漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符「傷ショウ」 <きず>  と 「殤ショウ」「觴ショウ」

2014年11月21日 | 漢字の音符
 ショウ・きず・いたむ・いためる  イ部  

解字 篆文第一字は「六書通」にある異体字で、「矢+人の変形+昜(あがる)」の会意形声。下からあがってきた矢にあたり人がキズつくこと。𥏻は正字ではないが、傷の成り立ちを探るうえで手掛かりとなる字。第二字は正字で、矢の代わりに人が付いて人がきずつく意とする。現代字は、「イ(人)+𠂉(ひと)+昜(あがる)」の傷になった。
意味 (1)きず(傷)。けが。「傷病ショウビョウ」「重傷ジュウショウ」「深傷ふかで」(重傷。深手) (2)きずつく。きずつける。「傷害ショウガイ」 (3)いたむ(傷む)。いためる(傷める)。かなしむ。「傷心ショウシン」「感傷カンショウ」(感じて心をいためる)

イメージ 
 「きずつく」
(傷・殤)
 「ショウの音」(觴)
音の変化  ショウ:傷・殤・觴

きずつく
 ショウ・わかじに  歹部
解字 「歹(しぬ)+傷の右辺(きずつく)」の会意形声。傷ついて若くして死ぬこと。
意味 わかじに(殤)。若死に。二十歳前後で死ぬこと。怪我をして死ぬ。「夭殤ヨウショウ」(若くして死ぬ)「国殤コクショウ」(国のために死んだ人。また、その霊魂)


ショウの音
 ショウ・さかずき  角部
解字 「角(つの製のさかずき)+傷の右辺(ショウ)」の形声。ショウという名の角製の盃をいう。なお、「漢典の觴」(出た画面で[字源字形]をクリック)で、金文は「爵シャク+昜ヨウ」の爵昜(これで一字)。爵シャクは酒を温める器、また温めた酒をつぐ「さけつぎ」で、この発音がヨウ(?)。酒をつがれて受ける酒杯の意。説文解字の籀ちゅう文(戦国時代)も同じく爵昜(これで一字)である。発音は昜ヨウに湯トウ・ショウ・ヨウがあり、また愓トウ・ショウもあることから、「爵昜」の発音もショウと思われる。
 古い字体の籀文を書きとめた[説文解字]の著者・許慎は、大胆にも爵⇒角に変え、昜を発音のはっきりわかる傷ショウの右辺に変えた「觴ショウ」を作りだしたのではなかろうか。
意味 (1)さかずき(觴)。さかずきはもと獣角で作ったので角。発音は傷の右辺を付けた字。觴は獣角のさかずきの意で、酒杯の総称。「觴杯ショウハイ」(さかずき)「濫觴ランショウ」(濫はあふれる意、觴はさかずき。大河の源も觴(さかずき)からあふれた程のわずかな水からはじまる。物事の初めをいう)「羽觴ウショウ」(両方の耳(もちて)を羽の形にしたさかずき) (2)酒をすすめる。さかずきをさす。「觴詠ショウエイ」(酒を飲み詩歌を吟ずる)「觴酌ショウシャク」(酒をくみかわす)
<紫色は常用漢字>

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