一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

起こりえない局面が現れた

2023-10-31 00:05:33 | 将棋雑記
1979年度NHK「将棋講座」の講師は大内延介八段(当時)、アシスタントは、この年の1月に女流棋士になった中瀬奈津子女流1級(旧姓・当時)だった。当時は、同じ講師で1年間やるロングランだった。
この何回目かの講座で、初手から▲2六歩△8四歩▲2五歩△8五歩に、定跡の▲7八金ではなく、▲2四歩(第1図)とやる変化をやった。

▲2四歩以下は、△同歩▲同飛△8六歩▲同歩△8七歩▲2三歩△8八歩成(第2図)となり、後のカラスが先になるのだ。初級者本だと、ふつうはこの辺りで終わる。

ところがこのあとの変化が意外に複雑で、大内八段は解説を続けた。すなわち第2図以下、▲8八同銀△3五角▲2八飛△5七角成▲2二歩成△同銀▲4五角(第3図)となる。この▲4五角が秘手で、実はここで形勢が入れ替わっているのだ。
ちなみに升田幸三実力制第四代名人の本では、▲4五角で▲9六角を説いている。

第3図以下は△6二飛に▲5二歩(第4図)が好手。典型的な焦点の歩で、5筋の歩が切れた手を逆用している。

第4図で△同飛以外の応手は、▲2二飛成と銀を取り、先手必勝。
よって後手は△同飛と取るよりないが、▲6三角成(第5図)で、先手優勢となる。

解説ではこのあと、△8二飛▲8一馬△同飛▲2二飛成まで進め、後手がボーッとしていたら▲6三桂まで詰み、までやった。
後手はどこがおかしかったのか。戻って第3図の一手前、当然のような△2二同銀が疑問手。ここは△2二同飛と取り、▲2三歩△1二飛▲2二角で後手があぶないようだが、「この筋を忘れちゃいませんか」と△2四歩(参考図)と押さえて後手優勢、が大内八段の解説だった。

よって5手目▲2四歩は、後手が正確に応接すれば先手がいけない、が結論となる。
それにしても変化の▲5二歩は鮮やかな手筋で、こんな手が実戦で現れるわけがないと思った。
ところが、である。26日に指された第82期C級2組順位戦6回戦・▲佐々木大地七段VS△近藤正和七段戦(主催:毎日新聞社、朝日新聞社、日本将棋連盟)で、これと同じ手筋が出現した。
下図は先手の佐々木七段が▲6三角成と馬を作ったところだが、ここで近藤七段が投了してしまったのである。

手数は27手。双方が真面目に指した将棋としては、最短ではないだろうか。しかも双方居玉、持駒が歩だけというオマケ付きである。
この投了図と第4図を見比べると、当然ながらかなり酷似している。こんなハマリ形をプロが食らうはずがないと思っていたから、この投了図はかなり衝撃的だった。
▲5二歩~▲6三角成は、見た目以上の破壊力だったのである。
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社団戦2023最終日・5

2023-10-30 18:51:38 | 社団戦
それは、作業用風ズボンだった。A氏の知り合いの女性が当ブログのファンだそうで、A氏を介して、私にプレゼントをくれたのだ。当ブログを開設して14年7ヶ月、見知らぬ読者からこの類のプレゼントをもらったのは初めてである。ありがとうございます。大切に使わせていただきます。
木村晋介会長とA氏との将棋は、木村会長が振り飛車を振った対抗形。お互い筋違いに角を打ち、格調高い将棋になっていた。

ところが木村会長に見落としがあり、角をタダで取られる展開になった。ここ会長投了。潔い散り際だった。
ここでKan氏、阿部氏、山本氏が到着し、全員集合となった。なお今回は、Osa氏は欠席だった。私たちの撤去作業に時間がかかったので、待ちくたびれて帰ってしまったらしい。
では、席の配置を記しておこう。

木村 Kan 山本 アントン 山野 Kid
   □    □    □
A 一公 阿部 ベルク 藤原父 Aku

ほぼ全員が生ビールを頼み、木村会長の音頭で乾杯! 私は酒は飲まないが、ビールの最初の一口は美味いと思う。
と、ここでアントン氏が将棋盤と駒を取り出した。しばらくして、山部氏も盤駒を取り出した。大野教室のメンバーも相当だが、将棋ペンクラブも相当な将棋バカの集まりである。
今回は食べ応えのある食べ物がどんどん出てきて(しかも綺麗に3人前ずつだ)、みなそれを食べながら将棋を指す。話題も将棋のことばかりで、これが社団戦の打ち上げだと思った。
阿部-山本戦は、山本氏が寄せ切ったかに思えたが、阿部氏がうまい受けを見せ、制勝。両氏とも、社団戦でこういう将棋を指せばいいのにと思う。
木村-A戦の再戦があってもよかったが、木村-Kanの戦いとなった。木村会長が私の左に来て、Kan氏が右にズレる。Kan氏の席にはA氏が座った。
木村会長が強制的に先手を取って、初手▲6八飛から対局開始。さすがに木村会長、最先端の序盤だ。
そして中盤は木村会長、角交換から逆棒銀で8筋を制圧し、大優勢となった。

A氏と阿部氏は、難解な仕事談義をしている。冷静に見ると、このメンバーの中では私が最下層の仕事をしていて、将棋の強弱がふだんの生活に何の関係もないことが分かる。
さて第1図では▲6一角が筋だ。▲7二角成△同飛▲8三歩成の筋が受けにくく、先手必勝である。
ところが木村会長は▲6八金! なかなかなココセで、以下△7九角▲7八飛△6八角成▲同飛△8六金(△8四銀が勝る)で、Kan氏が有利になってしまった。

ところがそこから木村会長が持ち直し、第2図も先手大優勢の局面。
ここで▲6六角△7六金▲3三馬△同銀▲3四桂△3二玉▲2一銀△同玉▲3三角成で先手必勝だったが、木村会長は▲8三銀。
以下△8三同金▲同歩成△同飛▲8四歩△同飛▲6六角△8七飛成(第3図)と進んだ。

▲8三銀は後手の飛車と金を捌かせる悪手だが、第3図となってみれば、第2図より先手の条件がよくなっている。
すなわち、▲3三馬△同銀▲3四桂△1二玉(△3二玉は▲2二金△同銀▲同角成まで詰み)▲3三角成(参考図)まで、先手の勝ちだった。

ところが木村会長は別の手を指す。それでも先手優位は持続できたが、Kan氏も巧妙に受け、形勢接近。やがて逆転した。
木村会長もKan玉に迫るがKan玉はギリギリ詰まず、Kan氏が会長玉に必至を掛けたところで、木村会長の投了となった。

木村会長は負けたものの、よい指し回しだった。きょうも3戦全部に参戦し、2勝1敗。勝負強いところを見せた。来年の戦いにも期待である。
今年助っ人に入ってくれた外国人2人も、元気に将棋を指している。彼らは留学生なので、来年いっぱいには2人とも帰国する。その前に会長と3人で、場を改めて鼎談をすることになった。これは会長、ナイス提案である。
この模様はもちろん、会報に掲載される。
つぼ八は基本的に2時間制なので、間もなく追い出される。ところがラストオーダーで若手連中がばかばかつまみを頼み、それが終了間際にまとめてきたので、大変なことになった。こういうときは、単品で頼めばいいのに。まあいいが。
店の前で散会となったが、Kan氏が話し足りないようだったので、店を換えて飲み直す。参加者はA氏、阿部氏、私の4人である。
アーケード街の中にある居酒屋に入る。しかしテーブルは一部店外にあり、ちょっと寒いが、そこで飲むことになった。このシチュエーション、私はこの歳になって初めての経験である。改めてビールで乾杯。
Kan氏は落ち着いた口調で淡々と話す。Kan氏はいまや将棋ペンクラブになくてはならない存在で、社団戦も含め、大車輪の活躍といえる。しかしそれだけに運営上の悩みも抱えているようで、私たちは、そのご苦労をただただ労うのみである。
私は翌日のことを考えず、もっと飲んでいたかったが、Kan氏がうたた寝を始めてしまった。A氏が見かねて散会を申し出た。
今回も楽しい打ち上げだったが、これからの現実を見るに、私は将棋ペンクラブ大賞贈呈式の原稿は書かねばならないし、年末調整の記入もある。携帯の会社には提出しなければならない書類もある。桃の苗木を買いに行かなければならないし、ああその前に、木の根っこを引っこ抜かなければならない。それより何より、翌日も仕事(バイトみたいなもの)だ。もう、鬱になりそうだった。
バス停でバスを待っていると、A氏から電話が来た。私が店にズボンを忘れてきてしまったのだ。
慌てて戻る私。バカは死ななきゃ治らない。
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社団戦2023最終日・4

2023-10-29 00:08:51 | 社団戦

第4図以下の指し手。△8六歩▲6六角△8七歩成▲8二飛△7七と▲同角△9三桂▲4七金△8五飛▲同飛成△同桂▲6六角(第5図)

右では早々に決着がつき、将棋ペンクラブ側が勝ち名乗り。私はずいぶん気がラクになった。
私は指す手が分からず、△8六歩。どう応じられても先手が悪いが、私自身、この応手が分からなかった。
先手氏は▲6六角と引いたが私は歩を成り、結果的に桂得となった。
さらに△9三桂が、我ながら冷静だった。そこで先手氏は▲4六の歩を持ったが、▲4七金と上がった。これは美濃囲いが固くなったとは思えず、ありがたかった。そこで私の△8五飛が連続の冷静手で、▲同飛成△同桂と、桂得を保ったまま先手が取れては、思ったほど悪くないのかと思った。
よって▲4七金では、▲8一飛成がよかった。これに△8五飛なら▲9一竜で、先手有利が続いたと思う。

第5図以下の指し手。△8七飛▲5八銀△7七桂成▲4五歩△7六成桂▲5七角△4五歩▲2六歩△4二角▲2五歩△同歩▲2四歩△2二玉▲1七桂(第6図)

私は△8七飛と打った。これには▲7八銀がイヤだが△8六飛成で、▲8七歩にも△7六竜があるので、この飛車は死なない。
よって先手氏は▲5八銀だが、私は△7七桂成とし、いくらなんでも私のほうがいいと思った。
▲4五歩には△7六成桂が幸便で、歩切れを解消して一石二鳥だ。▲5七角にはじっと△4五歩とする。さっきからバカにうまく展開している。
しかし▲2六歩が油断ならない手で、さすがにイヤなところを突いてきた。
私は△4二角と応接した。ここでの折衝を収めれば、私が優勢になる。
先手氏は▲1七桂と跳んだが、これは▲2五桂と跳ばれても脅威ではない。私は狙いの手を指した。

第6図以下の指し手。△6六歩▲2五桂△6七歩成▲同銀△同成桂▲7九角△6八歩▲6四歩△同銀▲7一飛△2四角▲9七角△8六歩▲9一飛成(第7図)

△6六歩の垂らしで優勢になったと思った。4手後銀得を果たし、数手後の▲7九角に△6八歩。これで先手の角が半分死んだ。
先手氏の▲6四歩~▲7一飛は懸命の手作りだが、私は△2四角と目障りな歩を取り、万全を期す。
▲9七角に△8六歩も、△6八歩からの継承だ。

第7図以下の指し手。△2六歩▲6一竜△5三銀▲6四歩△3五桂▲4八金引△2七銀▲1七玉△5七成桂▲6三歩成△4八成桂▲同金(第8図)

ころはよしと、△2六歩。しかしここは緩んだ。△2七歩と叩き、▲同銀△3五桂で急攻すべきだった。
▲6四歩に△6二歩は二歩で負ける。いまは反則だけ気をつければよい。私はスピード勝ちを狙い、△3五桂と増強した。
△2七銀に▲3九玉は、△9七飛成▲同香△2八角以下詰み。後手は9七角が質駒になっているのが心強い。
▲4八同金に次の手は。

第8図以下の指し手。△9七飛成▲同香△3九角▲2六玉△4八角成▲5三と△3六金▲1七玉△2六金打(投了図)
まで、一公の勝ち。

やはり△9七飛成があった。以下△4八角成まで、後手必勝である。以下、勝ち切った。
感想戦では、第4図から△8六歩への応接をやった。こちらはどう応じられても悪いと思っているから、気がラクである。▲8三飛でもいいし、▲8八歩でもいい。また▲6六角△8七歩成に▲8五桂と跳んでも、先手が十分だったようだ。
「形勢がよくなってふるえました。何をやってるんだか」
と先手氏。私は僥倖の勝利だった。

ほっとしてほかの対局を回ると、アントン氏が勝ち、私と合わせて3勝。しかしほかの将棋はいずれも悪い。山野氏が敗れ、3勝1敗。
ちょっと気になるのが、打ち上げ場所だ。店は浅草駅前の「つぼ八」だとは思うのだが、予約係のA氏が来ていない。そこで、Akuさんにお願いした。
将棋は阿部氏、藤原息子君が敗れ、3勝3敗になった。
お、ここでA氏が来た。私も苦しい生活をしている毎日で、A氏と屈託のないおしゃべりをするのが癒しとなっているのだ。
「大沢さん、例のもの持ってきましたよ」
「おお」
「店でお渡しします」

さあ残る一局は山本氏だ。苦しい将棋だったが遊び駒をうまく活用し、いまは優勢になっている。最後は勝ち切り、チーム4勝3敗となった。
私は近くにいるアントン氏、バルク氏と握手をする。しかしどうも、様子がおかしい。
あらためて勝敗を確認すると、勝ったのは私、アントン氏、山本氏の3名だけだった。そうだ、木村晋介会長も負けていたんだ。あれ!? あ、そうか! 最初に勝った人と、アントン氏が同一人物だったのだ。何を私は勘違いしているのだ!
結局今年の将棋ペンクラブは、10勝5敗で終了。16チーム中5位は、大健闘といえる。来年も7部だが、6部にもう1チームできた場合、調整で将棋ペンクラブが編入される。
私個人は、第1日目2-2、第3日目1-1、最終日2-0の、5勝3敗。可もなく不可もない戦績だが、1日目、六郷の青空1戦で、私が敗れて3-4で負けたのが悔やまれる。
△6五銀のブッツケが大悪手で、▲7七銀と引かれて万事休した。自戒のため、その局面を再掲しておく。

ぼーっとしていたら、大野教室の生徒さんらに呼ばれた。見覚えのある若奥様に挨拶された。しかし、どなたの母親だったか。
「ほら、T君」
と誰かが言う。彼は見覚えがないが、彼が成長しすぎたらしい。
その彼が将棋が強いというので、「じゃあこれからどうするの? 奨励会に入る? アマ名人を目指す?」と言ったが、若干話が噛み合わなかった。あとで考えたら、彼は元奨励会のT君だった。大野教室にはだいぶご無沙汰しているので、記憶がほとんど失せてしまった。
最終日は片付けの当番だったので、みんなで頑張る。でも、準備のときより数倍大変だった。
すべて片付けが終わり、ようやく打ち上げとなる。Akuさんはつぼ八に午後5時入店の予約をしたが、20分くらい遅れてしまった。しかしこっちは客だからいいのである。
店に入ると木村会長とA氏が先乗りしていて、もうここが将棋バカというか、将棋を指していた。
私はA氏の右に座る。と、A氏が紙袋を取り出し、私に寄越した。
「これ、さっき言った大沢さんへのプレゼントです」
(つづく)
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社団戦2023最終日・3

2023-10-28 00:11:12 | 社団戦
(25日のつづき)
会場の5階に戻ると、各選手はいい将棋を指していた。将棋ペンクラブ、けっこうやるじゃないか。
藤原父は圧倒的な優勢である。飛金と飛の取り合いのチャンスがあったが、半ば遊んでいる飛車との交換はイヤだと、自重した。これがどう出るか。
木村晋介会長は妙齢の女性との対戦。振り飛車で互角以上の戦いをしているが、勝負事はゲタを履くまで分からない。
元アマ竜王の金子タカシ氏が観戦に来た。
「金子さんも将棋ペンクラブの会員なんだから、ここで指してくれればいいのになあ」
と私。すると相手の方が、「それは有料でしょ」と言った。
なるほど金子氏ほどの全国区になると、暗黙の括りがあってもしょうがない。しかし今回は金子氏の力を借りずともよいようだ。
14時14分、阿部氏勝ち。
15分、ベルク氏勝ち。
木村会長は、ちょっと局面が怪しくなってきた。
17分、藤原息子勝ち。
19分、アントン氏、勝ち。よっしゃ、これでチームの勝ちが確定した。
木村会長は盛り返し、第1図の局面を迎えていた。

私にはここでの最善手が分からなかったが、木村会長は▲4二金(第2図)。なるほどこの迫り方があったか!

実戦は以下△6九成桂▲3二金△同銀▲3一角△2三玉▲2二金△1三玉▲3二金まで、26分、木村会長の勝ちとなった。
広尾しょうぎ教室Aの選手は妙齢の女性だったが、惜しかった。第2図では△同金と取り、▲3一角△1二玉▲4二角成に△4九成桂(参考図)が先手玉への詰めろ。

だがそこで▲3三馬が詰ろ逃れの詰めろで、やはり先手が勝ちに見える。……あぁ私としたことが、木村会長より相手の女性を応援してしまった。
感想戦には金子氏が加わり、豪華版になった。
藤原父はふるえが極み、29分、大逆転負けを喫した。これが将棋の恐さである。
そして残るひとり、Akuさんも大健闘したが、武運つたなく敗れた。
ここでほかのチームの成績を確認しに行くと、上位の3勝チームがすべて勝ったとのことだった。我がチームは個人の勝ち星が少ない。これは昇級も絶望的になったか。
休憩中、大野八一雄七段が来てくれた。かなり久しぶりで、1年半はお会いしていない。
その間私は禿げ上がり見る影もないが、大野七段はそれには触れず、宮嶋健太四段の昇段パーティーのイベントなどを教えてくれた。
私が出席するかどうかは微妙である。ヒトの幸せを祝ってもしょうがない。
さて最終日は3回戦なので、次が今年度の最終戦である。出場選手はいろいろ考えた末、大将を藤原息子君にやってもらうことにした。副将が私。私は強い人と当たって負けるのがイヤなのである。以下、アントン、山野、阿部、山本、木村会長の各氏。指したそうだったベルク氏には申し訳ないが、今回は抜け番である。
対戦相手は、青い騎士団。奇数先手になったので、相手は昨年、山本氏と指したことがあるようだ。そして大将も務めたことがあるという。私が敵の大将格を外したつもりが、結局当たってしまったわけだ。

初手からの指し手。▲7六歩△3四歩▲9六歩△9四歩▲7七角△8四歩▲6八飛△6二銀▲4八玉△4四歩(第1図)

奇数先手なので、私が後手になった。5手目▲7七角に面食らったが、ここで平凡に指すと、相手の狙いにハマる。私は1回戦と同様、△4四歩と謝った。

第1図以下の指し手(ここから手順前後の可能性かなり高し)。▲3八玉△4二玉▲2八玉△3二玉▲1六歩△1四歩▲3八銀△5二金右▲7八銀△5四歩▲6六歩△4二銀▲6七銀△5三銀右▲8八飛△4三銀(第2図)

先手氏の手つきはキビキビしていて、指し手も早い。なんだかもう、勢いだけで負けそうだ。
しかし第1図で先手氏がちょっと手を止め、▲3八玉。以下、ふつうの駒組になった。善悪はともかく、先手の狙いを回避できたので、まずまずだと思った。

第2図以下の指し手。▲6八角△6四銀▲7七桂△7四歩▲6五歩△5三銀▲4六歩△6四歩▲同歩△同銀▲6五歩△5三銀▲5八金左(第3図)

▲6八角に私は△6四銀と出たが、角道が止まっているので、疑問だった。先手氏に▲6五歩と反発され、△5三銀と引くようではおかしい。
私は△6四歩から1歩を入手したが、この筋の歩を切るのは不安なところもある。

第3図以下の指し手。△2四歩▲5六歩△2三玉▲8六歩△3二銀▲8五歩△同歩▲同飛△8四歩▲8七飛△3一角▲5七角△4三金▲8四飛△同飛▲同角(第4図)

私は指す手に窮し、左美濃にトランスフォームした。しかし明らかな方針変更で、作戦負けだ。
▲8五同飛のブッツケに、飛車交換はスキのない先手がよい。よって私は△8四歩と謝ったが、またポイントを取られた。
しかもそこで△3一角が、形勢悪化の上塗り。▲5七角と、今度は8四での飛車交換を見られ、今度は受からない。ついに飛車交換を実現され、決定的に後手が悪くなった。

(つづく)
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第36期竜王戦第3局(後編)

2023-10-27 10:37:36 | 男性棋戦
藤井聡太竜王の封じ手は、5筋の歩を突きだす手だった。これは私のブログだから見苦しい言い訳を書いてしまうが、最初に封じ手の局面を見て、負担になっている角を捌きつつ反撃を見る、5筋を突き出す手だと思った。
ところが読売オンラインの棋士方は、この手以外を指摘する。私は読売オンラインの封じ手予想クイズに応募するので、間違えることはできない。それで、一見妙手そうな森内俊之九段の予想手に乗ったのである。
ところが間違えた。藤井竜王の直筆色紙が飛んで行った。やはり予想手は、正解しても間違えても、自力で考えた手を通したほうが、のちの後悔がない。これはどのシチュエーションにおいても、同様である。
さて本譜に戻り、伊藤匠七段はこの歩を飛車で取った。あら不思議、この2手だけで、2筋の脅威が緩和された。まさに攻めるは守るなり、である。
さらに藤井竜王は飛車をぶつける。2日目の藤井竜王はずいぶん積極的だ。
伊藤七段は飛車を躱したが、藤井竜王は次、銀をぶつけた。そして飛車を転回し、成りこむ。飛車交換なしで、8二の飛車が敵陣に侵入する。その鮮やかな構想に、私はただただ感心するのみである。
むろんこの間、伊藤七段も強烈に攻め、藤井陣も相当あぶなくなった。私が後手をもったらすぐに潰されている。
ところが藤井竜王の守りがギリギリに成立していて、その見切りにも感心させられた。
伊藤七段は藤井玉を受けなしにするが、これを「形作り」という。残り時間も逆転し、伊藤七段は1分。対して藤井竜王は、まだ時間を残している。なんだか、デジャヴを見るようである。
そして藤井竜王は詰ましに行った。矢倉に収まっている玉を詰ますのだから信じられないが、これもいつもの展開である。そしてその詰手順の変化には、△7四桂があった。これは、その位置に歩がないから生じるものだ。
結局、96手まで、藤井竜王の勝ちとなった。本局も藤井竜王会心の勝利で、勝局集が編まれたら載るだろう。
いっぽうの伊藤七段は、もうどうしようもない。伊藤七段だって、ランキング戦から12連勝(!)して七番勝負に臨んでいるのだ。それが藤井竜王の前では3連敗である。心が折れそうではないか。
伊藤七段はシリーズ開幕前、師匠の宮田利男八段の故郷・秋田県で開催される第6局までは行きたい、と語った。しかし現状では、相当厳しくなった。
第4局は11月10日・11日、晩秋の小樽である。
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