耆 キ・シ・たしなむ 老部
解字 篆文は「老の略体(老人)+旨(=詣の略体ケイ。高い境地にいたる)」 の会意形声。高い境地に至った老人の意で、六十歳の老人をいう。キの発音となる。また、旨シを、うまいと解釈して、老人がうまいものをたしなむ意となる。これはシの発音となる。
意味 (1)キの発音。おいる。年をとる。老人。「耆老キロウ」(老人。年老いて徳の高い老人)「耆徳キトク」(年老いて徳望のたかい人)「耆儒キジュ」(年老いて徳望のたかい学者) (2)シの発音。たしなむ(耆む)。このむ。「耆欲シヨク」(好きな物。このみ) (3)地名。「伯耆ホウキ」(鳥取県西部の旧国名。伯州)
イメージ
「高みにいる老人」(耆・鰭)
「たしなむ」(嗜)
「シの音」(蓍)
音の変化 キ・シ:耆 キ:鰭 シ:嗜・蓍
老人
鰭 キ・ひれ 魚部
解字 「魚(さかな)+耆(老人)」 の会意形声。老人は、髪の毛と髭(ひげ)が長く生えているので、それを魚の背びれや胸びれなどに例えた。
意味 ひれ(鰭)。魚の背中・胸・腹などに突き出ている運動器官。泳ぐときに使う。「背鰭せびれ」「尾鰭おびれ」「鱶鰭ふかひれ」「肉鰭類ニクキルイ」(シーラカンス・ハイギョなど、肉質の鰭をもつ種類)⇔「条鰭類ジョウキルイ」(原生魚類の大部分にあたる種類)
たしなむ
嗜 シ・たしなむ 口部
解字 「口(くち)+耆(たしなむ)」 の会意形声。耆には、たしなむ意があるが、老人の意味もあるので、口をつけて意味を明確にした字。
意味 (1)たしなむ(嗜む)。このんでしたしむ。たしなみ(嗜み)。「嗜好シコウ」(たしなみ好む)「嗜好品シコウヒン」(酒・茶・たばこ・コーヒーなど、嗜(たしな)みで口にするもの)「嗜欲シヨク」(たしなみ好む)「嗜虐シギャク」(残虐なこと好むこと) (2)むさぼる。「嗜眠シミン」(睡眠をむさぼる。脳炎などによって起こる眠り続ける病気)
シの音
蓍 シ・めどぎ 艸部
解字 「艸(くさ)+耆(シの音)」の形声。シという名の植物。マメ科の低木状多年草をいう。
メドハギ
意味 (1)メドギ(蓍)。メドハギ(蓍萩)。マメ科の低木状多年草。木質化した茎を占いに用いる棒とする。「蓍艾シガイ」(めどき草と、よもぎ)「蓍席シセキ」(めどぎ草を編んだむしろ) (2)ぜいちく。易の占いに用いる細い棒。のちに竹の棒を用いる(筮竹ゼイチク)。「蓍筮シゼイ」(易のうらない)「蓍亀シキ」(占いに用いるめどぎと亀の甲。転じて、うらない。甲骨文は亀の甲に文章を書いて占った)
<参考音符>
旨 シ・うまい 日部 音符「旨シ」を参照
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