一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

八たび大野教室に行く(中編)・スマホ

2011-09-30 00:11:20 | 大野教室
28日に行われたマイナビ女子オープン・里見香奈女流名人・女流王将・倉敷藤花・奨励会1級対矢内理絵子女流四段の一戦は、里見女流三冠の勝ち。
これでシード権を失った矢内女流四段は来期、初の公開予選対局に臨むことになった。もっとも、私は観に行かないけれども。フン!

(前日のつづき)
放課後の食事は、近所の海鮮居酒屋で摂ることになった。参加者は大野八一雄七段、W氏、Mi氏に私。Kun、His、Honの各氏は参加しなかった。きょうはここに植山悦行七段、中井広恵女流六段も合流することになっている。今回はさらにスペシャルゲストとして、野月浩貴七段も参加するとのことだった。
店内は満員。しかし15分ほど待って、席に着くことができた。
ほどなくして、先の3人が現れた。ここで例によって、席の配置を記す。

野月 植山 中井 Mi
   テーブル      壁
大野   一公  W

棋士が何人来ようが、私がテーブルの中央「王将席」に座る。私の向かいは中井女流六段で、これはいつものとおり。別に意識したわけではないが、なぜかそうなる。私も、正面に中井女流六段が座らないと、落ち着かなくなってしまった。
その中井女流六段とは今月に入って、すでに5回目の対面となる。まだ17日だから、けっこうな頻度だ。それも12日の「LPSAマンデーレッスンS」をカウントしないでの数字である。
以前も書いたが、私が沖縄から帰京してから、中井女流六段には迷惑の掛けっぱなしだ。一般の将棋ファンで、これほど中井女流六段に愚痴をこぼした人はいないだろう。あれは身を切られるように残念なことだったが、私はこんな環境の中にいて、本当に恵まれていると思う。幸せだと思う。
野月七段とは、一昨年11月に行われた「蕨市制50年記念将棋大会」でお目にかかって以来だ。実質初対面なので、ちょっと緊張する。野月七段の口グセは「死ね」で、いままでに何人もの同僚を「殺して」いる。私の愚行を聞いたら、顔をしかめて、即「死ね」だろう。
まずは挨拶がわりに、野月七段の著書について、いくつか質問をする。野月七段はねっちょりした話し方をするイメージがあったのだが、実際は言語明瞭、回答は明快だ。貴重な裏話が聞けて、有意義だった。
その野月七段はスマートフォンの伝道師らしく、「これからはスマホの時代」と、みんなに熱弁をふるう。きょうは中井女流六段にスマホを買わせたらしく、中井女流六段が、それと思しきスマホを首から下げていた。ちなみに前日は、植山七段にスマホを買わせたらしい。
そういえば植山七段は、きのうの飲み会で、スマホをゴソゴソいじっていた。
野月七段のきょうのターゲットはW氏で、彼にも買い替えを勧めていた。ただ閉口したのはそれがこちらにも飛び火したことで、それでなくても、みんなが私にケータイを買わせたがっている。とくに植山七段、中井女流六段、W氏が熱心だ。
「オレはケータイいらない。なくても不便じゃないから」
私は強く拒絶する。
「大沢さんがいらなくても、周りが不便なんだよ。連絡を取りたくても取れねーし」
W氏が言う。
「そっちが必要でも、こっちはいらない」
「まったく。去年かおととしだかの社団戦でも、打ち上げ会場に行くときに大沢さんに連絡が取れなくて大変だったんだから。頼むから買ってくれよ」
「そうだよ」
植山七段も加勢する。
「いや私は、プロの先生とメル友になるのはお断りですから。畏れ多いです。それにケータイは彼女に勧められたときでさえ買わなかったんだから、いま買ったら方針が一貫しない」
「そんなこと言ってる場合かよ。あのね大沢さん、昔はいらなかったかもしれないけど、いまは時代が違うんだよ。ケータイは生活に欠かせないものになってる。ケータイだってもっと早く買ってたら、彼女とは違った展開になってたはずだよ」
W氏は熱心だ。
「それはそうだったと思う。あれはオレがバカだった」
「だろ? 26日にAyakoさんと会うのに、ケータイ持ってなきゃヤバイだろ」
「メールならPCがある」
「PCじゃダメなんだなー。24時間送信できない。電話もできない。仮に彼女とメアド交換してたって、PCじゃダメだったと思うよ。とにかく26日までに買おう!」
野月七段らもうんうんと頷いている。野月七段はさっき、近くのケータイ販売店へ行って、パンフレットを貰ってきていた。何という行動力だろう。
「スマホはいくらぐらいするんですか」
W氏が野月七段に聞く。
「この機種だとだいたい○万円だけど、2年契約だと毎月割引してくれるんで、実質タダ、もしくは○万円くらいになる。買い換えより新規のほうがもっと安いよ」
野月七段は立て板に水のごとくしゃべる。あんたは営業マンか。
これはいよいよ、私もケータイ、いやスマホデビューをするしかないのだろうか。W氏は、本気で買わそうとしている。私も今度ばかりは、陥落しそうな予感がした。
(つづく)
コメント (2)
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

八たび大野教室に行く(前編)・心ここにあらず

2011-09-29 00:04:22 | 大野教室
日付変わってきょう29日(木)は、倉敷藤花戦挑戦者決定戦・清水市代女流六段対室谷由紀女流初段の一戦が指される。清水女流六段が勝てば貫禄勝ち。室谷女流初段の勝ちならば、殊勲の銀星。
どちらも悔いのない、いい将棋を指してください。両者とも、等しく応援いたします。

17日(土)は、川口市にある「大野教室」に行った。大野教室とは――。めんどうなので、省略。
それにしても、最近、大野教室に行く回数が増えた。もっとも、将棋を指すことより、そのあとの食事会が目当てなのが情けない。
入室すると、先客が数名いた。W氏、Kun氏、His氏、将棋関係者のMi氏、それと少年。茨城から遠征のHis氏は、LPSA木曜ワインサロン、LPSA芝浦サロン、そしてこの大野教室と三連投である。アマ将棋界は、このような将棋好きのオッサンに支えられているのだ。
早速、大野八一雄七段に角落ちで教えていただく。植山悦行七段には居飛車を勧められているが、私はヒトの教えは守らないので、本局は中飛車に構えた。
序盤、▲3八玉△2四歩に▲2八玉と寄ったのが危険な手。すかさず△2二飛と回られ、作戦負け気味になった。以下普通に指し手を進めると、▲3八銀△2五歩▲○○○△2六歩となるが、この順は上手に1歩を持たれておもしろくない。5筋の歩交換は上手が△5四歩と打つことになるが、2筋の歩交換は上手の駒台に歩が乗ったままだから、下手はこの順を回避すべき、が大野七段の持論なのだ。
よって▲2八玉では▲4八銀が先で、同じく△2二飛なら、▲3六歩△2五歩に▲3七銀が間に合い、上手の歩交換を防げる。
この順は大野七段に教わったのに、「別のこと」を考えていて、ついうっかりしてしまった。
ところが本譜で私は、玄妙な順をひねりだす。
△2二飛以下、▲1八香△2五歩▲1九玉△6二王▲3六歩△7二王▲5五歩△同歩▲同角△5四歩▲3七角、と進んだ。
△6二王で△2六歩なら、▲同歩△同飛に▲2八飛が用意の手。上手飛車交換はできぬので△2七歩だろうが、それは▲3八飛と逃げておいて、将来この歩が負担になると思った。
それで上手は△6二王だが、私は▲5五歩から、手順に角を3七に転換し、ついに上手の歩交換を防いだのだった。
もっともこの順も、以下△4四銀に▲4六歩と突かざるを得ず、必ずしも下手がよくならない。ただ、下手も不満はないところである。
私はそのまま指し手を進める。…ウン?
「ああっ!!」
私は大声を上げた。「なんだこれ! オレ、穴熊を指してるじゃないか!! なんだこれ!! ウワアアアアーーーッ!!」
あ、穴熊を嫌っている私が、自ら穴に潜るとは、なんたることか!!
「いいじゃない大沢さん、それだけ将棋に集中しているということだよ」
と、誰かが言った。
そうなのだろうか。
頭がクラクラした。しかしここで投了するわけにはいかない。対中井戦とは違うのだ。
私は動揺したまま将棋を指し継ぎ、終盤、▲3四歩と桂取りに打つ。桂が入れば▲7四桂が、次の▲8二金もしくは、▲6二桂成と金を取る手を見せて厳しい。
対して大野七段、受ける手もないので、△6九飛と、▲6七銀取りに打つ。
ここで私が▲7八銀と打ったのが弱気な手だった。▲6七銀を守るために銀を投入するなんて、将棋の手ではない。続く△5九飛成にも▲4九金打としたが、これも疑問。ここでカナケを2枚使ったため、攻め駒不足となり、一遍に切れ筋に陥ってしまった。
以下は大野七段に巧妙に攻められ、無念の逆転負けとなった。これは本当に痛かった。
局後の検討では、△6九飛には、予定どおり▲3三歩成でよかったらしい。以下複雑な変化もあるが、これなら、下手が勝ちだったようだ。そもそも大野七段は、▲6七銀を取るために飛車を打ったのではなかったらしい。何てことだ、と思う。
どうも大野七段に教えていただくと、終盤で逆転負けするケースが多い。それも、予定どおりに指せばいいのに、それを変更して敗れるパターンが多い。
必要以上に、プロの影におびえてはいけない――。これは棋力云々より精神面の問題なので、克服はできると思う。
この将棋の途中にHon氏が来て、大人はつごう6名になった。
すぐに大野七段との2局目が始まる。序盤、私は▲6七銀、▲7八金型に組む。
大野七段は△7二飛から7筋の歩を交換にきた。△7五同飛に私は▲7九金。大山流の金引きを拝借したものだが、これが無理筋だった。以下△7二飛に▲7八飛△同飛成▲同玉と進んだが、直後の△2九飛が金香両取りで厳しく、早くも下手敗勢となった。
戻って、▲7五同歩では、▲7七金とするのだった。以下△7六歩には▲同金と取り、▲7八飛~▲7五歩を目指せば、絶好の厚みができる。こう指すのだった。
実戦はボロ負け。15分もかからなかったのではないか。
せっかくプロ棋士に教えていただいているのに、こんなヘタクソな将棋を指してしまうと、申し訳ない気持ちになる。
3時半の休み時間は、詰将棋タイム。今回は手筋モノが多かったので、ノルマの4題はすぐに解けた。しかしそれならすぐおかわりが来るのが大野教室である。
次の4題は最後の1問が解らず、けっきょく不完全燃焼になってしまった。
再会後は少年と。前回は相矢倉の将棋で見事に負かされた。しかしきょうも、まったく勝てる気がしない。ただ本局は、勝った気がする。断定できないのは、将棋の内容をすっかり忘れてしまったからだ。
私は勝った将棋はあまり記憶に残さないので、勝ったと思うわけだが、どうなのだろう。
続いてMi氏と。私の先手三間飛車。対してMi氏は棒銀で来た。Mi氏は例の件を知らないので、これは偶然と思われる。しかし私の動揺は大変なものだった。気の抜けた手を指し、中盤の折衝を終えたところでは敗勢になっていた。
ところが、▲6五桂と金取りに跳ねた手に対し、Mi氏がそれを放置して△6九飛打と二枚飛車で攻めたのが、負ければ敗着という手だった。ここは△5二金と逃げておけばなんでもなかった。
私は▲5三桂成として、先手勝勢。ところがそこで△3九角と打たれたので、飛び上がった。こ、こんな手があったのか…!!
私は力なく▲同金だが、△同飛成以下、詰まされてしまった。しかしどうもおかしい。…アッ!! △3九角には、▲同玉で何でもなかったんじゃないか!!
そうだ…。後手の二枚飛車に、この手は詰めろではないと即断したのは、やはり正解だったのだ。この形に詰みはないと、長年の経験がそう告げていたからだ。
ところが△3九角という見たことのない手を指され、動揺した私が悪手のお返しをしてしまった。だが△3九角は、見たことがないはずだ。だって▲同玉でタダなんだもの。そもそも盤上に現れるわけがない。
こりゃ、重症だ…。私は激しい自己嫌悪に陥ったのだった。
(つづく)
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

復活!金曜サロン(後編)

2011-09-28 00:04:09 | LPSA金曜サロン
スペシャルゲスト氏が、S夫人に二枚落ちの定跡を教えている。LPSA金曜サロンではお馴染みの光景だったが、LPSA芝浦サロンでは初めてである。
スペシャルゲスト氏の、
「これは以前、教えたはずですけどねえ」
のフレーズが聞こえる。
「なつかしい!!」
私は思わず叫ぶ。S夫人の物覚えの悪さも、読みのトロさも、以前のままだ。
私は、
「Sさん、いつも局面が新鮮に見えていいですよねえ。うちのオフクロなんかも、テレビの旅行番組を観てると、以前自分が行ったことがあるのに、ここ行ったことない、とか言うんですよ」
と口走る。するとS夫人が、まっ、と不満をもらした。
「お、大沢さんちょっと、それは言いすぎですよ」
と、スペシャルゲスト氏が苦笑しながら、S夫人の代弁をした。
4局目はFuj氏と。Fuj氏は三段で指しているが段位以上の実力者で、今年の社団戦は9戦全勝。勝負強いところを見せている。
将棋は先番Fuj氏の▲2六歩で始まった。以下お互い飛車先の歩を突き合い、Fuj氏は▲2四歩から▲2八飛と深く引く。Fuj氏の序盤は独特で、▲7六歩△3四歩▲2六歩△8四歩▲6六歩△3二金▲5八金右、となった出だしもある。
本局は、後手の私がひねり飛車にした。中盤、△3六歩▲同歩△同飛にFuj氏は▲3五歩と退路を封鎖したが、構わず△同角が強手。▲3五同銀なら△5六飛と金を取り、攻めが繋がるという読みだ。
Fuj氏、やむない▲3七歩に、私は△2六飛と飛車交換を強要。以下敵陣に飛車を打ちこみ、この将棋はもらったと思った。
しかしそこから私は例のことを思い出してしまい、指し手がヨレヨレになってしまう。疑問手を連発し、無念の逆転負けとなった。
感想戦でも私は上の空。もう、しゃべる気力がないのだ。本当に、どうしようもない。これではFuj氏にも失礼で、申し訳ないことをした。
S夫妻が帰るようだ。S夫人が私に、じゃ! とわざわざ言いに来た。
S夫人、さっきの私の言葉におかんむりだったようだ。温厚なS夫人を怒らせるとは、私もどうかしている。ちょっと口がすぎました。申し訳ありませんでした…。
5局目に入る。いつもの芝浦サロンでは考えられない局数だ。もちろん「多い」のだ。言うまでもないが、こんなに将棋を指せるのも、多くの会員が来ているからだ。再び書くが、これが中井効果、そしてスペシャルゲスト効果である。
現行の芝浦サロンのシステムでは、指導対局を終えた会員は、すぐ帰ってしまう。彼らをどうやってサロンに留まらせるか。ここがLPSAの思案のしどころであろう。
Hon氏と対局。こちらが漠然と構えていたら、Hon氏に雁木から▲4五歩△同歩▲3七桂と攻められ、数手後に受けがなくなったので愕然とした。
傍らに石橋幸緒女流四段が来て、Hon氏に
「ね? 破壊力抜群でしょ?」
と言った。この攻めは、石橋女流四段の直伝だったようだ。
私もさすがに敗戦を覚悟したが、実戦はHon氏に一失があり、私の勝ち。これで全5局、有利な将棋は負けて、不利な将棋は勝った。p。
このあとは、スペシャルゲスト氏とO氏による、大盤解説となる。これも金曜サロンの名物企画だった。
題材は先日行われた、マイナビ女子オープン・中井広恵女流六段と貞升南女流1級との一戦。本来なら中井女流六段が解説するところだが、中井女流六段はまだ指導中だ。
将棋は、女流棋士には珍しい、角換わり。O氏は相居飛車の定跡に精通しており、LPSA女流棋士より形に明るい。腕に覚えのあるスペシャルゲスト氏も、O氏の意見を参考にしながら指し手を進める、という按配だった。
中盤、中井女流六段の▲2六角がやや疑問だったが、対して貞升女流1級が△2二角と打った手がそれに輪をかけた悪手で、そこから中井女流六段の指せる岐れになったようだ。結果も中井女流六段の快勝。
この将棋を見る限り中井女流六段、マイナビ女子オープンでは、かなりの快進撃が期待できそうだ。

午後8時もすぎ、1日限りの「金曜サロン」は終了。約1年ぶりに駒込の雰囲気が味わえて、本当に楽しかった。
放課後はみんなと食事会。今回はちょっぴり豪華に、居酒屋に繰り出した。個室が充てがわれ、参加者と席順は以下のとおりとなった。

入口
Fuj Tod Kaz Kun
   テーブル    Hon
SP 中井 W 一公 

今夜は中井女流六段を正面から拝めなかったのが、残念だった。
人間、自分の幸福は分からないものである。なくなってから、初めて気づく。言い換えれば、いまあるものが大切か否か確かめるには、もしこれがなくなったら…と考えてみればよい。
なくなってからでは、もう遅いのだ。
さて、きょうの席でも私の嘆き節が響きわたったのだが、読者ももう、飽きたろう。
私もいささか、書くのが疲れた。
まあそれはともかく、スペシャルゲストを交えての談笑は、楽しかった。あのころはこんな楽しい思いを、毎週していたのだ。いまでは夢の話である。
コメント (4)
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

復活!金曜サロン(前編)

2011-09-27 00:35:10 | LPSA金曜サロン
16日(金)のLPSA芝浦サロンは、中井広恵女流六段(天河)の担当だった。代表理事を退いて久しい中井女流六段の芝浦登板は何回かあるが、いずれも私はお邪魔していない。例えばこの12日も「LPSAマンデーレッスンS」のゲスト講師だったが、私が受けなかったため、対局は叶わなかった。
最近は中井女流六段に恋愛相談ばかりしているので、きょうこそ将棋の指導対局を受けたい。なかんずく今回は、かつてLPSA金曜サロンの顔だった某氏が、スペシャルゲストの手合い係として復活する、との噂があった。1年ぶりに、金曜サロンの雰囲気を味わえるのか? 私の胸は、久しぶりに高鳴ったのだった。
きょうは午後3時で仕事を上げ、芝浦に向かう。入室すると、中井女流六段のハツラツとした姿とともに、多くの会員の姿があった。中井女流六段は6面指し。S夫妻は、久しぶりの夫婦揃いぶみだった。やはり「中井効果」は大きい。
ただ、手合い係は大庭美夏女流1級だった。スペシャルゲストは、どこへ行ったのか。
まず、大庭女流1級から、島井咲緒里女流初段の直筆扇子をいただく。芝浦サロンポイントカード・100ポイントの賞品だ。しかし島井女流初段が結婚してしまったいまは、喜びも半分である。それを知るのがあと1ヶ月早かったら、別の女流棋士を所望していたのにと思う。
中井女流六段の指導はまだ空きがないので、一般対局を行う。まずはKus氏との角落ち戦。Kus氏は最近、二段に昇段したそうだ。LPSAの昇段規定は厳しいので、この昇段は誇っていい。上手角落ちは厳しいが、これがLPSAサロン流。手合いは下手が自由に決められるのだ。
将棋は、Kus氏の猛攻を受け大苦戦。▲2六桂▲6一竜、△3二玉の局面で、下手が▲1四香と打ったのが好手。やむない△同香に▲同桂△1三銀▲1一角△3一金(△1四銀は▲2二金で寄り)と進む。
ここで下手が▲2二金と詰ましにいったのがマズかった。△2二同金▲同桂成△同銀▲同角成△同玉▲3一銀△3三玉は、上手の玉が逃れてしまった。
こんなに慌てずとも、真綿で首の指し方をしていれば、上手は指しようがなかった。
下手に緩めてもらった一局。
時間はたっぷりあるので、中井女流六段とはまだ指さない。
2局目はTod氏と。あまり約束を守らないTod氏、きょうここへ来るのは怪しかったが、しっかり来た。彼に対する評価を改めなければならない。
手合いは私の二枚落ち。前回は同じ手合いで私の快勝だったが、今回はTod氏が力を出した。私の△5五歩~△5四金に正面から迎え討ち、飛車角を切っての猛攻に、私もタジタジ。さすがに敗局を覚悟した。
▲6三と、△7三桂△8三玉の局面で、下手が▲7三とと桂を取ったのが敗着。△同玉で上手玉が広くなってしまった。▲7三とでは▲7二金と張りつかれていたら、次の▲7三とが厳しく、上手が負けだった。▲6三とのような攻め駒は、タネ駒として活用したほうがよい。
これで2連勝。私は心身ともズタズタの状態なのに、勝負は勝ってしまう。ここが将棋の難しくもおもしろいところだ。
スペシャルゲスト氏が、W氏とともに入室した。遅い昼食を摂っていたらしい。手合い係をしないのは残念だが、これで役者は揃った。金曜サロンの復活である。
一休みしていると、Tod氏がパチパチやりながら、▲9八香、▲9九玉、▲8九桂、▲8七銀、▲7七銀、▲8八金、と並べ始めた。
「…お、おぉいTodさん!! 何を並べてるんだよ!!」
「えっ? …あっ!!」
「オレの前で穴熊を並べるなんて、何のイヤミだよ!!」
「ご、ごめん、つい…」
まったく、なんだコイツは! 油断も隙もありゃしない。
すっかり気分を害して、3局目、いよいよ中井女流六段に教えてもらう。
思えば半月前、ここであのひとに、最後の将棋を教わったのだ。あのときの苦痛がよみがえる。
「サイン勝負で、お願いします」
私は内心の動揺を隠して、懐かしいフレーズを述べる。
対局開始。私の三間飛車に、中井女流六段は居飛車。「穴熊は指せないし…」とつぶやき、天守閣四枚美濃に囲った。
くっ…ここでもか。しかし、指しづらくなった。本当に将棋が、指しづらくなった。穴熊も棒銀も、これから事あるごとに出てくる。そのたびに心をかき乱されていては、体がもたない。
中井女流六段は無理攻めに出る。これは私が咎め、角桂交換の駒得になった。
しかし私が頑張れたのは、そこまでだった。ちょっと、将棋を指すのがつらくなった。
中井女流六段、△8六歩の垂らしに、私は「負けました」と投了した。
「エエーッ!?」
大仰に驚く、中井女流六段。
「もうダメです。戦意喪失」
「だってこっちが不利の局面でしょ。これじゃ、感想戦ができないじゃない」
「…すみません」
私はうなだれた。せっかくの中井女流六段との指導対局だったのに、なんてことだと思う。
こんな体たらくでは、私が芝浦サロンをフェードアウトするのも、時間の問題であろう。
(つづく)
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

パーフェクト室谷由紀女流初段に告ぐ

2011-09-26 00:05:17 | 女流棋士
このブログは、トップのエントリの下に、テキスト広告が入る。内容はエントリと関係ないが、ときどき、トップもしくは直近のエントリの内容に関連したものが掲載されることがある。
25日の18時40分にブログを見たら、以下のテキスト広告が掲載されていた。

「別れさせたい2人がいる」
適切・迅速・安価なご提案が可能。ご相談&お見積りは一切無料です。
URL→

バカヤロ。こっちはそこまで落ちぶれちゃいねーんだよっ!

29日(木)は、倉敷藤花戦挑戦者決定戦・清水市代女流六段対室谷由紀女流初段戦が行われる。
言うまでもないが、挑戦者決定戦に進出した、パーフェクト室谷女流初段の活躍は見事だった。この実績ですでに、LPSA中堅女流棋士のそれを上回ってしまった。そのルックスから、人気先行の感があった室谷女流初段だが、これで立派に、実力者の仲間入りを果たしたといえる。
しかし室谷女流初段は次に勝って、タイトル戦に出なければならない。昨第18期の挑戦者は岩根忍女流二段だったが、では挑戦者決定戦の相手は誰だったか。甲斐智美女王(当時)・女流王位、と即答できる人はいないだろう。第17期の挑戦者は中村真梨花女流二段だったが、挑戦者決定戦の相手は誰だったか。本田小百合女流二段、と答えられる人はいるだろうか。
挑戦者決定戦の敗者など、すぐに忘れられる。タイトル戦は、挑戦者決定戦に進出するだけではダメなのだ。決定戦に勝って、檜舞台に上がらなければ意味がないのである。繰り返すが、パーフェクト室谷女流初段はこの勝負、絶対に勝たなければならない。
それには「イメージ」が大切だ。挑戦者決定戦に勝って、マスコミに取材を受ける自分をイメージする。このトレーニングを対局当日まで続ける。その際、相手の清水女流六段を「強い」と思わないほうがよい。「いろいろあっても、最後は自分が勝つ」と思いこむ。「勝ちたい」はダメだ。それでは願望になってしまう。「勝つ」。あるいは「もう勝ったも同然」と、完了形にしてしまうのがよい。
具体的には、清水女流六段が負けた将棋をとことんまで並べる。「清水女流六段の負け」を脳内に植え付けるのだ。なんだ、清水さんも意外と大したことないじゃない、と考える。
反対に、自分の勝局もとことんまで並べる。そのとき、室谷女流初段は次の将棋でゴキゲン中飛車を指すだろうから、ゴキゲン中飛車で快勝した将棋を並べるのがよい。私、こんなに強いんだ! とイメージする。これで29日は完璧である。
パーフェクト室谷由紀女流初段の、健闘を祈る。
コメント (8)
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする