろい(=漫)「衍曼エンマン」(ひろくはびこる)「衍曼流爛エンマンリュウラン」(悪がひろくはびこり、流れみだれる。悪が世の中全体に広がること)(3)本来の意味でなく梵語の音訳語として使われる。「曼荼羅マンダラ」(多くの仏を模様のように描いた絵)「曼珠沙華マンジュシャゲ」(①天上に咲くという花。②彼岸花の別称)

イメージ 
 「おおう」
(曼・蔓・鰻・幔・鏝・鬘・饅・漫)
  かぶりものをして目だけ出すことから「まわりが見えない」(慢)
音の変化  マン:曼・蔓・鰻・幔・鏝・鬘・饅・漫・慢

おおう
 マン・つる  艸部 màn・wàn・mán

石垣をおおう蔓草(筆者撮影)
解字 「艸(くさ)+曼(おおう)」の会意形声。おおいひろがってのびる草。つる草の意となる。
意味 (1)つる(蔓)。つる草。かずら。「蔓草つるくさ」(茎がつるになって他の物にからみつく草の総称)「蔓草寒煙マンソウカンエン」(はびこるつる草と寂しい煙。荒れ果てた古跡の景色)(2)のびる。はびこる(蔓延る)。「蔓延マンエン」(はびこる)「蔓生マンセイ」(つるが伸びて成長する) 
 マン・うなぎ  魚部 mán
解字 「魚(さかな)+曼(=蔓。つる)」の会意形声。つるのように細長い魚のウナギ。

ウナギ・鰻(「三重県のお魚図鑑」より)
意味 うなぎ(鰻)。ウナギ科の細長い魚。「鰻登(うなぎのぼ)り」(見る見るうちにのぼること)「鰻の寝床」(間口が狭く奥行きの深い家)
 マン・バン  巾部 màn
解字 「巾(ぬの)+曼(おおう)」の会意形声。巾(ぬの)でおおうこと。
意味 まく。ひきまく。「幔幕マンマク」(式場などにはりめぐらす幕)「帷幔イマン」(帷は、たれぎぬ、幔はひきまく。周囲にめぐらした幕)
 マン・こて  金部 màn
鏝(こて)(販売広告から)
解字 「金(金属)+曼(おおう)」の会意形声。壁に土を塗っておおう金属の道具。
意味 こて(鏝)。壁を塗る道具。「仕上鏝しあげごて」(塗った壁面を仕上げする鏝)
 マン・かずら・かつら  髟部かみがしら mán
解字 「髟(かみのけ)+曼(おおう)」の会意形声。髪をおおう飾り、また、毛髪でつくったかぶりもの。
意味 (1)かずら()。髪飾り。つる草などを連ねた飾り。「花はなかずら」「華ケマン」(仏堂内陣の欄間などに掛ける装飾。もとインドの花輪の頭飾りだったが、仏具となったもの。多くは金銅製。)「玉たまかずら」(玉を緒に通し頭に掛けた装具。髪の美称)(2)かつら()。かもじ。毛髪で作ったかぶりもの。(3)人名。「勝ショウマン」(梵語のŚrīmālāの漢語訳。コーサラ国王の娘。アヨーディヤー国王に嫁いだ。=勝夫人)「勝ショウマンギョウ」(勝鬘夫人を語り手とする大乗仏教の経典)
 マン・ぬた  食部 mán
饅頭(ウィキペディアより)
解字 「食の旧字(たべもの)+曼(おおう・かぶせる)」の会意形声。小麦粉など練ってつくった皮で、小豆(あずき)などの餡(あん)をかぶせた食べ物。饅の左辺を食と書いても可。
意味 (1)「饅頭マンジュウ」(皮で餡をおおった菓子)に使われる字。(2)[国]ぬた(饅)。魚・野菜などを酢味噌であえた料理。
 マン・みだりに・そぞろに  氵部 màn  
解字 「氵(水)+曼(おおってひろがる)」の会意形声。水が溢れておおいひろがる意。転じて、とりとめのない意となり、さらに、こっけいの意まで拡大した。
意味 (1)ひろい。水の果てなく広いこと。「漫漫マンマン」(2)みだりに(漫りに)。とりとめがない。「散漫サンマン」「放漫経営ホウマンケイエイ」(3)なんとなく。そぞろに(漫ろに)。「漫然マンゼン」「漫遊マンユウ」(4)こっけいな。「漫画マンガ」「漫才マンザイ

まわりが見えない
 マン・あなどる  忄部 màn 
解字 「忄(心)+曼(まわりが見えない)」の会意形声。曼は目出し帽のため、正面を向いたままでは、まわりが見えず井の中の蛙となり、心がおごること。また、まわりが見えないため、ゆっくりと進む意ともなる。
意味 (1)おごる。あなどる(慢る)。「自慢ジマン」「慢心マンシン」「高慢コウマン」(2)おこたる(慢る)。なまける。「怠慢タイマン」(3)ゆるやか。おそい。「慢性マンセイ」「緩慢カンマン
<紫色は常用漢字>

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