一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

31日はA級8回戦!

2019-01-31 00:06:17 | 男性棋戦
日付変わって今日31日は、A級順位戦8回戦の一斉対局が行われる。組み合わせと勝敗は以下の通り。

▲羽生善治九段(6勝1敗)VS△豊島将之二冠(6勝1敗)
▲広瀬章人竜王(6勝1敗)VS△深浦康市九段(1勝6敗)
▲佐藤康光九段(4勝3敗)VS△糸谷哲郎八段(4勝3敗)
▲久保利明王将(3勝4敗)VS△三浦弘行九段(3勝4敗)
▲稲葉陽八段(2勝5敗)VS△阿久津主税八段(0勝7敗)

当ブログで注目するのは阿久津八段である。前回阿久津八段は糸谷八段に敗れ降級が決定した。何と、A級16連敗のおまけまで付いた。
だが順位戦はこれで終わりではなく、来期の順位が懸かっている。すなわち阿久津八段が残り2局を勝ち、深浦九段が2局を負けると、2人の順位が逆転しながら降級となる。
順位1枚が昇降級に絡むのは周知の通り。B級1組だって、1位と2位では半ゲーム差が生じ、大違いである。実際阿久津八段自身、前期はB級1組で6勝4敗の成績ながら、順位2枚の差で、昇級できた経緯がある。
こう考えると、「米長哲学」の嚆矢とされた1970年3月の大野源一八段VS米長邦雄七段の一戦が、後付けの作り話に思えてくる。つまり、「自分(米長七段)にとっては重要じゃないけれど、相手(大野八段)にとって重要な対局」だったわけではなく、昇級の懸かった大野八段はもちろんのこと、米長七段にとっても来期の順位が懸かった、重要な対局だったことが分かる。
つまりそれこそが「ザ・順位戦」であって、今期B級1組の渡辺明棋王のように、年末に昇級を決め、年明けの3局が完全な消化試合、というほうが異常なのだ。
というわけで、阿久津八段は本局も負けるわけにはいかない。もし負けたら最下位での降級が確定し、最終局が完全な消化試合となってしまう。
阿久津八段は先日の王位戦予選決勝で佐藤天彦名人に勝ち、見事リーグ入りを決めた。A級より上の棋士に勝つのだから、実力はあるのだ。今日は力一杯、頑張ってもらいたい。
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1月22日と28日の訪問者数と閲覧数

2019-01-30 00:50:55 | プライベート
28日に歯医者に行ったのだが、私の説明不足からか、健康な歯を治療されてしまった気がする。
何をやっとんのだ……。

   ◇

今月もgooのアクセス解析キャンペーンがやってきた。

当ブログサイト「goo」には2ヶ月に一度「アクセス解析の体験キャンペーン」がある。これは、ふだん有料の「時間ごとの訪問者数、時間ごとの閲覧数、ページごとの閲覧数、閲覧元URL、ブラウザリスト」が、奇数月下旬の10日間だけ、無料で見られるものだ。
今月の場合、たとえば初日の22日は、前日までの10日分のデータも見られるので、実質1月11日から30日まで、20日分のデータが見られることになる。
では、1月22日、28日の時間ごとの訪問者数、閲覧数を記そう。


1月22日「伊藤女流二段、負ける」

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1月28日「藤井システムの快勝譜」

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以上である。
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第45期女流名人戦第2局

2019-01-29 00:11:48 | 女流棋戦
里見香奈女流名人と伊藤沙恵女流二段が激突する第45期女流名人戦第2局は、27日に島根県出雲市「出雲文化伝承館」で行われた。
まず出雲といえば、ほぼ出雲大社(地元の人は「おおやしろ」と呼ぶ)のことを指す。出雲大社は全国から神様が集まり、縁結びの神として有名である。もちろん私も何度か参拝したことがあるが、しかしとんと御利益がない。
まあ縁結びは男女の仲だけではないが、私の場合、あらゆる縁から見放されている気もするのだが、気のせいだろうか。
また出雲地方は旧大社線の廃線跡、旧大社駅、一畑電鉄の鄙びた駅舎、沿線風景など、鉄道マニアの観点からも見どころが多い。最近は参道までの両側にいろいろお店も建って、伊勢神宮のおかげ横丁のような様相を呈してきている。ここ出雲大社周辺だけでたっぷり1日観光できる、ナイススポットである。

そしてこの出雲対局は女流名人戦の恒例で、今期で9年目である。これは里見女流名人が出雲市の出身だからで、里見女流名人が女流名人でいる限り、出雲対局を行いたいという地元の要望があるのだ。
むろん挑戦者はアウェーになるが、そこは地元の人も公平に応援するよう心掛けているようだ。とは言っても現実的には無理な話で、どうしたって里見女流名人を応援するだろう。伊藤女流二段が指しにくいことに変わりはない。
将棋は先番里見女流名人の中飛車で始まった。伊藤女流二段の対策が注目されたが、4手目に△3二飛と振った。
これが分からないところである。
私は伊藤女流二段を居飛車党と見ているのだが、なんで飛車を振るのだろう。
と思ったら、両者はこれが公式戦16局目だが、過去8回、相振り飛車があるという。これは異常な数字である。里見女流名人には相振り飛車がよい、と伊藤女流二段のアンテナが示しているのだろうが、両者の対戦成績は伊藤女流二段の3勝12敗である。これでは伊藤女流二段の作戦が成功しているとはいえず、ふつうに居飛車で立ち向かったほうがいいと思えるのだ。
もっとも伊藤女流二段も言い分はあって、中飛車と三間飛車の対決では、後者のほうが模様が取りやすいらしい。少しでも有利を求めるのは現代将棋の特徴だ。だから中飛車側も居飛車に戻したりして訳の分からない戦いになるのだが、果たして本局の里見女流名人も、19手目に▲2八飛と戻してしまった。
ちなみに、関係者による戦型予想は、畠山鎮七段が「初手▲5六歩からの相振り飛車」で、唯一正解だった。しかし▲2八飛と戻したものだから「これじゃあ全員ハズレです」と苦笑する一幕があったようだ。しかしむろん、畠山七段は立派な正解である。
本譜に戻り、里見女流名人は居飛車もうまい。となると、伊藤女流二段の不慣れな?振り飛車だけが残っていまい、この取引は里見女流名人に分がある。すなわち、本局も里見女流名人が勝つと思った。
その後は果たして里見女流名人の攻めが決まり、ツイッター解説の池永天志(たかし)四段は「先手勝勢」の札を上げる。
しかし将棋は分からない。このまま里見女流名人が押し切るのかと思ったら意外にグズグズし、何と池永四段の形勢判断も「形勢不明」に戻ってしまった。
この手順中、▲6六の角を△6四の香で取らせたのがどうだったのだろう。そこまで気前良くせずとも、じっと角を逃げておいて先手十分だったのではないか。
ただそこから里見女流名人が踏ん張り、再び「優勢」とする。そして里見女流名人「▲5二飛」。ここで伊藤女流二段が投了してしまったから驚いた。

いや専門的に見ればもう投げ時なのだろうが、将棋には「流れ」というものがある。少なくともここまでの伊藤女流二段の粘りを見ればもう少し指し継ぎそうなもので、ポッキリ折れたなあ、という印象がぬぐえなかった。
というわけで、2局を終わって里見女流名人の2連勝。これは防衛の色が相当強い。いっぽうの伊藤女流二段は、自分の色を見失っていると思う。里見女流名人を意識しすぎて、自分の将棋を指せていないと思う。確かに相手は元奨励会三段だけれども、過去はそこまで実績のない女流棋士が何人も、里見女流名人からタイトルを奪っているのだ。伊藤女流二段にも勝機はあるはずなのだ、もう2局が終わっちゃったけれども。
とにかく第3局である。勝ち負けはとにかく、伊藤女流二段本来の将棋を期待したい。
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藤井システムの快勝譜

2019-01-28 00:56:11 | 将棋雑記
25日にAbemaTVを観ると、王座戦二次予選・藤井猛九段と木村一基九段の一戦を流していた。私は日本将棋連盟の携帯中継は契約していないので、こういう無料中継は本当にありがたい。
将棋は先番藤井九段の藤井システム。何だか久しぶりに、正調藤井システムを見た気がする。後手の木村九段は、穴熊に潜る気満々だった。藤井システム相手には、やはりこうでなくちゃいけない。

第1図以下の指し手。▲2五桂△4二角▲4五歩△1二玉▲4四歩△同銀▲4五歩△同銀▲1三桂成△同桂▲4四歩△5三金▲1五歩(第2図)

第1図で▲2五桂と跳ねたのがすごい。ここは▲1五歩と伸ばしておく手もあるが、△1二香との交換はおもしろくないのだろう。大山康晴十五世名人は「最初のチャンスは見送る」と言ったが、藤井システムは「隙あらば攻める」のだ。
△4二角に▲4五歩。私はこの局面から見た気もするのだが、アマ同士なら八割方先手が勝つ。というか、プロ同士でもこの局面は先手がおもしろいのではないだろうか。
木村九段はたまらず△1二玉と寄り、藤井九段は▲4四歩△同銀に▲4五歩! 芹沢博文九段は、歩切れになっても1歩補充できる状況にあればよい、と言った。そしてその歩は1三に落ちている。
そしてその歩で▲4四歩。△4二角・△4三金の形は、ここに歩を打つ手が絶好である。それが実現したわけで、これは先手負けられない展開だろう。
そして△5三金にゆうゆうと▲1五歩。ここからでも端攻めが間に合うのかと、私は唸った。さすがに本家藤井システムは違うのだった。

第2図以下の指し手。△2二銀▲1四歩△1五歩▲5六銀△3六銀▲1三歩成△同銀▲2六歩△4六歩▲2八桂△4七歩成▲3六桂△5八と▲同金(第3図)

木村九段の△2二銀は仕方あるまい。△1五歩には▲5六銀とぶつける。藤井九段著「四間飛車上達法」には、振り飛車は駒の交換を迫って捌くのがよい、と説かれていたが、それを実践している。
▲1三歩成△同銀に▲2六歩は、何となく予想できた手。銀バサミができるわけではないが、△2五銀と引かせたくないところである。
木村九段は△4六歩と指し、お互いカナ駒を駒台に乗せたが、この交換は振り飛車の望むところ。また差が拡がった気がした。

第3図以下の指し手。△5一桂▲6四歩△同歩▲1四歩△同銀▲2二銀△3五歩▲4三歩成△同金▲1一銀成△1三玉(第4図)

第3図からしばらく目を離していたが、再度見ると、▲2二銀の跳び蹴りが飛んでいた。
これを△2二同玉は▲4三歩成で一丁上がり。先手は角の利きが素晴らしい。藤井九段は「四間飛車上達法」で、対穴熊に▲6五歩の重要性を述べていたが、それはすべての作戦に当てはまると思った。

第4図以下の指し手。▲4九香△3六歩▲4三香成△同桂▲1二金△2四玉▲2二角成△3四玉(第5図)

▲2二銀の局面からまた目を離し、次に見たのは第5図の局面である。
後手玉は屋根裏から命からがら逃げだしたが、よく見ると先手の▲1一成銀・▲1二金もヒドイ形だ。この数手前、先手は▲4九香とこれ以上ない田楽刺しを実現させ、駒得を果たした。しかしその金を1二に使うのでは効果が薄い。もっと有効な手はなかったものか。
画面では藤井九段が俯いて考えている。藤井九段の駒台には何もない。急に手段に窮した感じで、ネットの掲示板を見ると、「藤井九段やり損なったんじゃないか」の声が大勢を占めていた。

第5図以下の指し手。▲4七金△5五歩▲1五香△同銀▲3六金△5六歩▲4八飛(投了図)
まで、79手で藤井九段の勝ち。

目を離すと、▲4七金△5五歩の2手が指されていた。▲4七金では▲1三金が考えられるが、それは△5三角(参考図)が絶好で、次に△2六角の王手と△2二飛を見て、後手が優勢である。よって▲4七金はこのくらいであろう。

対して△5五歩が意味不明である。これは▲3六金△5六歩▲4八飛で、後手玉が妙に受けにくい形になる。しかし私に一目で浮かぶ手を木村九段が見落とすはずがない。それなら▲4八飛にも対策を用意しているはずだが、私にはその順が見えない。
次に見た時は、▲4八飛の局面になっていた。ただ「▲1五香△同銀」の交換が入っていた。これがあれば▲2五金の順も生じるので、なおよい。ということは、後手がさらにいけないように見える。
次に見ると、藤井九段の勝ちになっていた。木村九段、あれから1手も指さずに投了したのか! まあ、受けがないのだから投了もやむを得ない。それにしたって、△5五歩の局面から5手で終わる!? 私はキツネにつままれたようだった。

形勢がどのように揺れたか私は分からないが、アマ同士なら先手が勝つ、という局面が長かったようには見える。ただそれは個々の局面を見せられたらの話であって、私が藤井システムを指したら、たちまち空中分解しそうである。
ともあれ本局は、藤井システムの快勝譜。まさに藤井九段にしか指せない作戦で、こりゃあ藤井九段の人気があるわけだと思った。
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製品Aの悲劇

2019-01-27 03:01:22 | プライベート
2017年初夏、私の怠惰により、三代続いた工場を潰してしまったのは、我が生涯において最大最悪の痛恨事だった。悔やんでも悔やみ切れない。さらにその後始末においても、私はいまだに心に引っ掛かっている事柄がある。
すなわち在庫の整理である。
我が社は主たる納品先が2社あった。うち1社は、ウチに残る在庫を1ヶ残らず、しかも迅速に引き取ってくれた。オヤジも感激して、工場の隅に残っていた鉄などの材料を、無償で差し上げたものである。
問題はもう1社(T社)のほうで、いつまで経っても引き取ってくれない。オヤジは在庫で儲けよう、の気はなかったから積極的に捌くつもりはなかったが、私は完成品を処分するのは忍びなく、できれば引き取ってほしかった。
2017年秋、T社がようやく在庫を引き取ってくれたが、1種類だけ製品が残ってしまった。それは、ステンレス製のカブトムシ大の製品A(@195円)で、恐ろしく手間のかかるものだった(厳密には、これに加えてフックが3種類と、小さな製品が付随する場合があった)。
なぜこの製品が残ったか。T社は仕入先からの製品を「標準品」「特注品」と分けていた。前者はいわばレギュラーだから、T社も在庫として引き取った。
だが後者はイレギュラー製品とみなし、引き取りを敬遠した。製品Aは後者だったのだ。
そうはいっても、T社で製品Aが捌ければ問題はない。だが製品Aは、かつては毎月3,000ヶ前後出ていたものの、数年前からパッタリ出なくなり、ここ数年は、年間300ヶも注文があればいいほうだった。
しかし毎年確実に出ることは出るわけで、それをT社が在庫として持てばいい話だ。ウチもかつては製品Aを4,000ヶ前後抱えたが、現在は完成品850ヶ、塗装をしていない半製品を1,000ヶまで減らしていた。このくらいの数なら、T社も大した負担にはなるまい。
だが、冒頭の納品先2社には、大きな違いがあった。
前者の会社は自社で商品を製造しており、ウチはその中の1パーツを納品する形だった。つまり、毎月必ずウチの製品を必要としていた。
ところが後者のT社は製品をそのまま得意先に売るので、得意先から注文が来ないと、ウチのような下請けにも、注文を出さなかった。そしてT社は、自社に在庫を極力置かない方針だった。いわゆる「トヨタ方式」である。
だが、製品Aを新たな下請け会社が造るにしても、その工程は気が遠くなるほど面倒である。それなら他社に頼まずとも、ウチの在庫だけで6~7年は軽く持つ。しかも、ウチの製品は品質に絶対の自信があるので、どこの工場より優ると自負していた。
それはT社も理解していたはずだが、在庫として引き取るにも金が要る。担当のM氏は相当上の位の人だったが、だがしかし、彼は195円×850=約17万円の金を、引き出せなかった。

2017年暮れ、ウチは製品Aを処分することになった。12月の上旬に、プレス機は1基残らず処分した。最後の大掃除というわけで、ほかの鉄屑と一緒に、産廃業者に売ることになったのだ。
これ、私の意思が通るなら、製品Aを工場に置いておきたかった。せいぜい段ボール2箱分だから、場所は取らない。だが私の意見など一蹴された。紙ならともかく、鉄材は最終的な処分に困る。それに、会社を畳んだあとにT社から100ヶや200ヶの注文があっても困る、というのがその言い分だった。
それはもっともである。それにそもそも、私はこの会社で、自分の意見が通ったことは一度もなかった。そのくらい、信用も信頼もなかった。その私が製品Aを残せるはずもなかったのである。
鉄屑廃棄の日、精魂込めて造った製品を、鉄屑として一斗缶に投げ込んだ。この時の口惜しさを、何と表現したらいいのだろう。
将棋に譬えれば、駒師が精魂込めて造った将棋駒を、ゴミ箱に捨てるようなものである。本当に、涙が出そうだった。

そして悲劇はこの翌年起こった。
2018年1月、担当M氏から、製品Aの在庫はないかと、連絡が来たのである。今頃になって、得意先から注文が来たのであろう。いや、代替の製造会社から、問い合わせがあったのかもしれない。
私は「去年、在庫を引き取ってくれとさんざんお願いしたじゃないですか!」と嘆いた。こんなもの、仮に100ヶ引き取ったって19,500円である。なんでそのくらいの金が出せなかったのか!
この会社は相当大きな会社だったが、まったく融通が利かなかった。社員の個々のスキルも低く、私に言わせれば二流だった。
そして私は、オヤジに隠れてでも、製品Aを残しておけばよかったと、心底悔やんだ。
この数日後、オヤジが「製品Aがここに2つあったぞ」と言った。それは私が、私物といっしょに、仕事の証として記念に残したものだった。それをオヤジが、めざとく見つけたのだ。私は、これだけは誰にもやれないと言った。
だが担当M氏からは、それからもたびたび、製品Aのことで問い合わせが来た。やはり新たな工場では、製造を難儀しているらしい。こうなることが分かっていただけに、私は忸怩たる思いだった。
そして担当M氏からは、何とこの25日にも、製品Aのことで、問い合わせがあった。今度は、塗装をどうしたらいいか、という初歩的なことだった。
それは2年前にさんざん説明したじゃないですか!  だから一昨年、在庫を引き取ってくれれば良かったんだ!
そして、「私、いまだに就職できないでいます」と白状する自分も情けなかった。
私の人生は、もうグチャグチャである。
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