一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

「将棋ペンクラブ関東交流会」に行く(前編)・林葉直子さん、来場する

2010-05-26 00:57:52 | 将棋ペンクラブ
22日(土)は、東京・将棋会館で、将棋ペンクラブの「関東交流会」があった。
これは将棋と文章を愛する愛棋家が集まる、年に1度の祭典で、この日を心待ちにしている会員も少なくない。とくに今年はペンクラブ会員の林葉直子さんが参加するという噂もあり(まあ、知っていたが)、例年とは違う気持ちで将棋会館へ向かった。
この日のスケジュールは、午前10時から午後4時まで親睦将棋大会、そのあと会員の自己紹介がもれなく行われ、7時まで飲み会となる。今年の指導棋士は、女流棋士会からは斎田晴子女流四段と安食総子女流初段が確定。LPSAからは松尾香織女流初段がいらっしゃるという話は聞いていたが、例年女流棋士の指導は2名である。松尾女流初段は不参加になったと思った。
会館の4階大広間へ入ったのは10時40分ごろか。将棋大会は10時からだが、優勝を争う類のものではないので、何時に入ってもよいし、何時に帰ってもよい。このあたりのユルさが、ペンクラブの持ち味だ。
幹事のM氏がいらして、
「オオサワさん好みの女性が来てますよ」
という。その視線の先を見ると、元ミス・パラオのタレント・梨沙帆さんの姿がある。梨沙帆さんはペンクラブの会員だったのか。こんな早くから来場するとは、意気込み十分である。彼女は背も高くプロポーションもいい。いまは髪が長くなっているから、船戸陽子女流二段のイメージと重なって見える。ちょっと歳の離れた姉妹と言ってもおかしくない。いいカンジである。
そんな梨沙帆さんは将棋ブログも開設していて、エントリには将棋に対する愛があふれており、とても好感が持てる。「将棋女子」として、いまや彼女の名前を知らなければモグリである。日本将棋連盟が高名なオッサンに高段の免状を乱発するのもいいが、彼女のような将棋ファンにこそ免状を贈るべきである。
対局に入る。昨年は5戦全勝だったが、上に7戦全勝の方がいらして、順位1位をさらわれた。金曜サロンの会員である以上、無様な成績は許されない。今年は昨年以上の成績を目標とした。
振り駒の結果、私の先手番。後手氏の中座飛車に、私は研究手をぶつけ、序盤からリードを奪った。それが中盤まで続いたのだが、後手氏の反撃をモロに受け、いつの間にか敗勢になっていた。しかし後手氏が私の飛車を取らず、歩を成ったのが敗着。こちらに詰めろを掛ける手が回って、逆転した。
1局目は辛勝となったが、こんなことでは先が思いやられる。この間に、松尾女流初段がいらした。よかった、と思う。女流棋士会の女流棋士が来場されると聞いて、LPSA女流棋士はお払い箱と思ったが、ペンクラブはそんな薄情なことはしないのだ。早速指導対局に入っていただく。
私は2局目。相手のH氏は、昨年の関東交流会のレポートを書いたが、達者な文章だった。関東交流会や大賞贈呈式でのレポートは、会員の持ち回りみたいなもので、いつかは書かされる運命にある。しかし皆さん一様に文章がうまい。指名はおもに湯川博士統括幹事がするが、各自の文章を読んだわけでもないのに、どうやって文章巧者をピックアップしているのだろう。いずれにしても作家だけあって、その眼力はさすがである。
11時30分ごろだったか、林葉直子さんがいらっしゃる。私が以前からブログで熱望していた林葉さんを、ついにこの眼で拝見した。ちょっとやつれているが、まぶしい。あまりにもまぶしすぎて、まともに見られない。ああ、この感激を、文章で正しく伝えられない自分がもどかしい。
将棋に戻る。私の四間飛車に、H氏は糸谷流右玉。この対策がまったく分からない。苦慮していると、右の将棋盤の前に、林葉さんと会員がすわった。マジか!? いま、私のナナメ前に、林葉さんがいらっしゃるのだ。こ、こんな近くで林葉さんを拝見してもいいのか!? 私の心が乱れる。
林葉さんは指導対局をするのではなく、あくまでも会員のひとりとして対局するらしかった。もっとも林葉さんは女流棋士会を退会し、いまではただの愛棋家のひとりである。そんな林葉さんは、駒を並べる手つきに力がないが、駒のひとつひとつに、魂を吹き込んでいるようだった。
あ、ああ…私はここで将棋を指している場合か? もう、林葉さんの鑑賞に全精力を傾けたほうがいいのではないか? しかしそうもいかないので、自分が指せば林葉さんを見る、相手が指したらすぐ指して、また林葉さんを見る、の繰り返しとなった。
噂では、林葉さんは体調が悪いと聞いたがたしかにそうで、頬のあたりが少しこけている。しかしその分、凄絶な美しさが加味された気もする。結局美人はいくつになっても美人なのだ。
林葉さんの将棋は相振り飛車となっていた。林葉さんは7月に行われる日レスインビテーションカップで中倉彰子女流初段と対戦する。15年のブランクがあった林葉さんの現在の棋力がどんなものか量るには、絶好の機会だ。
私の将棋も指し手が進んでいる。H氏☗8六角、私☖7七成桂☖7八成桂。ここでH氏が☗7九歩と打ったのが悪手だった。すかさず☖8七成桂と寄られ、角が助からない(☗5九角は☖6九成桂)。
林葉さんは飛車を左右に行ったり来たりしている。何を指したいんだか、よく分からない。林葉さんがこちらの局面を見る。その視線は鋭い。なんだかドキドキしてしまう。
林葉さんはが、将棋を指すのは15年振り、と掠れた声で話しているのが聞こえたが、本当だろうか。それが事実なら、中倉女流初段に勝つことなど、夢のまた夢だ。
H氏、☗3五桂と☖2三飛取りに打つ。ここで私が飛車を逃げずに、☖6五歩と☗6六金取りに突いたのが自慢の一手。この手が通れば、のちに☗4三桂成とされたとき、手順に☖5三角を逃げることができる。この局面を林葉さんは確かに見ていた。彼女の感想を聞いてみたい。
「あのう…あとで先生のサインをいただくことはできるでしょうか」
私は恐る恐るお願いする。林葉さんがわずかにうなづく。よし! きょう私は、この日のために、とっておきの「写真」を持ってきていたのだ。今回はそれにサインをしたためてもらうつもりである。
林葉さん、かなり形勢が悪くなった。こちらの将棋は私が勝勢である。最後はH氏の諦めもあって、私の快勝となった。
一応感想戦も行う。やはり☗3五桂に飛車を逃げず、☖6五歩と突きだしたところがハイライトだった。林葉さんがこちらを見ている。
「いや私がここで歩を突き出したんですけど、この手はどうですか?」
私は勇気を出して、林葉さんに問うてみる。しかし林葉さんはうっすらと笑みを浮かべるだけだった。
(つづく)
コメント (4)
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