一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

「名人戦第4局大盤解説会」に参加する(前編)・次の一手

2010-05-23 15:01:25 | 将棋イベント
東京竹橋・パレスサイドビルで行われた第4期マイナビ女子オープン・予選抽選会が終わったあと、私は引き続いて第68期名人戦第4局の大盤解説会にも参加した。解説は勝又清和六段こと勝又教授と、里見香奈女流名人・倉敷藤花。途中に「懸賞次の一手」がある。
私は男性タイトル戦の大盤解説会に赴くのは初めてで、緊張感をもって臨んだ。
室内前方には3面のスクリーンがあり、いずれもソフトの盤面が映されている。左右のスクリーンにはリアルタイムの局面、正面のそれは検討用とに振り分けられている。これは勝又教授の得意とする解説スタイルである。
北尾まどか女流初段が、私の左に座っている加賀さやかさんに挨拶にいらっしゃる。桜色のきものがよく似合っている。
私が先ほど引いた色紙は中村桃子女流1級だった。その縁でマイナビ一斉予選対局では、中村女流1級に懸賞金を懸けることにしたが、その相手は北尾女流初段なのだ。つまり北尾女流初段にも必然的に懸賞金を懸けることになる。
「先生、今回は先生に1本懸賞金を懸けさせていただきますから、ガンバッテください」
一石二鳥。ちょっと後ろめたいが、両者を応援することに変わりはない。
午後6時すぎ、解説会が始まった。しかし羽生善治名人、三浦弘行八段も持ち時間を残しているので、局面は進まない。正面のソフトは「激指」を使用している。そこで勝又教授が、先日行われた将棋ソフト選手権での、激指の名局を並べる。これが勝又教授もうなる驚異の妙防で、激指が凌いだ将棋だった。いったいいまの将棋ソフトは、どこまで強いのだろう。
左にすわった加賀さやかさんと雑談する。あまり他人の過去は知りたくないが、ほかに話のネタがない。
「加賀さんは何年くらい前から将棋のマンガを描き始めたんですか?」
「15年くらい前かな。『将棋マガジン』に描きました」
「ああ、将棋マガジンは1996年10月号が最終号でしたからね。かなり古いですね」
「そうですね」
「あの号は三浦先生が羽生七冠から棋聖を獲って、それが巻頭グラビアに出ていました」
そのあとは、将棋マガジンが休刊になるとは思わなかった、近代将棋が休刊になるとは思わなかった、という回顧話になった。
名人戦はやや手が進む。勝又教授は向かって右、ノートパソコンを駆使して解説。左手には里見女流二冠が位置し、聞き手のような解説のような役割になっている。スクリーンに将棋ソフトを投影させるため、周辺が暗い。勝又教授はどうでもいいが、里見女流二冠の姿が薄暗くて見づらいのは不満だ。里見女流二冠は今春高校を卒業したから、当然制服姿も見納めとなった。山口恵梨子女流初段も同様で、これも痛い。昨年、将棋会館道場で観た山口女流初段の、きらめくような制服姿を思い出す。
局面。三浦八段に☖2三角という妙角が出て、ここで羽生名人がどう指すか、が「次の一手」の問題になった。
勝又教授の第一感は、攻め合い一手勝ちを目指す「☗6三と」(☖6四角取り)。第2候補はいずれ指すことになるであろう「☗7七玉」。激指の候補手には、浮いている☗6七金を守る☗7九桂や☗7八銀、などがあった。
☗6三とを指したいのはヤマヤマだが、羽生名人なら、すべてを含みに残して☗7七玉と上がると見た。
投票までの15分間を休憩とする。加賀さんも次の一手を書いていたが、そのまま食事に出てしまった。いま加賀さんは忙しい。食事のあとは、そのまま帰宅するのだろう。
休憩後の7時に次の一手が披露される。回答者は150余名で、そんなに将棋ファンが集まっているとは思わなかった。一番人気はやはり「☗6三と」で70数名。2番手は私の予想した「☗7七玉」で、これは40数名いた。
注目の正解は「☗6三と」。残念。よく考えれば、「☗7七玉」は一本☖7五歩と金頭を叩かれるのがイヤミだった。賞品は扇子もしくは棋書、それに勝又教授と里見女流二冠の揮毫の入った賞状がもれなくもらえるという豪華版だ。予選抽選会で色紙を引くのも厳しい倍率だったが、この抽選で当たるのも高倍率である。しかし当たらないことにはダメだ。ああ、素直に「☗6三と」と書けばよかったと思う。
ここから本格的な解説だ。局面は羽生名人の優勢。☖4七飛成の王手に☗5七桂合。後手は☖4五桂と跳ぶ。ここで☗7七玉なら先手の一手勝ちという勝又解説である。
次の第5局は関西で行われるそうで、里見女流二冠は「ぜひ来てほしい」と語る。それには三浦八段が勝たねばならぬが、形勢は芳しくない。なんとか後手(三浦八段)を勝たせようと、勝又教授、里見女流二冠が知恵をしぼる。里見女流二冠が、私たちが読んでない手をいくつも発見して、食い下がる。さすがは里見女流二冠、手の見え方が違うと感心する。
指し手が進んだようだ。☗7五金?☖7四歩☗7六玉!?☖7五歩☗同玉!!
な、何だこの手順は!! 要の金を捨てて上部脱出を図るという構想か。凡人には名人の思考回路は分からぬが、これが正着とはとても思えない。
まったく検討には出なかった順が披露され、勝又教授、里見女流二冠とも、訳が分からないというふうだ。
勝又教授が小倉の現地に、「何が起こったんですか?」とコメントを送った。
(つづく)
コメント (4)
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