一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

G.W.九州旅行第2日・温泉2つ、募金2つ

2010-05-02 02:43:30 | 旅行記・G.W.編
5月1日の午前1時近くに鹿児島中央駅に着いた私は、そのまま駅前のネットカフェに入った。昨年までならカプセルホテルを利用するところだが、今年は旅行記を書く必要がある。
部屋番号は1番。縁起がいい。つきあたりの本棚に女のコの顔が目に入る。末次由紀・作画「ちはやふる」の主人公・綾瀬千早だ。その第1巻が表紙を正面にして、置かれていたのだ。
「ちはやふる」は船戸陽子女流二段の愛読書。また天の声が聞こえる。
(九州いいなあ。馬刺し食べたい)
(ば、馬刺し? それ熊本ですよね。そこへ行けと?)
(別に行かなくてもいいですけどー)
(あ、あのそれ、お土産に買っても、先生次の金曜サロン担当は28日でしょう? そこまで持ちませんよ)
(じゃあ焼酎。霧島酒造の焼酎)
(せ、先生、この前の女流王将戦で本田先生に負けちゃったでしょう? ダメです)
(ええー? ショボーン)
(わ、わかりましたよ。何か見つくろいますよ)
……。まあ、船戸女流二段の天の声は無視であろう。
いまから鶏照焼弁当を食べるわけにはいかぬ。知人からいただいた和菓子を旅行カバンにしのばせていたので、それを1つ食す。
午前4時すぎにアップして、仮眠。しかしこれが正常な旅行とは思えない。どこかおかしい。

陽が昇って1日の朝。この日も予定が未定である。旧国鉄宮之城線の代行バスに乗って廃線跡の探索でもしようと思ったが、一足先にバスが出てしまい、断念。最近は長期の旅行でも時刻表を携行しないので、こういう事態がまま起こる。しかし何にも縛られない旅もいい。
前日は風呂に入らなかった。とりあえず温泉である。指宿の砂風呂に入りたいが、あそこは混んでいるだろう。桜島にいい温泉がありそうなので、そこへ行くことにする。
バスで鹿児島港へ向かい、そこから桜島フェリーで桜島へ。あまり知られていないが、このフェリーは24時間運航だ。料金も150円と安く、気軽に行き来できる。もっとも今回私はSUNQパスを持っているので(SUNQパスはフェリーも乗れる)、いくらでも構わないのだが。
桜島フェリーは大きい。とにかく大きかった。私は客室で前夜買った鶏照焼弁当を食べる。夜食が朝食に変わったわけだ。ちょっと饐えている気がしたが、構わずほおばった。
10時55分、桜島港着。フェリー改札近くにある案内所でパンフレットをもらって検討する。桜島港から南東に向かえば、ホテル経営の温泉がいくつかある。しかし北東にもこじんまりとした温泉センターがあり、こちらに惹かれる。料金も300円と手ごろだ。
待合室で待っていると、職員のおばちゃんが火山灰の掃除をしている。桜島ならではの光景である。しかし灰が舞って、チリトリにはほとんど灰が入っていないように見えるのだが。
11時25分発の鹿児島市営バスで「白浜温泉センター」へ向かう。定刻2分遅れの11時42分、センター着。下車したのは私とおばあちゃん2人。観光客のほとんどはホテルの温泉に入るのだろう。
1日半振りの風呂は気持ちがよかった。しかもそれが温泉だから最高だ。小さいながらも露天風呂が造られてあり、大いに満足した。
脱衣場で服を着ていると、地元の人と思しき全裸のご老人が、長椅子に座ったまま、私に何か話しかけてくる。しかし何を言っているか分からないので、適当に相槌を打っておく。
体重計に乗る。またもや信じられない数字を指している。この体重計は壊れていると考える。
ご老人が「カゴシマ?」と言う。この意味は分かる。
「(鹿児島市ではなくて)東京から来ました!」
私がそう叫ぶと、痩せ細ったご老人は嬉しそうな顔をした。
「それはたいへんやったなあ」
福岡までは大したことはない。今回は、鹿児島に来るほうが大変だった。
ご老人は、背中をゴソゴソやっている。背中に貼ってある2枚の膏薬を剥がしたいようだ。私が背中に回って、剥がしてあげる。よほどナニを窺おうかと思ったが、さすがにやめた。
ご老人は、おおきに、と言って風呂場のドアを開けた。鹿児島でもおおきに、というのだと思った。
12時56分発のバスで引き返す。乗客は私を含め3人。運転席の後ろに、5歳前後の子供たちが描いたと思われる、男性の顔が何枚も貼られてある。その下にたどたどしい字で
「うんてんしゅさん、ありがとうございます!!」
と書かれてある。あの男性の似顔絵はバスの運転手さんだった。ローカルバスならではの車内である。
途中で1人乗り、計4人のまま、終点桜島港で下車した。
そのままフェリーに乗るのも味気ないので、港付近の遊歩道をぶらぶらする。長さ100mもある足湯があるが、ひとりで浸かる気はしない。さらに歩くと、桜島ビジターセンターがあった。こういう施設はたいてい無料なので、入る。
中は当然ながら、桜島の案内だ。大正12年の噴火がすごかったらしい。今年の噴火は544回。前日も噴火したという。ちなみに昨年は755回。じゃあ今年は多いや、と驚いてはいけない。一昨年の2008年はわずか80回、その前数年も似たようなものだから、ここ1、2年の噴火数が異常に多いということだ。
展示室の出入口に、桜島を模した募金箱がある。こういうのは困る。無料で出るのは気がひけるし、おカネを出すのも惜しい。
入口近くに受付のお嬢さんがいたので、彼女の眼がこちらに向いたのを見計らって、100円を「桜島」に募金した。
帰り際、月読神社という面白い名の神社があったので、お参りする。お賽銭は100円。いままでは5円か10円だったから、たいへんな奮発だ。それはともかく増額したのだから、こちらの願いも叶えてもらいたい。ブツブツ…。
2時45分のフェリーで鹿児島港へ戻る。フェリーから桜島を望むと、モクモクと噴煙が上がっていた。
メーデーの行進をやっている。昨年の日は、愛媛県今治で見た。そしてその翌日私は、松尾香織女流初段の出身地である、広島県呉市下蒲刈島へ向かったのだった。
鹿児島へ来ると、いつも寄る中華料理屋がある。鹿児島中央駅を出た右にある一番街というアーケード街の中に、その店はある。ここはラーメンが自慢なのだが、私はいつもチャーハンを頼む。料理の前に、食べ放題のお新香が出るのが特色だ。これは鹿児島特有の慣習だと思う。名古屋の喫茶店でコーヒーを注文するとピーナッツが付いてくるのと同じだ。
出されたチャーハンはふつうだが、野菜も多く、美味。私はこうしたなんでもない店で食事を摂るのが好きだ。洒落た店に入るのは、彼女ができたときのために、取っておく。食後に乳酸飲料が出てきて、なんだか知らないが大いに感激し、店を出る。
駅前に戻ると、中高生と思しき男女が、街頭募金に立っている。この集団を素通りするのは厳しい。ブレザー姿の女子がいい。しかし無視する。今度はセーラー服の女子だ。
我慢できなくなって、100円を募金する。しかし1日に2回も募金をしたのは初めてだ。
鹿児島中央駅下にある「アミュプラザ鹿児島」の広場がすごい人だかりだ。「TAO」という和太鼓のグループのステージが4時からあるらしい。なんだか知らないが、世界50カ国で開催し好評を博したらしく、いまや「TAO」は、九州が世界に誇る和太鼓のグループらしい。
男6人、女性3人で演奏(というのか?)が始まったが、皆さんさすがに力強い。笛やシンバル(?)などの異種楽器にコミカルさも取り入れて、聴衆を飽きさせない。…あれっ!? 北尾まどか女流初段!? いやまさか。人違いだった。いくら多芸の北尾女流初段といえ、TAOでシンバルは叩かない。上田初美女流二段にも見える。しかし世の中には、似た人がいるものだ。
演奏が終了して、4時40分。ちょっと中途半端な時間である。このまま天文館あたりへ繰り出してもいいのだが、時間の無駄になりそうな気がする。
4時57分発指宿・山川行きのバスがあったので、これに乗る。いまから砂むし温泉に入ろうというわけである。何といってもタダだから気楽なものだ。
しかし指宿砂むし温泉「砂楽」に着くには、2時間もかかってしまった。さらに焦ったのが、帰りのバスがもうなかったこと。1年前の私なら近くにありユースホステルに泊まるのだが、この日も私はネットカフェに戻り、ブログを更新しなければならない。これ、やっぱりおかしい気がする。
もう陽は暮れているが、そこそこの客はいる。しかし午前中は整理券を発行して数十分待たされる。夜なら時間待ちもないし、効率的なのだ。
浴衣に着替えて、熱めの砂の上に乗る。おっちゃんが砂をかけてくれる。いままではおばちゃんばかりだったので、これは珍しい。しかしおっちゃんはバサッ、バサッと手際よく大量の砂をかけてくれ、熟練の技を見た思いだった。
「お客さんは砂むし初めて?」
「いえ何回か。ゴールデンウイークのときは毎年来てます」
「おお」
「でも去年は山川の砂むしに入ったんですけど、やっぱりこっちが良くて、今年はここに来ました」
「ここも第3セクターから民間委託にしようという話はあってなあ。世間は不況やけども、ここはお客さんがようけ来てくれるんで…」
この大不況の折、めでたい話題だと思う。
私が砂むし温泉に入ったのは5、6前だったか。砂を掛けられるや全身がドクドクと脈打ち、指の先からも汗が出た。10数分後砂から上がると、浴衣はグッショリ。そのまま温泉に入って出た時は、いままでにないサッパリ感を味わった。いまは私も慣れてしまったので、体もあまり反応しない。顔に汗もかかない。しかも今回は、昼前にすでに温泉に入ってしまっている。あのグッショリ感は、初体験特有の症状と思う。
とここまで書いて、船戸女流二段は砂むし温泉に入ったことがあるのだろうかと思った。
フナトヨーコのグッショリ…。ナ、ナカクラヒロミの、グッショリ…。ヤ、ヤマ、ヤマグチ…。
指宿駅前まで歩いていく。バスの足がなくなっては、JRを利用せざるを得ない。私は鉄道ファンだが、今回の旅行ではアンチだ。鹿児島中央までの料金は970円! こんなカネ、バカバカしくて出す気になれない。4つ前の谷山までは820円だ。ここからなら市内バスが走っているだろう。少しでも出費を少なくするべく、私は谷山までの切符を買う。
午後8時36分指宿発の列車はガラガラだった。そしてバスと較べて早い。やはり鉄道はいいと思う。午後9時30分、谷山で下車。駅前に中華料理屋があったので、入る。この店の前は何回か通ったことがあり、いつか暖簾をくぐってみたいと思っていた。
チャンポンと半チャーハンを注文。昼食と大して変わり映えがしない。私は日本の各地を旅行しているほうだと思うが、食に関してはほかの旅人に大きく後れを取っていると思う。しかし有名店に訪れて舌鼓を打つことが、必ずしも正着とは思わない。
店のオヤジはさえない感じだったが、料理は美味かった。
店を出て、バス停へ向かう。谷山駅前が見えてきた。時刻表で時間を確認する。鹿児島行きのバスがある。22時03分が最終のようだ。えっ、22時03分!? 慌てて時計を見る。1,000円のデジタル時計は「21:58」を示していた。いやこれ、あぶないところだった。
後ろからおばちゃんがとぼとぼとやってくる。
「22時3分のは出ちゃいました?」
「いやまだ来てませんよ」
おばちゃんはほっとしたように、後ろの石垣に腰を下ろす。
定刻を5分過ぎた午後10時3分、信号の向こうに最終のバスが見えた。
「来ましたよ」
私は振り返っておばちゃんに言うと、ふたりで顔を合わせて、にっこりした。
コメント (6)
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