
第8図以下の指し手。▲2三飛成△同金▲5三飛△6四玉▲4三飛成△5七歩成▲同銀△6七銀(第9図)
LPSAファン氏はオイソガ氏で、将棋が終わると、一足先に帰ってしまった。
第8図で▲2九飛や▲1八飛は1手の価値がなく、まったく指す気がしなかった。ただ、▲2七飛はあったと思う。もし△同馬▲同角なら、これが▲5三飛以下の詰めろになる。だが対局時はまったく考えなかった。
私が指したのは▲2三飛成である。飛車取りになっているのに、別の場所に飛車を差し出したのだ。
この手を見た中倉宏美女流二段はさすがにビックリしていたが、まあ△同金と取るよりない。
そこで▲5三飛から▲4三飛成と迫る。ただこの手は詰めろになっていない。以後を正確に指されたら負けかもしれない、とも思った。
ここで宏美女流二段は△5七歩成。だがこれは▲同銀で、私の銀が手順に敵玉に近づくので、ありがたかった。
だが宏美女流二段はどこ吹く風で、今度は△6七銀と捨ててきた。なんだこれは!?

第9図以下の指し手。▲6七同銀△8七金▲6八玉△2八飛(第10図)
第9図では▲6七同玉もある。だがこれは△5五桂から王手が続くので、あまり考えなかった。むしろ銀で取れば自陣が固くなるので、私は喜んで▲同銀と取った。
すると、宏美女流二段は△8七金!!
ここに至って、私は宏美女流二段の読みに気付いた。宏美女流二段は、下手玉を詰ましに来ていたのだ!!
私はビビリながら▲6八玉とよろけたが、ここは何はともあれ、▲8七同歩で金を入手しておくのだった。金があれば、攻守に活用できた。
本譜に戻り、宏美女流二段は△2八飛。もちろんこの手は読んでいたが……。

第10図以下の指し手。▲5八銀打△7六桂▲同銀△5八飛成▲同玉△4七金▲6八玉△5七金▲同玉△4八銀(投了図)
まで、124手まで宏美女流二段の勝ち。
第10図では▲3八銀で受かると読んでいた。△3八同馬なら▲7三竜△5五玉▲5六銀打で詰み、が読み筋である。だがそこで△5六同馬(参考B図)と取る手に気付いた。これが逆王手になり、下手負け。

私は混乱した頭で▲5八銀と打ったが、そこで△7六桂▲同銀△5八飛成があることに気付いた。これを▲同金は、△7八金打▲6七玉△5五桂▲5六玉△4七銀以下詰み。だから△5八飛成は▲同玉と取るしかないが、それでも下手玉が詰みそうだ。
すると宏美女流二段は、やはり△7六桂! ここで投げようかと思ったが、まあ、上手に決め手を指してもらおうと思った。
▲7六同銀に、前述の△5八飛成が決め手、これで下手がどう応じても詰んでいる。
以下△4八銀まで、私は投了した。

「いやー、トン死しちゃったよ」
と私は嘆く。「いや最初は△2八飛に▲3八銀で受かっていると思ったんですよ。ところが▲5六銀打で詰みのつもりが、△同馬で逆王手になって……」
「△5七歩成はありがたいと思ったんですよ」
「でもほかに手がなかったから……」
「△8七金はとりあえず▲同歩と取っておくべきでしたか」
「まあその問題はありますが……」
双方が微妙に言いたいことを言い、話は序盤に戻った。
「桂得をしたところではまあまあかなと思ったんですよ」
「私のほうも食いつかれて……。やっぱり雁木は薄かったですね」
「でも△3四歩と角道を遮られた手にはシビれました。あれで角が働かなくなった」
「私の△2四角がおかしかったですか?」
「いやいや」
……と話していたらキリがない。もうこれで帰ろう、と思ったら、右の青年が投了したので驚いた。こちらも宏美女流二段が勝ったのか!
いや、恐ろしい。下手に指させたいだ指させて、最後はスッと体を入れ替える。まさに上手の至芸を見る思いで、私は今回ほど、指導対局料を払った甲斐があると思ったことはなかった。
宏美女流二段、これでどうして、白玲戦・女流順位戦D級で降級点を2つも持っているのか分からない。来期は確実に1コ消去するだろう。
後日、まだ8月7日の休みは確定していなかったが、LPSA麹町サロンの予約状況を見たら、中倉彰子女流二段、上川香織女流二段の両方とも、満席になっていた。まさかの展開に、私はガックリである。
彰子女流二段の回はともかく、上川女流二段のは誕生日直後だから、何としても受けたかった。それならもっと早くに予約だけでもしておけ、という話である。
肝心なところでグズグズして、チャンスを掴み損ねる。私の人生、いつもそのパターンだ。そしてそれは今後も変わらないのだろう。